ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

史上最上級のユナイテッドアローズ、TABAYA United Arrowsで体験できるもの。

ウツワ

2025.04.25

史上最上級のユナイテッドアローズ、TABAYA United Arrowsで体験できるもの。

ユナイテッドアローズ 原宿本店があった場所に新たに誕生する〈TABAYA United Arrows〉。“史上最上級のユナイテッドアローズ”。その高みに挑戦したディレクター田村麻衣子さん、そして彼女の想いを受け取ったアートディレクターの葛西薫さんに話を聞きました。“史上最上級”の想いがこれからお客さまのもとへ循環していきます。

Photo:Shunya Arai, Taro Ota
Text:Takuhito Kawashima(kontakt)
Edit:Shoko Matsumoto

日本的であるほど国際的

パリのシャンゼリゼ通りやニューヨークの5番街を歩いていると目にするものは、世界観が統一されたラグジュアリーブランドのフラッグシップストア、国際展開するコーヒーチェーン、動画配信プラットホームからリリースされる新ドラマの告知。立っている場所は違えど“似たような”ものを目にする機会が増えています。そんな雰囲気や味に安心感に近いものを得られることがある一方、日本の街を歩いていても、そんなに他の都市と変わらないと思うこともあります。グローバリゼーションによって便利になっていく反面、失われていく風景やローカルな生活の営みがきっとあるのではないでしょうか。

画像 〈TABAYA United Arrows〉の歴史や全貌を紹介する冊子。アートディレクターの葛西薫さんが手がけた。

いつか「日本的であるほど国際的である」とユナイテッドアローズの創業者である重松理氏は、同社のスタッフに伝えたことがあります。それはまさに均一化していく世界を見据えての言葉だったのかもしれません。1989年の創業時から「日本の生活文化のスタンダードとなる価値観の創造」を理念に掲げ、西洋の生活文化を日本に翻訳したものを根付かせてきました。しかし2025年、〈TABAYA United Arrows〉は視座を日本へ置き、日本文化の本質と、日本から見た西洋文化を原宿から提案していきます。それこそが最上級なものであるとして。

想いを込めた料理に気分がいいお椀

例えばマルタン・マルジェラが日本を訪れた際に作業をしていた地下足袋姿の作業員たちに感化されたTABIブーツ。例えば、李朝の白磁から影響を受けた国内外の作家が手がけた白い器のシリーズ。日本文化が影響を与えたモノやコト、海の向こうから影響を受けた日本のモノやコトを、地域や年代、ジャンルを問わず、ユナイテッドアローズの審美眼を通して、納得したものだけをお客さまに提案するのが〈TABAYA United Arrows〉です。これは創業時からの指針である“専門十貨”(百貨店のような豊富な品揃えよりも、厳選された本当にいいものを扱う十貨。それで十分という姿勢)に立ち返ることでもあります。ものや情報が溢れる時代だからこそ〈TABAYA United Arrows〉がキュレーションを。それをディレクションするのが田村麻衣子さんです。

画像 TABAYA United Arrowsのディレクターをつとめる田村麻衣子さん

「私自身小さい時から、家族の影響で着物を着る機会が多かったり、器を通じて季節を感じたり楽しんだりしていました。例えば着物だと、7月という暑い時期にも関わらず、モミジの柄の着物を選んだりして次の季節を演出することをしたりします。それに江戸時代から、紗というまるで蚊帳のように薄い生地を羽織り、涼しく見せるという薄物文化もあります。これを今に置き換えると、夏はトロっとした質感のウールよりも、ときにはパリっとしたコットンポプリンのほうが“涼し気”に感じるのでは? というものなのではないかと思うんです。このようにして現実逃避の洒落化という、文化的な遊び方や、対立よりも調和を重んじることに、日本の精神性があるように感じます。MADE IN JAPANという技術的な高さやクオリティはもちろんですが、こうした粋な日本文化の本質に焦点を当てるキュレーションで、ヒト(接客)・モノ(商品)・ウツワ(空間)を通じて、お客さまには安心感だけでなく、驚きや学び、それに気分的な高揚感もご提案したいと思っています」

しかし〈TABAYA United Arrows〉は日本のものだけを扱うお店ではありません。西洋から大きく影響を受けている現在の私たちの生活様式を基盤にしたモノ選び。着た時の見た目、食事をいただく時の器選び、という生活者の現代的なニーズを満たしながらも、気分に上質な変化を促すものたち。ではそれが“美しいもの”なのでしょうか。

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「ステートメントにある最初の言葉、『美を極めたもの』。私はこの言葉の真髄を伝えたいと思っています。日本の歴史の中で磨き上げられた美意識、極めた技、自然から受ける恩恵と豊かな想像力をもって生み出されたものこそ、美を極めたものだと思っています。豊かな自然と特異な気候を持つ日本だからこそ、自然素材だけで作れるうえに通気性にも優れた数寄屋造りの家が生まれました。また物資に乏しかったからこそ、わび・さびという美的感覚も育まれました。そんな私たちの先祖が生み出した、生活をより一層楽しむための工夫の結晶にこそ、美しさが満ち溢れていると感じます。そんな精神性に加え、さらに〈TABAYA United Arrows〉が大事にしているのは本物であること。それはつまり、いつの時代でも色褪せずに、存在価値を保ち続けるものです。時代の気分に着こなせる、使いこなせる度量の深さがある。季節を感じる絵柄を入れるものとされていたお椀に、太陽と月を描くことで、季節関係なくいつでも、さらに長く愛用できるようにするなどして思慮深く作られた美しいものには、どこかしら使い手に委ねてくる余白のようなものを感じとることができます。まるで『あなたならこれをどう使いますか?』と問われているようです」

こうした田村さんがヒト・モノ・ウツワに込めた想いに呼応し、〈TABAYA United Arrows〉のロゴやショッパーといったグラフィックに落とし込んだのは、日本を代表するアートディレクターの葛西薫さんでした。
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日本文化が影響を受けたもの。日本文化が影響を与えたものをコンセプトに買い付けした品々。ウェアやアクセサリーだけでなく、こうした美術品や日用品、工芸品なども取り扱います。


矢は放たれた

画像 (株)サン・アド 顧問 アートディレクターの葛西薫さん。

「『矢は放たれた』って、いい言葉ですよね。ちょうど大河ドラマにハマっていることも影響あってか、時代劇調ではありますが、ユナイテッドアローズが35年間グッと弓を引き続けて放つ! そんな本気度を表現するために考えたキャッチコピーでした。結果このコピーは、オープン時に使われることはなかったのですが、とても好きです」と話すのは、アートディレクターの葛西薫さん。葛西さんとユナイテッドアローズは、創業30年を記念した広告ビジュアルをはじめ、さかのぼると1998年のテレビCMや2005年の企業広告も手がけ、ユナイテッドアローズの“御守り”のような存在です。そして今回の〈TABAYA United Arrows〉のブランドロゴやショッパーなどのアートディレクションにも参画いただきました。

「史上最上級のユナイテッドアローズを、と田村さんから相談いただいた時は、プレッシャーに感じました。でも同時に励まされもしました。よく言い切ったものだと。お店に対する想いやコンセプトをヒアリングしていると、〈TABAYA United Arrows〉というのは、我に帰ることもできるし、遠くに行くこともできるような場所なんだろうと想像しました。 『そういえば、本来こうだったなぁ』という点と、『こんなことでもあるのか』という点、その二つの点と点を結ぶような場所です。

画像 ショッパーのカラーにも採用されている“TABAYAブルー”。

例えば今回〈TABAYA United Arrows〉に採用した色は、“TABAYAブルー”と名付けた青色です。元々束矢マークでは、伝統的な紺色を使っていましたが、そこに現代性をつけ加えてできた紺色と空色の間のような気持ちよさのある色を採用しました。最上級というのは最高級とも異なります。このロゴや色自体が、〈TABAYA United Arrows〉にとっての基準点になるような、家紋のようなマークになると嬉しいと思っています。そのため今回私は奇抜なことは特にしていません。実際にデザイン作業中にも、いつ作られたか不明な普遍性、それはつまり時代を経てもきちんと成立しているものを作ることを意識しました。それが一番の安心を与えるのだろうと思って。 ですから、ただすっと文字を組むだけでいいんじゃないか、という考え方におさまったことが多かった記憶があります」

素晴らしさに出会う

画像 旧ユナイテッドアローズ 原宿本店を改装中の2025年3月末。TABAYA United Arrowsのステートメントの前に立つ葛西薫さん(写真左)と田村麻衣子さん(写真右)。“小さな宝石箱”と設計者であり、世界的建築家のリカルド・ボフィルはこの建物を見て言葉にしたそうです。

2022年に他界した世界的建築家のリカルド・ボフィルが設計した旧ユナイテッドアローズ 原宿本店。「私が尊敬する日本人の謙虚さと素晴らしい技術を反映したものです」と同氏が生前に話していたように、日本文化に影響を受けてスペインの建築家が設計したものです。この建物自体にもまた日本の精神性が宿っているものとして考え、私たちは彼の意志をそのままに、建物内にも一貫したスピリットを持たせることにしました。それが〈TABAYA United Arrows〉です。

世界的に活躍する現代美術家の村上隆さんが「日本こそ世界最高峰。ただそれに気づいていない人が多い」と話すように、私たちはもっと私たち自身のことを見ないといけないのかもしれません。感覚的に知っていること。それに全く知らなかったこと。これらを一つの空間にし、新しい日本的体験として〈TABAYA United Arrows〉は、美を極めたものを探究し、お客さまと素晴らしいものとの出会いを促し、素晴らしい買い物ができるような場にしていきます。

  • 1992年に開店したユナイテッドアローズ 原宿本店。スペインの建築家、リカルド・ボフィルが手がけた日本で初めての建築物。〈TABAYA United Arrows〉として、外観建築は建設当初のまま改修。

  • 地下一階、ウィメンズエリア。職人技に対する敬意が込められているブランドを世界中からセレクト。

  • 地下一階、メンズエリア。日本の丁寧なものづくりの精神に基づき、オリジナルジャケットやドレスアイテムも多く展開。

  • 一階、喫茶と酒場。上質な飲食体験が可能。日本の旬の素材を生かしたメニューが並ぶ。

  • 一階、画廊。月替わりで様々なアーティストの作品を紹介。現在、韓国の伝統工芸作家7人による作品展示を開催中。

  • 二階、工芸品、美術品、骨董品、生活道具。ライフスタイルを豊かに彩る器や茶筒、グラスや調理道具など工芸品を中心に紹介。

  • 二階、工芸品、美術品、骨董品、生活道具。ライフスタイルを豊かに彩る陶芸先品など工芸品を中心に紹介。

  • 二階、別館。ライフスタイルを豊かに彩る珈琲道具や香りもの、楊枝など工芸品を中心に紹介。

PROFILE

葛西 薫

葛西 薫

1949年北海道札幌市生まれ。文華印刷、大谷デザイン研究所を経て、1973年サン・アド入社、現在同社顧問。サントリーウーロン茶中国シリーズ、ユナイテッドアローズ、とらや、TORAYA CAFÉなどの広告制作およびアートディレクションのほか、サントリー、サントリー美術館、六本木商店街振興組合のCI・サイン計画、映画・演劇の広告美術、装丁など、活動は多岐にわたる。

田村麻衣子

田村麻衣子

幼少期より華道(草月流)、日本舞踊(花柳流)、茶道(裏千家)等日本の伝統芸道を学び、長年にわたり技術の習得と美意識を培う。ユナイテッドアローズ入社後は約8年間販売職を経験後、バイヤー・ウィメンズMDを担当。2025年4月よりTABAYA United Arrows ディレクターに就任。

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