
ウツワ
2025.09.18
「Edit united arrows」がOPEN。ファッションの自由さに立ち返る、新たな挑戦。
“Empowerment”、“Diversity”、“Identity”、“Treasure”をキーワードに、女性が自分自身のためにファッションを楽しむための空間として新たに生まれた「Edit united arrows」。〈ユナイテッドアローズ〉〈アストラット〉〈コンテ〉〈イウエン マトフ〉の各アイテムを編集して展開する、この新しいコンセプトストアのディレクターを務める浅子 智美さんにインタビュー。新店舗に込められた想いや、こだわりの詰まったディテール、そして今後の展望について教えてもらいました。
photo:Yuco Nakamura
text:Mikiko Ichitani
自分自身のファッションと出会える場所へ。
〈ユナイテッドアローズ〉(以下、UA)という大きな価値観を共有しながら、さまざまなファッション志向を持つ〈アストラット〉〈コンテ〉〈イウエン マトフ〉といった自社のブランドを集めたウィメンズストアです。
— コンセプトを教えてください。
コンセプトは、「女性が自分自身のためにファッションを楽しむストア。多様な生き方や価値観が尊重される時代に、スタイルの多様性とファッションの多様性を提案していく」というもの。多くの同世代の女性は、家庭における母や妻、職場などの場面でもさまざまな役割を持ち合わせていて、それに合わせてお洋服を選んでいらっしゃる印象があります。もっと自分自身のためにファッションを楽しんで、純粋に「可愛い!」を感じて欲しい。そういうお店を作りたいというのが、個人的な想いとしてもずっとありました。
今回、個性の異なるレーベルが一同に集うことで、枠にとらわれないファッションの楽しさを提案したいというのが軸にあり、自社のブランドだけではなく仕入れのブランドにもこだわっています。セレクトショップとしてスタートした〈UA〉の原点立ち返り、異なる価値観を提案していくことで、みなさんが自身の背負う役割のためではなく、自分自身のためにファッションを楽しんでもらえるお店にできたらいいな、というのは立ち上げのときから大切にしたいと思っていました。
親和性と自立性を込めたストアロゴ。
スモールブランドとしてスタートし、小さいからこその楽しさや可能性の詰まった濃いお店にしていきたいという想いを込めて、文字は小文字に。「Edit」と「united」の文字を縦に並べたときに、「it」の文字がつながるということにアートディレクターの方が着目してくださり、〈ユナイテッドアローズ〉との親和性、そして「Edit united arrows」の自立性をロゴのデザインに取り入れました。
— フォントにもこだわりがあるのでしょうか。
実はこれ、〈ユナイテッドアローズ〉と同じフォントなんです。一見、異なるデザインに見えても優しさとつながりを感じさせる、「Edit united arrows」ならではの個性を意識しています。
さまざまな価値観に自由に触れる、心地よい空間。
私がディレクターになって最初にオープンした麻布台ヒルズのお店と同様に、大きな商業施設のなかに入る店舗ということで、ざわざわした環境でも安心してお買い物ができる、一軒家みたいなお店にしたいと考えていました。入り口は全面開口にして、柱を挟んで左側から〈コンテ〉、〈イウエン マトフ〉、〈アストラット〉、そして店の奥に〈UA〉が広がるような配置にしています。
〈コンテ〉
〈イウエン マトフ〉
〈アストラット〉
〈ユナイテッドアローズ〉
入り口から各レーベルの顔を感じていただけたらと思っていて、イメージはダイバーシティや多様性というよりもインクルージョン。それぞれの顔を持つブランドがひとつに集まって、まとまっている空間を目指しました。流動的にお店を行き来してもらいたいと思っており、店内はあえてコーナーで仕切っていません。お客さまが気になるブランドの入り口から入って、気づいたら隣にいって、後ろにいって、コーディネートをどんどんミックスしていくというような、楽しくてほっとする一軒家のような空間になったと思います。
— 内装のこだわりについても教えてください。
女性の優しさや柔らかさというものを大切にしたいと思っていて、什器の角をとってアールの柔らかい雰囲気にしたり、丸い照明を使ったりと統一感を心がけました。象徴となる2枚の大理石の壁もポイント。クールなブラックと優しさを感じるホワイトを基調とした大理石をそれぞれ使用していて、二面性を表現しています。あとは、レジとアクセサリー什器を併設した天然目の大きなカウンターもこだわりです。イメージはテーブルとキッチンが一体化したキッチンカウンター。いくつかの機能がひとつまとまっていることで、レジにいながらお客様に声をおかけすることができたり、店内を見渡すことのできる配置になっているところもお気に入りです。
ブランドの個性を引き立てる、シンプルなデザイン。
今回は、4つのブランドがメインで入るということでハンガーにはあえてストア表示を入れずに、シンプルな木の素材を生かしたデザインをリクエストしました。そうすることで、それぞれのブランドのネームが引き立つといいなと思っています。形も〈UA〉のハンガーとは少し変えていて、もともとの丸みのあるフォルムから少し角をつけています。それぞれのブランドの持つ個性と独立性、また強くて優しい、自立した女性像というイメージを表現しました。あとはフックの部分も店頭のハンガーラックの色味に合わせて、既存のゴールドよりも馴染みのいいシャンパンゴールドに変えています。
それぞれのブランドでお買い物をされたお客さまがフラットに持てるものがいいなと思い、あえて色のないクラフト紙を選びました。紙はもちろん、FSC認証を取得したサステナブルなもの。持ち手には太めのリボンを施して、特別感を出しました。
テーマは「Edit」、完璧ではない自由な女性像を表現。
〈UA〉のシーズンルックは、本来スタイリストさまは入れずにブランド側で行うのですが、今回はスタイリストさんに参加いただき、完璧じゃないけど自由で、過程も楽しめる、自然で軸のあるチャーミングな女性像というキーワードからルックを組み立てていきました。アートディレクターやカメラマン、ヘアメイク然り、プロフェッショナルな方々が素敵な意見をたくさんくださって、「Edit united arrows」ならではの新たな女性像が完成したと思います。




オープンのタイミングで揃えているアイテムのキーワードがデニムということで、各ブランドのデニムを主役に組んでいるのですが、スタイリングでいろいろとミックスしており、いい意味でデニムらしくないというか、デニムの見え方も楽しいルックになりました。また、完璧な着こなしではなく、スタイリングをしている過程のどっちにしようかなと悩んでいる様子を切り取るようにして、お洋服の楽しみ方の幅広さがビジュアルから伝わったらいいなと思っています。
「Edit united arrows」だからできる、新たな挑戦。
一店舗目が大阪梅田ということで、近くにはルクア大阪の〈UA〉ウィメンズストアがあって、同じ商材も一部取り扱うというなかで、「Edit united arrows」ならでは新しい仕入れブランドの提案やイベントなど実験的に楽しみたいと思っています。
— オープンに向けたセレクトで一押しのブランドはありますか?
よりフラットにベーシックを支えてくれるような服がこのお店にあったらいいなと思い、ハンサムな女性像を体現する日本のブランド〈J.B. ATTIRE(ジェービーアタイア)〉や土に還る4つの素材だけでストイックな服づくりを行う〈AKYN(アキン)〉といった、共感できる背景を持ついくつかのブランドを新たにバイイングしています。
Edit united arrows 店長 三上 麻希さん(写真右)
浅子:〈UA〉が全国にあるなかでも、「Edit united arrows」は独自の多面的な価値観を提案できるストアブランドになっていくと信じているので、今後もさまざまなエリアに出店していけたらと思っています。すでに10月以降にブランドさんのイベントが決まっていたりもして、空間を生かしてさまざまなブランドや地域の方たちと交わる機会を作っていきたいです。そして、お客様にとっても、純粋に自分自身のためのファッションを見つけられる場所になっていけたら嬉しいです。
三上:オープンにあたり、浅子さんをはじめスタッフ全員でミーティングを行い、それぞれがこのお店に込める想いやビジョンを共有しました。そのなかで誰もが口を揃えていたのが、「Edit united arrows」では落ち着いた雰囲気のなかで自由にファッションを楽しんでほしい、ということでした。だからこそ、4つのブランドを横断して自由に組み合わせてもいいし、もちろんひとつのブランドだけでスタイリングを楽しんでもらってもいい。お客様それぞれのスタイルに寄り添える場所にしていけたらと思っています。
INFORMATION
PROFILE

浅子 智美
2006年、大学在学中にアルバイトとして〈UNITED ARROWS〉でのキャリアをスタート。2007年に〈UNITED ARROWS〉に入社し、店舗勤務、マーケティング部門、ウィメンズ商品部でのバイヤーを経て、21年よりウィメンズのファッションディレクターへ就任し、バイヤーと兼任。