
ウツワ
2023.08.24
ユナイテッドアローズのサステナビリティ活動 「SARROWS」の進捗とこれから。
自社のサステナビリティ活動を「SARROWS」という活動レーベルに落とし込み、具体的な数値目標を掲げて取り組んできたユナイテッドアローズ。2023年8月で一年が経ったいま、持続可能な社会に向けた取り組みは、どのような進捗を見せているのでしょうか。具体的にどんなアクションを起こしてきたのか。その結果、数値にはどのように反映されたのか。そして、さらなる今後の展望は…? サステナビリティ推進部の玉井 菜緒さんに、実績を総括していただきながら、お話を伺います。
Photo:Shunsuke Kondo
Text:Maho Honjo
商品の廃棄率が、昨年の半分以下にまで減少。
すごく簡単にいうと「SARROWS」とはスローガンのようなものですね。持続可能な社会を目指すための活動目標を示したもので、わたしたちの旗印でもあります。
その活動の三本柱として、「Circularity 循環するファッション」「Carbon Neutrality カーボンニュートラルな世界へ」「Humanity 健やかに働く、暮らす」を掲げて、さまざまなアクションを推進してきました。
わたし自身、この活動を推し進める立場でありながら、どれだけしっかりと形になるのか不安なところはありました。でも今回上がってきた数値を見ると、それは杞憂でした。なかなか順調に進んでいるという嬉しい報告ができそうです。
そうなんです。商品の廃棄率をいままでの半分以下に減らすことができたわけで、2030年の目標値0.1%にグッと近づいています。さらに繊維製品だけを抜き出して新設した<繊維製品の廃棄率>は0.3%に。繊維製品はリサイクル技術が進んでいて、多くの処理方法が確立されているので、ゴールを0.0%に設定しています。
また、廃棄率と並行して推し進めたのが「定価販売比率(プロパー消化率)」の改善です。当社の長期ビジョンでも「売上拡大志向からの脱却」を掲げていますが、「大量生産、大量消費、大量廃棄」だった時代から、これからは「適量生産、適量調達、適量販売」へ。
そのため調達から販売までの計画をしっかりと練った結果、定価販売比率が過去10年間で一番高い数値を記録したのです。このことが廃棄率にも影響を与え、よい循環が生まれたのだと考えています。
提供写真
わたしたちでは販売しきれなかった、新品ながら倉庫に眠っている商品をこちらのストアに出品し、これまでリーチできなかったお客さまにお求めいただく機会を設けています。「倉庫に眠る服に光を当てる。もしくはアップサイクルして、新たな価値をつくり出す」というコンセプトに賛同して出品を決めたのですが、サステナブルな視点での新たな販売スタイルに参加することで、廃棄率の削減に繋がる取り組みになると考えています。
ユナイテッドアローズ 丸の内店
施設オーナーと協働し、再生可能エネルギーを導入。
ユナイテッドアローズ 原宿本店や丸の内店などの全国16店舗と、赤坂本社などのオフィス2拠点において、再生可能エネルギーの導入がはじまり、その利用率が上がったことでこの数値が出てきています。いずれにしろわたしたちは、テナントとして商業施設に入っていることが多く、その施設オーナー様がCO2削減に向けて再生可能エネルギーを導入することが、数値改善の必要条件になります。
そこで始めたのが「カーボンニュートラルに向けて、どんな取り組みを行っているか」についてオーナーさまと積極的に意見交換すること。お互いにヒアリングすることで協業しながら、さらに推し進めていきたいと考えています。
ルミネさまも持続可能な社会に向けて明確なビジョンを掲げていますが、さらなる取り組みのために入居テナントの考えを知るべきという意向で、お声掛けいただきました。そこでいろんな情報交換をしてわかったのは、「みな同じ方向を向いている」ということ。そして「楽しみながら行うことが続くコツ」と考えていること。こうやって横の繋がりをもてたことは刺激になりましたし、励みにもなりました。これからもこのような機会を増やしていきたいと感じましたね。
ーでは「Humanity 健やかに働く、暮らす」はどうでしょうか。<行動規範書の同意率>が11.6%から48.2%と大幅に伸びています。
まず行動規範書の策定を行い、わたしたちの想いに賛同する場合に同意をいただくもので、これは引き続き100%を目指していきます。並行して今年の2月からはじめたのが国内提携工場の実地監査。
今回は山形と東京の縫製工場さまを訪れ、現場の監査とヒアリングを実施。雇用関係の法令遵守はもちろん、施設の防災や避難経路の確保など、工場で働く方々の労働環境の確認等を行わせていただきました。
社内に「SARROWS」デザインのゴミ分別箱を設置。
サステナビリティ活動を「SARROWS」として打ち出したことで、社員一人ひとりが自分ごととして考えはじめ、声が挙げやすくなっているのでは、と感じています。たとえば廃棄業務を担当しているメンバーが、繊維製品のリサイクル率を上げるべく、さらに細かい仕分け作業に向けて音頭を取ってくれています。
また、環境配慮商品も数値目標が出たことで、各レーベルでどれだけ増やすべきか試算する動きも出てきています。素材や加工技術の情報交換も行れているようで、実際のアクションに落とし込まれているなと感じますね。
日々わたしたちが関わるサステナブルアクションはなにかと考えたとき、その中のひとつにごみの分別がありました。日々のルーティンだからこそ、そこで考えてアクションすることで意識が変わり、それが業務に繋がっていけばいいなと思ったのです。
「ごみ育」という言葉も、わたしたちがごみと思っているものは実はすべて資源であって、分別すれば生まれ変わらせることができるんですよね。そういう意識が根付けばいいなという想いで、「SARROWS」デザインのごみ箱を設置しています。
一年間「SARROWS」の活動に携わってみてわかったのは、「Humanity 健やかに働く、暮らす」の<従業員エンゲージメントスコア>以外は、取引先さまとの協働がなければ改善が叶わない、ということでした。今回は数値が良好だったものの、もし今後悪化した場合はともに課題を見つけ、改善を図る必要があります。だからこそ必要なのはコミュニケーション。これからも周囲と意見交換や情報共有を行いながら進めていきたいと思っています。
また、もうひとつ感じたのは、数値化することの大切さです。そのことでメンバーの自覚が生まれますし、良い数値が出れば励みにもなります。
今期はどうしても駆け足になってしまったのですが、来期は自分たちのアクションを一つひとつ見つめることができる年にしたい。2030年に向けて結果を出せるよう確実に、かつ丁寧に進めていきたいと考えています。
INFORMATION
PROFILE

玉井 菜緒
1999年、株式会社ユナイテッドアローズに入社。情報システム部門にてコミュニケーションツールの企画・運用を担当後、2004年より同社の社会・環境活動の推進に従事する。同分野に携わって19年目で、現職はサステナビリティ推進部 部長。