ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

「SARROWS」が参加した『服の文化祭』。「KISARAZU CONCEPT STORE」と共に取り組む、新しい服のサイクル。

ウツワ

2024.10.24

「SARROWS」が参加した『服の文化祭』。「KISARAZU CONCEPT STORE」と共に取り組む、新しい服のサイクル。

ユナイテッドアローズ社(以下、〈UA〉)は、自社のサステナビリティ活動を「SARROWS」と名付けて数値目標を掲げ、さまざまなアクションを行なっています。たとえば繊維製品は2030年までに廃棄率0.00%を目指していて、最新の数値では0.03%を達成するまでに。その取り組みのひとつとして、この秋参加したのが、「KISARAZU CONCEPT STORE」における『服の文化祭』です。そこには「SARROWS」として初のポップアップストアも出店。どんなイベントなのか、どういう経緯で行われたのか、そこで感じた手応えとは? 晴れ渡る秋空の下、ファッションを愛する人々が楽しんだ文化祭の様子をレポートします。

Photo:Shunsuke Kondo
Text:Maho Honjyo

買い物からワークショップまで楽しめる『服の文化祭』。

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服を作ること、そして処分をすること。そのどちらにも環境負荷がかかっていることは知っていても、それがどのぐらいのものなのかイメージできているでしょうか。たとえば服を一着作るのに、水2,300リットルを消費し、CO2約25.5kgが排出されると言われています。また、家庭から捨てられ、焼却・埋め立てされる衣服の量は、1日なんと1,200トン(出典:環境省 サステナブルアクション)。私たちは、一枚一枚の服を取り巻く環境、いわゆる「服のゆくえ」について、もっと想像力を働かせるべき時が来ているのです。

そんななか、三井アウトレットパーク木更津に近接している「KISARAZU CONCEPT STORE」にて、サステナブルなイベント『服の文化祭』が行われました。ここでは、販売が叶わなかった規格外品やデッドストック品をバリエーション豊かに取り扱っているのが特徴で、メゾンブランドからカジュアルウエア、アウトドアアイテムまでが広々とした空間に楽しげに並んでいるファッションのテーマパーク。新たな服のサイクルを生み出す実験場でもあり、見渡すだけでも心がワクワクします。

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サステナブルに意識を向けた意欲的なイベントが多く開催されてきたこの場所で、今秋から満を持してスタートしたのが今回の『服の文化祭』。「みんなで新しいサイクルをつくる」がコンセプトで、買い物を楽しむのはもちろん、服のサイクルについて学んだり、ワークショップ体験ができたりなど、文化祭さながら、いろんな“部活”による興味深いコンテンツが提供されます。vol.1となる今回、そのコンセプトに共感した「SARROWS」がメインパートナーとなって、ポップアップストアを出店するほか、さまざまなコラボレーションが行われたのです。

「洋服はどこで生まれ、どこへ行くのか」を想像してみる。

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まず、緑豊かな中庭を望むエントランスから真っ直ぐ進んでいくと「SARROWS」の印象的なブルーのロゴが見えてきました。ポップアップステージと呼ばれるそのブースの入り口には、以下のような印象的な文言が添えられています。

「服のゆくえ」
この部屋にある服は、
品質グレードはダウンしたものの充分に着られるもの、
一度は傷がついてしまったけれどその箇所を修理したものです。
どれも理由があってここへ集められた服ですが、
どれも限りある資源を使って、想いを込めて作ったものです。
ひとつでも多くの服がお客様と出会い、新しい旅を始められますように。
そして着終わった服についても、その服のゆくえを少しだけ想像し、
リユースやリサイクルによって、次の役割を与えていただけたら幸いです。

これらの服がどういう理由でここへ来たのか、そこにどんな想いが乗せられているのか。そしてそれらを自分が受け取ったあと、どう楽しみ、どう手放すのか。そんなことに想いを馳せながらブースへ入ると、3つの理由でここにたどり着いた洋服が並んでいました。
まずは「B品」。規格外品と呼ばれるもので、ほんの少しのほつれや傷などがある商品のこと。さらに「サンプル品」。これは試作したアイテムであり、撮影などで使用したりするものです。また「リペア品」も登場。よく見るとほつれが繕ってあるなど丁寧な修理が施されていて、その詳細が記載されたタグもついています。それぞれ着用にはなんの問題もなく、秋冬のおしゃれ心を刺激するものばかり。ここまでたどり着いた経緯を思うと、逆に愛着が湧いてしまいそうなアイテムがずらりと並んでいました。

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プロのスタイリングにより、洋服たちが再び輝き始める。

画像 ユナイテッドアローズ アウトレット 越谷店 樽見 ありささん

さらにブースの先へ進むと、華やかな10体のトルソーが目に飛び込んできます。これらは、ユナイテッドアローズ アウトレット 越谷店のスタッフの樽見 ありささんと、幕張店の渡沼 愛圭さんがスタイリングしたもの。「ユナイテッドアローズ」と「KISARAZU CONCEPT STORE」のアイテムをミックスした、いつもの店舗では見られない画期的なコーディネートが完成! ブランドやカテゴリー分けをせず、自由に洋服との出合いを楽しんでほしいという「KISARAZU CONCEPT STORE」の思いがあって実現したものです。

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画像 黒板のスタイリングのポイントもスタッフの手書き

「今回は、華やかさとトレンド、そのふたつを意識してスタイリングしました。たとえばピンクのニットとネイビーのパンツには、スパンコールのミニスカートをレイヤードして旬のムードに。個人的に気に入っているのは、袖のスタッズが特徴的な〈UNITED ARROWS & SONS(ユナイテッドアローズ&サンズ)〉のMA-1に、ホワイトのワンピースを合わせた甘辛ミックスのコーディネート。ここにも華やぎとトレンドを加えたくて、オレンジのニットフードをプラスしました。」

イキイキとした表情で、それぞれのコーディネートについて語ってくれた樽見さんは、『服の文化祭』の「SARROWS」ポップアップストアに関わったことで、新たな気づきがあったのだとか。

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「なんらかの理由でお客さまに届かなかったアイテムたちをトルソーに着せてみると、少しずつ息を吹き返して輝き始めたように思えたのです。10体のスタイリングを見て購入を決めてくれた方も多くて、すごくやりがいを感じました。お客さまに、『ここに小さな傷が』『少しシミが』と説明しても、『え? これ? 全然気にならない!』と好意的な反応が多かったのも印象的でしたね。一着一着、生地の生産者からデザイナー、パタンナーのほか、いろいろなクリエイターの思いがあって作られたもの。それらが廃棄されてしまうのはやっぱりもったいないこと。私たちとお客さま、どちらもがその思いを共有しながらおしゃれを楽しむことは、すごく素敵なことだなって気づきました。」

残反や端材が会場を盛り上げる名脇役に。

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『服の文化祭』の見どころは、ポップアップストアだけではありません。いろいろな部活によるイベントが各所で行われて、それらをホッピングするのもお楽しみのひとつ。たとえば「家庭科部」では、端材のボタンを使ったアクセサリーづくりや、残反を活用した蜜蝋ラップづくりのワークショップを開催。「写真部」では、スマホで撮った写真を印刷してオリジナルの台紙に挟んだものをプレゼントしてくれます。購入した洋服に作家さんが刺繍を施してくれたり、50種以上そろう手彫りスタンプからお気に入りを選んで自由にデザインできたりなど、自分だけの一着をつくりあげるブースまでが勢ぞろいしていました。

来場者が迷うことのないよう、それぞれ部活ごとに目印となるフラッグがあり、イベントブースにはのぼりが立っているのも印象的です。実は一部のフラッグに使われている生地は、〈UA〉が提供した残反を使用したもの。ワクワクするイベントのあちこちに、地球環境を思いやる工夫やアプローチが凝らされていたのです。

画像 スタンプ部のぼりはUA社が提供した残反にてできている。

さらに、数ある部活のなかでも、ひと際盛り上がっていたのが「工作部」。そこに集められたのは、さまざまな端材でした。帽子、サンダル、ネクタイ、リボン、ハンカチ、テーブルクロス、和紙に筒まで。〈UA〉は、そこに洋服の端材を提供しました。テーブルに集まった子供たちは、気になる端材を手に取り、思い思いにものづくりに励みます。洋服の端材をマントのように着せる様子も見られて、幼きクリエイションに驚くばかり。本来は捨てられてしまうものが、遊びにつながり、創作欲を刺激する。そんな循環を感じられる時間になりました。

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おしゃれ心と環境への思い、どちらもが叶う「SARROWS」へ。

「KISARAZU CONCEPT STORE」の「今ある資源に目を向ける」という考えに共感して、「SARROWS」としてタッグを組んだ今回の『服の文化祭』。在庫品をただオフプライスで売る形ではなく、ひとつひとつのアイテムを大切に丁寧にお客様に届けたいという思いが存分に詰まったイベントになりました。秋冬のお買い物を楽しみながら、気がつけばサステナビリティについて学んでいて、いつの間にか「新たな服のサイクル」に自らが加わっている。まさに「Circularity 循環するファッション」につながっています。

ともすれば企業のサステナビリティ活動は、堅苦しいものになってしまいがち。だからこそまずはお客さまの視点に立ち、しなやかに健やかに、そして何よりおしゃれ心を刺激するような「SARROWS」イベントを増やしていきたいもの。今回の『服の文化祭』は、その可能性を大きく広げてくれる貴重な機会となったのです。

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PROFILE

KISARAZU CONSEPT STORE(木更津コンセプトストア)

KISARAZU CONSEPT STORE(木更津コンセプトストア)

ファッションを楽しむテーマパークであり、洋服の新たなサイクルを生み出す実験場として2023年6月にオープン。これまでの商流ではお客様に届けられなかったデッドストックや規格外品などの服にフォーカスし、新たな買い物体験を提案。また、新素材やアップサイクルといった新しいモノづくりの技術を紹介するなどファッション業界の未来を考える施設として、さまざまな取り組みを行っている。
https://kisarazu-concept-store.com/

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