
ウツワ
2021.09.28 TUE.
移転リニューアルした“伝説的”サーフショップ「California General Store」が打ち出す、ローカライゼーションな店づくりとは。
1990年代に湘南・藤沢にオープンし、多くの人を魅了した“伝説的”サーフショップ〈California General Store(カリフォルニア ジェネラル ストア)〉(以下、CGS)が、ユナイテッドアローズ社の手により移転リニューアルオープン。ショップでは、地元の電力会社の使用やビーチクリーン活動への参加など、ローカルにフィーチャーした活動を行いつつ、環境に配慮したお店づくりにフォーカス。ライフスタイルに寄り添うコンセプトや取り組みについて、ショップリニューアルの仕掛け人であるBY本部 本部長 清水 学さんにお話を伺いました。
Photo:Shunya Arai(YARD)
Text:Akemi Kan
当時のサーフシーンを変えたカリスマショップ。
―まずは〈CGS〉の歴史を教えてください。
1997年に湘南藤沢の海から少し入った場所に前オーナーの石田さんがスタートさせた、ある意味カリフォルニアよりもカリフォルニアらしい雰囲気のサーフショップ。当時、アメリカ西海岸のサーフカルチャーを伝えるお店は少なかったので、訪れるだけでワクワクする場所でした。僕は2003年くらいから通いはじめました。ライブやイベントなども頻繁にあり、さまざまな交流が生まれた場所でもあります。ファッション業界の人も多かったですね。
―サーファーなら誰もが知る伝説的なサーフショップだったそうですね。
そうだと思います。〈CGS〉は当時のサーフシーンを変えたお店だと思っています。このお店の誕生によって、重たいシングルフィンのロングボードをスタイリッシュに操り、様々な形や長さのボードにも乗る。そしてウエットスーツも黒ラバーに拘るといった、オルタナティブなサーフシーンを世界に仕掛けた伝説のお店です。
オーナーの石田さんはカリスマサーファーのジョエル・チューダーと親交が深く、彼自身もよく来日の度にお店に訪れていました。
―石田さんとジョエル・チューダーが立ち上げたウエットスーツブランドは、かなりの人気だったそうで。
はい。〈AMSTERDAM WETSUITS(アムステルダムウエットスーツ)〉は当時湘南の上手いサーファーはみんな着ていた印象です。最近になって、友人や知人に“恐れ多くて着れなかった”と当時の気持ちを伺うこともあったりして。やっぱり特別な存在だったんだなと改めて感じています。
―〈AMSTERDAM WETSUITS〉はリニューアルオープンする〈CGS〉でも力を入れていくと聞きました。
お店を象徴していたブランドでもありますから、大切に引き継いでいきます。お店でのオーダーはもちろん、今後は国内外の卸にも力を入れていきたいです。もっと多くの人に気軽に着てもらえると嬉しいです。
―リニューアル後のキーワードは何でしょうか?
昔から石田さんは『ここはサーフショップじゃなく、ライフスタイルショップだ』とおっしゃっていました。リニューアル後もまさにその通りで、「ウェルネス」「サステナビリティ」を提案するお店として、さまざまなカルチャーを発信していきたいと思っています。本当に愛されていたお店なので、以前の場所での閉店を惜しむお客さまはもちろん多いのですが、それと同じくらいリニューアルオープンを期待される方も多いです。コラボレーションのオファーも続々といただいていて、〈CGS〉のカリスマ性を再認識しています。その分プレッシャーも大きいですが、全力で頑張ります。
ローカルに根付いたお店づくりをコンセプトに。
―〈CGS〉では、湘南電力を使われるそうですね。
はい。このお店のコンセプトに基づいて、地域社会にも積極的に関わっていきたいと思っています。〈CGS〉では以前はよくイベントを開催していたのですが、近所のお店やアーティストたちがイベントに協力していることが多くて。その空気感が気持ちいいなと個人的にも感じていました。その文化を継承したいという想いは強いです。湘南電力はローカル企業への援助などを行っているので、電気料金の1%をその寄付に充ててもらいたいと加盟しました。お店近隣のビーチクリーンも出勤時にスタッフが毎回行うようにしています。ローカルコミュニティを大切にしながら拡大していけたらと思っています。
また、〈CGS〉リーダー兼バイヤーの秋山さんは、店舗で行うイベントやスクールを通して地元に住む若い世代にもお店の魅力を伝えていきたいといいます。馴染みのお客さまには、サーフィンをやっているお子さまも多いので自然な流れでお店に足を運んでくれそうです。
―イベントやワークショップの開催予定はありますか?
このお店がローカルの交流の場になってほしいという願いもあります。少なくとも月に1度は地元のアーティストや職人にフィーチャーしたイベントをやる予定です。ワークショップや地元野菜のマルシェ、軽飲食の提供など、地元・湘南や<CGS>にゆかりのある方々と積極的に関わっていきます。
―オープニング記念のコラボアイテムを発売される予定もあるそうですね。
そうなんです! オープニングのイベントとして人気アーティストbaanai氏とのコラボTシャツとエコバッグを発売します。彼は生まれも育ちも鵠沼で、かつて〈CGS〉で働いていたこともあるんです。ショップとの親交が深い彼に、お店をイメージした作品をお願いしました。
―サーフスクールとヨガスクールを常設されると伺っています。
サーフスクールは1日2名までの少人数制で、予約が入れば毎日開催する予定です。スポンジボードを使った90分ほどのレッスンなので、初心者から体験できます。インストラクターは以前の〈CGS〉でもスクールを担当していた秋山さんです。ヨガスクールは月に2回開催。第1、第3土曜日の9:30からで、75分のレッスン。広いウッドデッキがあるので、そこも活用する予定です。以前からお店にゆかりのあるプロインストラクターのCHICOさんが担当。彼女が教えるのはセルフアライメントヨガといって、骨格を整えていくような動きが中心。マッサージの資格も持つ彼女ならではのレッスンは、骨盤や背骨のズレ、顔のゆがみを解消してくれます。また、身体のラインが美しくなるほか、新陳代謝アップや血液の流れの改善など、嬉しい効果が期待できます。
―サーフボードも販売されるのですか?
以前と変わらず、ウエットスーツやサーフボード、サーフギアのアイテムは展開します。いまはヴィンテージボードが中心ですが、今後は湘南ローカルシェイパーのサーフボードもオーダーできる仕組みを作りたいと考えています。それもまた、ローカルに根付いた新しい提案に繋がると思っています。
―ユナイテッドアローズ社として新しい働き方の提案もされたとか?
社内にはサーフィンやヨガをやっているスタッフが多いんです。彼らは別店舗のスタッフですが、希望を募って〈CGS〉に立てる機会を設けます。海が目の前にある環境で仕事できるのは嬉しいはず。職と遊を融合し、スタッフが趣味も仕事も一緒に楽しめる環境を提案したい。これもこのお店のコンセプトのひとつです。
サステナビリティの発信基地としての役目を担う。
―サステナビリティを提案しているお店として、活動されることは?
ショッピングバッグの廃止や日本環境設計株式会社が展開する「BRING」と連携し不要になった衣料品の回収など、環境に対する配慮を徹底して行っていきます。お店では〈CGS〉というオリジナルウエアを展開しますが、大半がオーガニックコットンやリサイクルポリエステルなどのサステナブル素材。型数を絞り、在庫も作りすぎない。破棄を減らすことにも注力しています。
―オリジナルウエア〈CGS〉はどんなデザインですか?
ベーシックなアイテムを中心に、品質の良さを感じるもの。トレンドやシーズンカラーにもあまりとらわれず、長く着ていただけるウエアを展開します。ジェンダーレス提案のため、レディス、メンズの区別はなく、SMLのサイズ展開。Sは女性がゆったりとリラックスして着られるサイズ感です。
―コラボアイテムを通して、モーリシャス諸島への支援も行うそうですね。
モーリシャスで座礁事故が起こり、海に油が流れたニュースは多くの人がご存知だと思います。この状況からモーリシャスの美しい海を守るため、売り上げの一部を寄付するための「Mauritius Blue Action(モーリシャス・ブルー・アクション)」プロジェクト支援のアイテムを作りました。モーリシャスの主要産業である繊維産業への貢献はもちろん、観光業や漁業、海洋資源への支援に寄与することを目指す団体とコラボレーションしています。
―最後に、今後の展望を教えてください。
“伝説的”サーフショップ〈CGS〉の前のオーナーの意思を引き継ぎ、開放的で誰でも参加できるローカルコミュニティを目指します。そしてライフスタイル提案の新しい形として、「ウェルネス」の魅力を発信していきたい。同時に「サステナビリティ」であることで、明るい未来に貢献し続けたい。この場所に来るとワクワクする。以前の僕が感じていたような喜びや空気感を多くの人に感じていただけるように、そして最終的にはここに<CGS>があってよかったと言ってもらえるようなお店になると嬉しいです。
INFORMATION
PROFILE

清水 学
1996年ユナイテッドアローズ 原宿店にアルバイト入社。 その後、数店舗の店長を経て2004年より販売部に異動。販売部長を経験した後、 2016年にH BEAUTY&YOUTHの店長を経て、2021年よりBY本部 本部長。