
ウツワ
2016.12.02 FRI.
時は体験なり#2 私らしいクリスマスづくりへのカウントダウン
リースづくりワークショップ。
イチョウが黄色く色づき、寒さを感じる朝を迎えるようになると、街ではイルミネーションを見かけるようになってきました。今年もそろそろこの季節か・・・と思いふけるある日、クリスマスリースづくりのワークショップに参加しました。夢中になった時間で手に入れたのは、冬のリースだけでなく、「美しいものを、自由に、創作する」という貴重な体験でした。
Photo:Lisa Mogami
Text:Maho Honjo
「きれいにつくる」のではなく、「自分らしくつくる」
ワークショップが行われたのは、ある晴れた日曜日の11時から。にぎわうキャットストリートを歩いて〈ロク ビューティ&ユース〉に向かうと、ガラス張りのモダンなエントランス越しに独創的な花々が見えてきます。ワークショップ自体は、お店の奥にあるスペースにて開催。「アンティークっぽい雰囲気に仕上げたい」という初参加の女性から、「グリーンをメインにボリュームあるものをつくる予定」というお子様と一緒に参加のママ、「昨年はリース(輪)をつくったので、今年はスワッグ(壁飾り)を」というリピーターなど、楽しい雰囲気のなかはじまります。
まずは、〈THE LITTLE SHOP OF FLOWERS〉主宰の壱岐ゆかりさんによる挨拶と説明からスタート…なのですが、「リースづくりとはいえ、難しいルールはなし。私がお手本をつくることでそれに縛られたらもったいないので、自由に始めてください」と!
まず、ベースとなる赤ツルの束を三つ編みのように編み込みながら、リースの骨組みをつくることからはじめます。そして、各自使いたい花材を7〜10種ほど選び、バランスを見ながら、赤ツルのベースに編み込んでいきます。
どこに飾る? どう飾る? まずは空間をイメージ。
リースづくりのコツを伺うと「とにかく、思い切りです」と笑いながら断言。「植物だと思ってやさしく接するより、勢いよく扱うほうが意外に上手にできるもの」「リースとはいえ、丸じゃなくてもいいですよ。長くてもいい、はみ出してもいい」「平面で見るのではなく、3Dの視点を忘れずに。上下左右、凹凸をつくりながら全体のバランスを見てください」「自分の手が水になったような感覚で、ひとつひとつの花材を重ねて、溶け込ませるように」。壱岐さんがひとりひとりのつくり方を見て、ときに手助けをしながらアドバイス。それらを聞きながら、「では、自分はどうするのか。どうしたいのか」、あらためてイメージを固めていきます。
いろいろなアドバイスのなかで私が動かされたのは、「リースにしろ、ブーケにしろ、お花のプロダクトづくりは“自分探し”。あれこれ試しながら、自分の感性を表出させてみて」というもの。また、現実的なアプローチとして「まずは、どの空間にどう飾るのかを考える。そこから始めるとイメージが固まりやすい」とも。
そこで、場所はリビングの壁、今は絵画を掛けている場所にアートのように飾ることに決定。また、赤ツルの先端に動きがあるのがおもしろく感じたので、輪の形を意識しつつも、その流線を生かすフォルムに。さらにクリスマスカラーの赤にはこだわらず、色調を抑えて大人っぽく。グリーンとモーヴピンクのユーカリをメインに、ブルーレースなどの小花類を編み上げたら、左上部分はあえて何も絡ませず、抜け感を演出して…などなどイメージは広がるものの、もちろん思い描くとおりに事は進みません。
参加者の意見交換は、ワークショップならではのお楽しみ。
四苦八苦しながら、参加者同士で「ベースが定まらないのですけれど、どうしたら?」「私は赤ツルでさらに固定しましたよ」「その組み合わせ、とても素敵!」「ならばもう少し足そうかしら…」など会話が弾むのも、ワークショップの醍醐味。一方、完成が近づくと、それぞれ没頭する時間に。最初は、正解がない分迷うものの、だんだんと自分らしさを表現するのが心地よくなるのです。ルールから外れて走り出すのは少し怖い。でも、その自由さに心が躍っているのがよくわかります。
無我夢中の時間を経て、いざ完成! 最後は壱岐さんが全体のバランスを見ながら手直しをしてくれます。すると、うまく成形できずにもどかしい思いをしていた流線のラインが見事くっきりと表れました。まるで彫刻家が輪郭を削り出すような手さばきは、大胆で繊細で、思わず見惚れてしまうほど。
そして完成後のお楽しみは、〈eatrip〉の季節のパイ! いつもとは違う頭を使ったからか、脳が甘いものを欲していて、自然の甘みがじんわりと染みていきます。その間は参加者同士、お互いの作品について感想を述べ合う時間に。リースはそのまま持ち帰ることができるのと、クリスマスを過ぎてもドライフラワーとして楽しめるので、年を越したら南天などお正月のアレンジを施して、長く堪能できそうで嬉しい。
作品は暮らしを豊かにし、感性は人生を輝かせる。
「リースをつくるときは、野山の落ち葉をそのままガサッと拾い集めて、それをプロダクトにする感覚でトライしてほしいですね。リースを飾るというより、自然をそのまま部屋に運んでくる感じ。そのほうが人の暮らしになじむと思うんです」「たとえばファッションも『きちんと着なさい』と言われるより、『自分らしく着こなして』と言われたほうがワクワクするでしょう」
ハッとするような言葉を何気なく発しながら、朗らかに微笑む壱岐さん。魅力あふれる女性オーナーのワークショップで得たものは、空間を彩る自然からの贈り物、そして感性を自由に表現することの喜びと充実感でした。
慌ただしく過ごしてしまう毎日に穏やかさと新しい刺激をくれる、もの作りの時間。みなさんも、わたしらしいクリスマスを作る準備をしてみてはいかがでしょう?
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