ダイワ|ファッションの世界でも釣果を上げるフィッシングの世界王者|知っておくべきブランド
いくら直幸
フィッシングシーンでは知らぬ者はいないトップメーカーであり、近年ではファッションのフィールドでも衆目を集める<ダイワ(DAIWA)>。その長年にわたる航海を振り返りながら、新たな船路にも舵を切った現在地を再確認。併せて、そこから派生した兄弟ブランドについても解説します。
世界で愛されるNo.1釣り具メーカー
ファッション分野での歴史は浅いものの、そのルーツは古く1950年代まで遡ります。元々はカメラ店を営んでいた松井義男氏が、カメラの距離計を製造する松井製作所を創業。'55年、主にアメリカへ輸出する釣り用リールのOEM生産に乗り出し、'58年に東京・中野の大和町に大和精工('69年にダイワ精工へ変更)を設立したことが始まりです。'62年には自社工場を構える東京・東久留米に本社を移すとともに、オリジナルブランドの<ダイワ>をスタート。以降、ロッドなど種々さまざまを揃えるフィッシング用品の総合メーカーへと拡大しました。
そうした過程で世界初となる画期的なテクノロジーを数多く開発。なかでも当初からの主業であったリールの評価は高く、これを筆頭とした優れた開発力と技術力を武器に、今では世界シェアNo.1(2024年時点)を誇る釣り具のリーディングカンパニーへと成長を遂げています。
適度なゆったりボディに、撥水加工のストレッチツイルを使った<ダイワ>のハリントンジャケット。フロントには上下開閉のWジップ、内側にも2つのポケットを配備。
随一の技術を洗練のタウンユースに
その皮切りとして'10年に話題となったのが、当時NIGO®氏が率いたア ベイシング エイプ®とのコラボレーベル<ア フィッシング エイプ®>の発表。これがファッションシーンへと参入する狼煙でもありました。しかし翌年に発生した東日本大震災の影響から計画を一時断念。ただ決して屈することはなく、水面下ではじっくりと時間を掛けて準備が整えられていたのです。
同じく<ダイワ>の2タック入りトラウザーズは、上に紹介したブルゾンと共地の撥水ストレッチツイルなのでセットアップにも対応。肌触りドライでシワにもなりにくい。
続いて'20年には、セレクトショップ限定で取り扱われる<ダイワ ピア39(DAIWA PIER39)>を始動。ビームスによるプロデュースのもと、大自然と都会をつなぐ桟橋となるリアルクローズを提案しています。フィッシング由来の素材とディテールを、ミリタリーテイストやテーラードの様式に落とし込み、時流のオーバーサイズで仕立てたワードローブはまさに今の気分。熱心なファンも多く、早々に完売するアイテムも少なくありません。
軽やかで乾きやすく、シワになりにくいポリエステル素材にして、表情はコットンライクな<ダイワ>の隠しボタンダウンシャツ。前開きは留め外しクイックなスナップ式。
普段使いにも有用な高機能マテリアル
また、細くても強靭な釣り糸の製造技術を応用したしなやかで頑丈なファブリック、釣り竿のノウハウを活かした傘など、フィッシングメーカーならではの知見と実力が随所に注ぎ込まれているのもユニークです。さらには不要になった衣類、ペットボトルのゴミや古くなった漁網を回収・再生したサステナブルな資材を積極的に採用し、海洋保全・環境問題に取り組んでいる点も、自然と向き合って共生し、育まれてきた企業らしい活動と言えます。
半世紀以上にもわたってグローバル市場で培ってきた豊かな経験と技術と趣向を、グッドセンスなクリエーションとアイデア、多角的なアプローチで現代のライフスタイルにフィットさせているところこそ、<ダイワ>が発信するファッションの魅力。国内外たくさんのライバルのなかで一歩抜きん出た釣果のわけは、そこにあります。
ファッションライター いくら直幸
人気アパレルメーカーのPRを経て、1990~2000年代に絶大な影響力を誇ったストリートファッション誌『Boon』の編集者に。現在はメンズ雑誌&ウェブマガジンをはじめ、有名ブランドや大手セレクトショップのオウンドメディアにも寄稿。近年はYouTube番組への出演、テレビ番組のコーディネート対決コーナーで審査員を務めるなど活動の幅を広げている。