
トーマスメイソンこそ最高峰であり、いつの時代も “ いいシャツ ” の証
2023.07.31
知ってほしいブランドについてファッションライターが語る連載コラム

2026.07.23
月桂樹のトレードマークで知られるロンドン発祥の<フレッドペリー(FRED PERRY)>は、当連載でも以前ご紹介したパリ生まれのラコステ、そしてニューヨークのポロ ラルフ ローレンと並んで “ ポロシャツの御三家 ” に挙げられる名門。その栄光のヒストリーを辿りながら、ブランドの個性や代表作、ほかとの違いを解き明かします。
( 01 )
その歴史は “ 英国テニス界の神様 ” と謳われるフレデリック・ジョン・ペリー氏によって幕を開けます。コットン紡績工の息子として生まれた彼は、19歳のときに卓球の世界選手権で金メダルを獲得するなど、別のラケット競技でトップを極めた若きホープでした。20歳でテニスに電撃転向するとメキメキと頭角を現し、イギリス代表としてデビスカップ4連覇の立役者に。またウィンブルドン選手権での3連覇をはじめ、全米を3回、全豪と全仏もすべて制覇し、史上初となる生涯グランドスラムを達成。さらに端正な容姿とコート内外でのスタイリッシュな出で立ちから、ベストドレッサーとしても注目されるスタープレイヤーとなったのです。
フレデリックは1940年代の後半、元アスリートで繊維業界での経験をもつ知人とともに、手首につける汗止めバンドを開発します。これが今では広く浸透しているタオル地のリストバンドの始まりです。自らの愛称であった<フレッドペリー>の名入れがされたそれは、各国の有力選手がこぞって着用。既にレジェンドであった彼のネームバリューも手伝って大成功を収めると、同じくテニス界の伝説であったルネ・ラコステ氏にならってスポーツウェア作りに乗り出します。2人は正式に会社を立ち上げ、最初のモデルとなる白一色のポロシャツ「M3」を '52年に発表しました。
ポロシャツの生地とツインティップラインを落とし込んだ鹿の子Tシャツ。通常モデルでは細身のシルエットであるそれを、B&Y の別注では時流に即したリラックスフィットにアレンジ。
テニスウェアといえば少しオーバーサイズが主流であった当時、同社が打ち出したのはフィット感のあるスタイリッシュなシルエット。そして左胸には、大会側の許可を得て、ウィンブルドンのシンボルマークであった月桂冠=ローレルリースが刺繍されていました。彼は完成したばかりのそれを、ちょうど開催中だったウィンブルドンの出場選手たちに提供。こうして聖地のコートでデビューを飾ったポロシャツは、洒落者と知られたフレデリックのカリスマ性にも後押しされ、瞬く間に人気が爆発したのでした。
数年後、取引先のスポーツ用品店より「サッカーファンのお客様から、クラブカラーのポロシャツが欲しいと要望があった」とリクエストが寄せられます。そこでフレデリックは、襟と袖口にさりげなくチームカラーをあしらったデザインを考案。こうして '57年、ブランドのシグネチャーである2本線のツインティップラインが誕生し、それこそが現在でも販売されている「M12」なのです。
テニスシャツの名作であるラインポロの起源が、実はサッカー由来であったというのは何とも興味深いエピソード。またコートでもピッチでもなく、サポーターがスタンドや街で着用するアイテムとして出発しているのも、後にストリートファッションに受け入れられていく<フレッドペリー>の運命を予感させます。
( 02 )
'60年代に入ると、モッズと呼ばれるロンドンのオシャレな若者たちの必須アイテムとなって大流行。クラブやパーティーで踊り明かしてもシワにならないポロシャツは、彼らにとって絶好の一枚だったのです。そのカルチャーをリアルに映し出した '79年公開の映画『さらば青春の光』の劇中でも、<フレッドペリー>の「M12」の上にM-51パーカを羽織り、リーバイスの501とクラークスのデザートブーツをスタイリングした主人公が登場します。
さらに '70年代には、モッズから派生したスキンズへと継承。スキンヘッド、ロールアップしたスリムなデニムパンツにサスペンダー、ドクターマーチン、そこに<フレッドペリー>のポロシャツを合わせるのがユニフォームに。こうしたムーブメントに端を発し、ブランドは海外のストリートシーンへと進出。いよいよ日本でも本格展開がスタートしました。
長袖ポロシャツとトラックジャケットを掛け合わせたような B&Y 別注アイテム。秋や春は装いのメインに、冬はアウターの中に投入するなどカーディガン感覚でフレキシブルに着回せる。
同時に音楽シーンでも存在感を高め、ポール・ウェラーやフレディ・マーキュリー、ザ・スペシャルズをはじめ、'90年代にはブリットポップを牽引したブラーやオアシス、2000年代にはザ・リバティーンズなど、UKアーティストが<フレッドペリー>のポロシャツやリストバンド、トラックジャケットを愛用。名だたるミュージシャンが公私で見せるスタイルは、世界中の若者に多大な影響を与えました。
以降、ロンドンカジュアルの代表格となって不動の地位を確立。現在、主要な大手セレクトショップでは毎シーズンのように定番モデルと別注アイテムが店頭を彩り、長年にわたって好セールスを続けています。この事実もまた、根強いファンが多く、かつ時代に左右されないタイムレスなブランドであることを物語っています。
( 03 )
続いては、幅広い同社のラインナップから、揺るぎない支持を得ている主なポロシャツをご紹介。それがブランドの名が冠された「フレッドペリーシャツ」コレクションであり、その中には2つのカテゴリーがあります。
まずは、不朽のヘリテージを忠実に受け継ぐメイド イン UK シリーズ。創業から変わらずイングランドはレスターの工場で生産され、ファブリックにはソフトな風合いが心地いいコットン100%の鹿の子を使用。品番の先頭に「M」がつくユニセックス対応のメンズモデルはブランド伝統のボックスシルエット、頭文字が「G」のウィメンズモデルは全体的にコンパクトなスリムフィットに設定されています。
・「M3」:ティップラインのない単色ボディ。フレデリック自身がデザインした原点のアイテム。
・「M12」:2本線のツインティップラインが配された最初のモデル。長袖は「M1212」、ウィメンズは「G12」。
・「M2」:1本線のシングルティップラインをあしらって '60年代に発売。
ブランドの象徴である名作 M12 の身幅を細めに、着丈を長めに、袖を短めにモダナイズしたベストセラーモデル「M3600」。数十種にも及ぶ豊富なカラーバリエーションも人気の理由。
そして2つめは、これらのマスターピースをブラッシュアップしたモダンスタンダードのシリーズです。ファブリックは同じくコットン100%の鹿の子ですが、ややシャリ感のあるドライタッチを味わえ、高温多湿な日本の夏でも爽やかな肌触り。またシルエットは英国製に比べて程よくタイト、着丈は少し長く、ショートスリーブの袖丈は短めにアレンジされ、ウィメンズモデルは先述の「G12」より適度にゆとりがあり、男女ともにレギュラーフィットとなっています。
・「M6000」:ティップラインなし。長袖は「M6006」、ウィメンズは「G6000」。
・「M3600」:ツインティップライン入り。大充実のカラーバリエーション(本国では70色以上!)を展開するベストセラー。長袖は「M3636」、ウィメンズは「G3600」と長袖の「G3636」。
最後に、<フレッドペリー>と並んで “ ポロシャツの御三家 ” と称されるラコステ、ポロ ラルフ ローレンとの違いについて。それぞれイギリス、フランス、アメリカのブランドですが、いずれもテニス4大大会の開催都市に本拠地を置いている点は共通。また、とりわけ無地のタイプだとパッと見は左胸の刺繍でしか差がわかりづらく、何を基準に選ぶべきか悩んでしまいます。
時代や生産国によってマイナーチェンジがあるため一概ではないものの、現在レギュラー販売されている各社の代表作を比較すると概ね下記のとおりです。ひとつの例として参考にしてください。
①<フレッドペリー>の「M12」
②ラコステの「L.12.12」
③ポロ ラルフ ローレンの「クラシックフィット」
・発売年:① '57年 ② '33年 ③ '72年
・刺繍:①ローレルリース ②ワニ ③ポニー
・生地:①やや厚手 ②柔らかく微光沢 ③滑らか
・身幅の細さ:① < ② < ③
・袖:①細めで長め ②パフ型で長め ③太めで短め
・襟:①中間 ②小さめ ③大きめ
・前立て:①細め ②中間 ③太めで浅め
・ボタン:①樹脂 ②白蝶貝・黒蝶貝 ③樹脂
・裾スリット:①なし ②浅い三角形 ③深めで後ろ身頃が長め
とはいえ、3社ともにフィットやファブリック、デザインの異なる多種多様なバリエーションを取り揃えているので、やはり店頭で試着して体型や好みに合うものを見つけるのが最も確実で早道でしょう。
ローレルリースがワンポイント刺繍されたキャップは、シンプルゆえに幅広いコーディネートに対応。ポロシャツと同様の鹿の子生地なので通年で活躍し、背面ベルトでサイズ調整も可能。
加えて、お国柄や歩んできたバックグラウンドからブランドイメージも三者三様です。ざっくり表すと、<フレッドペリー>はモッズや音楽との結びつきからカルチャー色が強めでカジュアルな印象。ラコステは王道であり、コンサバティブかつエレガント。ラルフは東海岸の上流階級、アイビー&プレッピー、B-BOYやスケーターにも愛されるアメリカンスタイルの象徴といったところかと。
そうした個性を頭の片隅に置いたうえで、自身の趣味嗜好やファッションに応じてチョイスすると、どれも似たように思えるポロシャツ選びがもっと楽しくなるはず。かくいう私も、テニス部で汗を流した学生時代からポロシャツが大好き! この3社を中心に何枚も所有しており、その時々の気分やコーディネートで使い分けています。
( Writer Profile )
ファッションライター
いくら直幸
人気アパレルメーカーのPRを経て、1990~2000年代に絶大な影響力を誇ったストリートファッション誌『Boon』の編集者に。現在はメンズ雑誌&ウェブマガジンをはじめ、有名ブランドや大手セレクトショップのオウンドメディアにも寄稿。近年はYouTube番組への出演、テレビ番組のコーディネート対決コーナーで審査員を務めるなど活動の幅を広げている。
※掲載している商品は、販売終了によりご購入いただけない場合がございます。あらかじめご了承ください。
( Item Lineup )