
ヒト
2025.01.16
「フィータ」×「YOHEI NOGUCHI」が表現する、リスペクトを込めたモノづくり。
“繋ぐ”をコンセプトに、世界中に継承すべき希少な技術や手仕事のぬくもりを商品を通して伝える〈Pheeta(フィータ)〉から、初の小物アイテムが発売。ともに手掛けるのは、北欧サーミ族の伝統的なアクセサリー制作技術をベースに、新たな素材や技法と掛け合わせ、独自のアクセサリーを生み出している〈YOHEI NOGUCHI〉。今回は、〈YOHEI NOGUCHI〉のデザイナーである野口 陽平さんに、ブランドを始められたきっかけから今回の〈フィータ〉とのコラボレーションに至った経緯までお話を聞きました。
Photo:Yuko Sugimoto
Text:Mikiko Ichitani
〈YOHEI NOGUCHI〉の考える、北欧の伝統を日本で扱う意味。
学生時代にアパレルのセレクトショップで働いていて、そこで〈マリアルドマン〉のサーミブレスレットを取り扱っていたんです。当時、アクセサリーなどはつけていなかったのですが、普通のシルバーアクセサリーとは違う、民族的なムードやクラフト感に惹かれて買うようになったのがはじまりです。
— そこから自分で作ってみようと思われたのですか?
はい。サーミブレスレットの主な素材である、トナカイの革や角とピューターワイヤーと呼ばれる錫糸を集めるところからスタートしました。どれも日本にはない物なので、スウェーデンから取り寄せるしかなくて。海外のクラフト系のオンラインショップを通じて作家さんにコンタクトを取って、メーカーさんや仲介業者さんを紹介してもらいました。
— 独特な技法はどのように習得されたのでしょうか?
最初は、良く連絡を取っていたフランスの作家さんがサーミブレスレットを作成するキットを1本分送ってくれて、それを実際に作ってみたところから始めました。そこから、いろいろなブランドや作家さんのサーミブレスレットをとにかく集めて、それらを解体して、絵に起こしてみてと、試行錯誤しながら作り方を分析しました。
一部のサーミ族はトナカイを遊牧して生計を立てているのですが、これらのアクセサリーはトナカイの革や角といった副産物を使って、トナカイへの感謝と敬意を表すお守りとして伝承されてきた物なんです。生と向き合う姿勢や、彼らのバックボーンを感じることができるところが魅力だと思います。
— 〈YOHEI NOGUCHI〉のモノづくりにおけるこだわりを教えてください。
素材は全て北欧の物にこだわって取り寄せています。北欧では個性的なカラーリングの物が多いのですが、〈YOHEI NOGUCHI〉では日本人の肌に馴染む色合いを心掛けていますね。編み込みも現地の物をそのまま踏襲するのではなく、自分なりにいろいろとパターンを作ってみて、どんなファッションにも取り入れやすいシンプルさなんかも大切にしています。現地の手法をただトレースするのではなく、自分なりのアイデアや日本らしさといったオリジナリティもしっかりと取り入れることが、日本で彼らの技術を使ったモノづくりを行う意味にもなるんじゃないかなと思っています。
二つのブランドの個性を尊重する、調和のとれたコラボレーション。
個人的にずっと〈フィータ〉の洋服が好きでした。展示会など人前に出るときはいつも着ているくらい〈フィータ〉好きであることを公言していて、そこから知り合い伝いで〈フィータ〉のディレクターである神出さんと昨年の2月にお会いすることができました。
— 〈フィータ〉のどのような部分に惹かれたのですか?
一番最初に買ったのはシャツだったのですが、すごく雰囲気があるなというのが第一印象でした。ゆったりとした少し大きめのシルエットや、良い意味できちっとしていない感じなど、個人的に好みの点が多いのですが、手作業の工程が垣間見えるようなクラフト感といった部分にも惹かれたんでしょうね。実際に着てみてしっくりくるところも着続けている理由の一つです。
— 手作業のモノづくりや生産背景などにも共感されますか?
ファッションに限らず、陶器や木工など人の手作業によって作られたプロダクトには興味を惹かれるので集めているのですが、〈フィータ〉にもそれと同様の魅力を感じています。
「〈フィータ〉から出すアクセサリー」といったところからお話が始まり、そこからアイテム選びも具体的に詰めていきました。サーミブレスレットをベースに〈フィータ〉の生地を使うということもできたのですが、そうするとあまり〈フィータ〉感が出ないんじゃないかなと思ったんです。アイコニックなピンタックなどを取り入れた〈フィータ〉の世界観が詰まったアイテムのエッセンスとして〈YOHEI NOGUCHI〉のデザインが入ったら素敵だなと。邪魔はしないけど、主張はある。というようなちょうどいい形で落とし込めるものとして、今回のハンドバッグとシュシュの2アイテムを選びました。
— デザインはどのように決めていかれたのでしょうか?
特にテーマなどは設けずに、膝をつき合わせて話していくなかで、自然とお互いのブランドの個性が調和するようなアイデアが生まれてきたような気がします。僕からは生地選びを提案させていただいて、ピューターが際立つようなデニム地を採用しました。
神出さんを筆頭に〈フィータ〉の皆さんが、編み込みなど〈YOHEI NOGUCHI〉のシグネチャーとなるモチーフを生かせるようにと常に考えてくださって、〈フィータ〉ならではのピンタックとかけ合わせて、素敵なデザインに仕上がりました。細かい部分ですが、ブランドロゴの入ったチャームも今回はピューターの色に合わせてシルバーで作っていただきました。
— 完成したアイテムをご覧になっていかがですか?
とても素敵に仕上がって嬉しいです。男性にもおすすめできますし、僕も欲しいくらい、満足できるモノができました。
ワークショップを通して伝えたいこと。
ブレスレットのワークショップを準備しています。手首のサイズを測ってからお好きなパーツを選んでもらい、編み込みから縫製まで、すべてお客様にやっていただきます。
— 全部自分で作るんですね!パーツも豊富で選ぶのも大変そうですね。
ボタンはトナカイの角をスウェーデンの職人が一つひとつ手作業で作っているので、すべて風合いもことなっていて悩んでしまうかもしれませんね。ベースとなるレザーも色違いで、全6色から選んでいただけます。
だいたい2時間から2時間半ぐらいで作成できると思います。作ったブレスレットはその場で持ち帰っていただけます。モノづくりの楽しさを感じていただけたら嬉しいですね。
— ワークショップでのアクセサリー作りを通して、伝えたいことはありますか?
現地の方やこれまでご協力いただいた多くの方たちに、何かしらで返していきたいという想いがあるので、こういった伝統的なモノづくりを実際に体験してもらうことで、ルーツとなるサーミ族の歴史やトナカイを使っている経緯や意味などもお伝えしていけたらと思っています。
モノづくりを続けていく先で見る夢。
日本だけでなく、海外の方にも少しずつ知っていただけたらなと考えています。現在は、年に一度北京で海外向けの展示会を行っているのですが、今後はヨーロッパ圏やアメリカの方にも見ていただけるような機会を作っていきたいと思っています。あとは、これはまだ構想段階ですが、実店舗も考えています。
— お客さまと直接コミュニケーションのとれる空間があると制作の刺激にもなりそうですね。
そうですね。受注いただいた商品の制作だけでなく、ときどき思いつきのアイデアで作ってみることもあるんです。例えば、編み込みを使ったアートパネルとか。今は自分の中だけで留めているんですけど、そう言った商品以外もご覧いただけるような空間や、コミュニケーションの場が作れたら良いなというのが夢ですね。
INFORMATION
PROFILE

YOHEI NOGUCHI
北欧サーミ族に古くから伝わる刺繍技法を用いた装飾工芸品“Duodje(ドゥオッチ)”の制作技法をベースに、独自の技術やデザインを取り入れ、一点一点手作りでアクセサリーの製作を行う。
https://www.yoheinoguchi.com/