
ヒト
2025.03.13
「ユナイテッドアローズ」と協業、韓国発バッグブランド〈OSOI〉とは
「ユナイテッドアローズ」は、上質なものづくりとエッジの利いたユニークなデザインで、国内外の多くのファンを魅了する韓国発のバッグブランド〈OSOI(オソイ)〉の日本国内独占販売権を取得。〈OSOI〉のブランドサイトを「ユナイテッドアローズ」オンライン内に開設、販売を開始しました。同時に「ユナイテッドアローズ」の一部店舗で常設コーナーを設置するなど、取り扱いを強化し、2025年中にブランド単独の出店も予定されています。そこで〈OSOI〉のオーナー兼クリエイティブディレクターであるカン・ヒージンさんに、韓国のファッションについて、ブランドコンセプト、「ユナイテッドアローズ」と協業することになった経緯、今後の展望についてなどを伺いました。
Photo:Kasumi Osada
Interpret:Chusei
Edit&Text:Shoko Matsumoto
世界の流行を牽引する韓国ブランド
「韓国はグローバルトレンドが共存する国で、トレンドの移り変わりがとても速いと感じます。特にファッションでは、一般の消費者もソーシャルメディアなどを通じて最新のスタイリングを積極的に取り入れ、自分のものにしている印象です。たとえば、レイヤードルックやステートメントアクセサリー、ニュートロな感性、ブラウン系の色合わせ、メタリックカラーのポイント使いなど、さまざまなスタイルが同時に存在しています。最近では「백꾸(バッグ)」というトレンドも流行中です。「백(バッグ)」と「꾸(꾸미기=飾る)」を組み合わせた造語で、バッグにたくさんのキーホルダーをつけて楽しむスタイルです」
—日本のファッションについてどう思いますか。韓国のファッションとの違いはありますか。
「韓国のファッションはトレンドに合わせて簡単に変化する反面、日本のトレンドは韓国ほど急激には変わらず、クラシックなものや昔から愛されるスタイルが根強く残っているように思います。日本には、同じものを長く愛し続けるお客様がいて、その方々は新しいトレンドとも上手に調和していますよね。韓国は新しさを求めるエネルギーに満ちていて、日本は安定感のあるスタイルが根付いている。この違いが、両国のファッショントレンドの面白さだと感じています。〈OSOI〉も一時的トレンドではなく、人生に溶け込むカルチャーになってほしいと願います」
シンプルながら機能性のあるデザインを強調する〈OSOI〉
「〈OSOI(おそい)という名前には、「遅い」という日本語の意味が込められています。この言葉には、物事をじっくり観察し、余裕を持って考えるポジティブな意味合いもあれば、慎重すぎて一つ一つのディテールにこだわりすぎ、結果として時間がかかってしまう、という一面もあります。ブランドとしては、そんな「遅さ」を大切にし、私たち独自のペースでゆっくりと展開していきたいという思いが込められています。トレンドに過度に振り回されることなく、独創的なデザインを基盤に、時間が経っても色あせない価値を提供したいと考えているんです。ただ、ブランド名に「OSOI」を選んだのは、日本語の意味だけが理由ではありません。実は、英語表記にしたときのアルファベットの曲線や直線のバランスがとても美しく感じられて。デザインや美意識に対するこだわりが、こんなところにも表れているのかもしれません〉
「まず何よりもクオリティを最優先しています。企画やデザイン、開発のすべての段階において、製品力の高いものを作ることが重要です。良い製品であれば、余計な説明をしなくても自然と魅力が伝わりますから。製品を世に出すまでの過程では、どのような女性像に合うか、自分たちの中でしっかり議論を重ねます。「自分ならお金を払ってでも本当に買いたいか?」と、自分たちが消費者の立場でも納得できるかを基準にしています。ただデザインが良いだけではなく、消費者の心理まで考え抜いたものづくりを心がけています」
「私は建築物や家具、アート、映画など、さまざまな分野からインスピレーションを得ようとしています。どの分野も専門的なので、それぞれを深く理解できているわけではないのですが、興味を持ったものには積極的に触れ、実際に見て感じるようにしています。特に、〈OSOI〉のシグネチャーハードウェア「BAU」の装飾デザインには、バウハウス(Bauhaus)の建築や美術から大きな影響を受けました。「BAU」は、バウハウスが持つ機能美やシンプルなデザイン哲学を取り入れていて、見た目の美しさと高い機能性を両立させることを目指しています。映画やドラマもよく見ます。登場人物だけでなく、街で見かける何気ない女性の姿からもインスピレーションを受けます。バッグをデザインする際には、「このバッグはどんなスタイルやルックに合うだろう?」と想像することが多く、自然と「どのような女性像にマッチするか?」を考えるようになります。ときには映画のキャラクターに重ねてみたり、日常の風景にいるような一人の女性を思い浮かべたりします」
「ユナイテッドアローズ」との協業でさらなる躍進を
ユナイテッドアローズ 渋谷スクランブルスクエア店
「〈OSOI〉はもともと日本でも卸売りビジネスを展開していて、「ユナイテッドアローズ」はその中でも継続的にバイイングをしてくれていたセレクトショップの一つです。同店では〈OSOI〉の商品が安定した販売実績を持ち、シーズンごとにオーダーも増えていました。また、韓国国内の〈OSOI〉単独店舗でも日本人の顧客が急速に増加していたこともあり、お互いの関心やタイミングがうまく合致したのだと思います。それぞれの強みを活かし、有機的に相互補完し合いながら、持続性と効率性を重視したビジネスを展開していくことが目標です。」
ユナイテッドアローズ 渋谷スクランブルスクエア店
—今シーズンの協業製品とその主な特徴についての紹介をお願いします。
エクスクルーシブカラー「セージグリーン」
ピーカンブロート
グローバルでもっとも人気の「トニーミニ」
5月発売予定のナイロンバッグ
「〈OSOI〉は特定の顧客層に限定せず、幅広い方々に届けたいと考えています。ブランド誕生から現在まで、多様なデザイン言語を通じてさまざまな顧客とコミュニケーションを取ってきました。その結果、当初は30〜40代を中心に支持を得ていましたが、最近では20〜30代の若い世代にも広がっています。ファッションをリードするトレンドセッターから、流行を楽しむフォロワーまで、年齢やスタイルに関係なく、〈OSOI〉のバッグが日常のファッションの一部となり、皆さんの毎日に自然に溶け込む存在になれたら嬉しいです」
長く愛され続けるブランドを目指したい
エクスクルーシブのキーチャーム
「近年、多くの韓国ファッションブランドが日本に紹介され、韓国のファッションやカルチャーを愛してくださる日本の方が増えていることを本当にありがたく感じています。しかし、私たちは「Kブランド」としての枠を超え、国籍に関係なく、ブランドそのものが輝く存在でありたいと願っています。〈OSOI〉もその目標に向けて、ブランドの核心となるアイデンティティをしっかりと見せ続けたい。今回のコラボレーションを通じて、「ユナイテッドアローズ」の〈OSOI〉単独コーナーに多くの関心を持っていただければ嬉しいです。日本のファッションファンの皆さまと新しい形でつながれることを楽しみにしています」
「ブランドとしての大きな目標は、〈OSOI〉を日本市場に確実に定着させること。日本は〈OSOI〉が早期に進出した市場であり、今では私たちにとって最も重要な市場の一つになりました。ブランドがここまで成長してきた今、過程だけでなく、しっかりとした結果を見せるフェーズに来ていると感じています。また、現在はバッグとシューズを中心とした限定的なアイテム展開ですが、今後はブランドのカテゴリーを広げていきたいと考えています。どのような新しいアイテムやカテゴリーが〈OSOI〉の世界観に合うのか、じっくりと考え、計画的に展開していきたいですね。〈OSOI〉は短期間の成功ではなく、30年、40年と長く愛され続けるブランドを目指しています。日本のお客様と一緒に、長い時間をかけて信頼関係を築いていけたら幸せです。個人的な夢としては、いつか「マルチレーベルストア」を運営したい。昔からの夢であり、ファッションを心から愛する者として、バッグやシューズだけにとどまらない、より幅広いアイテムを紹介したいです」
INFORMATION
PROFILE

カン・ヒージン
1982年生まれ、ソウル出身。シューズデザイナーを経て、2016年にOSOIを立ち上げ、代表とデザインとコンテンツを監督するクリエイティブディレクターも兼任している。