ヒト
2026.08.27
お客様のライフスタイルや背景を大切に。販売員として培ったコミュニケーション術。
卓越した接客スキルを持つスタッフに贈られるUA社独自の称号「セールスマスター」、2021年からブロンズランクを継続維持し、今期シルバーランクを獲得している、ユナイテッドアローズ仙台店の小野道太さん。2003年のアルバイト入社から一貫して仙台店に在籍し、現場の第一線を走り続けてきたトップセールスパーソンです。フランクで人当たりが良く、誰とでも深い会話を生み出す小野さんの接客の根底には、「お客様のライフスタイルや背景を何よりも大事にする」という高いCSマインドと職人気質のこだわりがあります。本記事では、地域に愛される店舗作りにも貢献してきた小野さんに、印象深いお客様とのエピソードやコミュニケーションの秘訣、販売員としての今後の展望を伺いました。
Photography:Go Tanabe
Text & Edit:Shoko Matsumoto
好きなことを仕事に。
「もともと音楽や映画、洋服など、カルチャーが好きで、2002年当時UAのホームページにあったスタッフコラムのファンでした。そのコラムにはファッションだけではなく、映画や日常のことなどもたくさん書いてあり、洋服以外にも、こういった自分の趣味が仕事の一部になったら楽しそうだなと思っていました。就職活動の際も、自分が好きな業界で働いてみたい気持ちもありましたが、当時は洋服屋で長く働けるイメージがあまり持てず悩んでいた時に、仙台店がオープンすると聞き、せっかくだから受けてみよう、ここに入れなかったら、好きな業界で働くことは諦めようと思い応募しました」
「オープニングスタッフとして入社して以来、一貫してUA仙台店で勤務しております。メンズカジュアルやドレス、ウィメンズドレスのセクションで教育や商品担当者の経験を経て、現在は〈クロムハーツ〉をメインに担当しています。また、2021年にセールスマスターブロンズ、2026年にはシルバーランクに認定していただきました」
お客様のライフスタイルや背景を大切にしたコミュニケーション。
「お客様のライフスタイルや背景を大切にすることです。私自身にも、仕事や洋服以外に好きなこと、大切にしていることがあるように、当然、お客様にもあると思います。『洋服は、お客様のライフスタイルを構成する様々な要素のなかのひとつ』として捉え、商品やそのモノ優先のご提案ではなく、お客様が大切にしているライフスタイルをお伺いしながら、会話をすすめていきます。その人らしさや表現したいイメージ、どんな気持ちでお使いになりたいのか、といった背景に寄り添う接客を大切にしています。接客の中で、お客様の普段の生活や休日の過ごし方、趣味などの会話が多くなるので、そういったコミュニケーションを通して買い物を楽しんでいただけ、洋服がTPOやマナーだけでなく、その人らしさや気持ち、ライフスタイルに合わせた提案につながっていると感じています」
お客様とのつながりに、お店としても個人としても助けられた。
「2011年の東日本大震災の際は仙台店も大きな被害を受け、長期の休業となりました。衣食住という、これまでの当たり前が崩れ、営業再開が決まった時は私自身もガスや地下鉄といったライフラインが安定していませんでした。『こんな状況のなかで、おしゃれは求められているのだろうか』ととても不安でしたが、実際に営業を再開してみると、たくさんのお客様がご来店され『営業再開を楽しみにしていました』とおっしゃってくださったんです。お店や自分たちのことを待っていてくださるお客様がいることがうれしく、買い物を楽しんでいただけることは特別なことなんだと実感し、しっかりとご期待にお応えしたいと強く思いました。UA社が大切にしている『すべてはお客様のためにある』という社是も、それまでは、自分たちが日々意識、行動することで高めていくものだと思っていたのですが、このときは、お客様とのつながりに、お店としても私個人としても本当に助けられました。私たちのカスタマーマインドを、もう一段高いところへ引き上げ、成長させていただいた経験として、とても印象に残っています」
接客を通して、お客様とともに時間を重ねていく。
「洋服屋として、日々新しいトレンドや洋服に触れられる楽しさもありますが、お客様とのつながりや関係性の積み重ねを感じられるところです。23年間変わらずに通ってくださるお客様との何気ない会話はもちろん、初めてお話した時は大学生だったお客様が就職、ご結婚や育児、お子様の成人などを通して、少しずつ会話の内容が変化していくことがとても楽しいです。洋服の接客を通してお客様と一緒に時間を重ねていくような、人と人とのつながりを日々店頭で感じられることが私にとっては一番のやりがいです」
「目の前のお客様に心を込めた接客を行うことです。仙台店が営業初日を迎える際、当時の店長が発信したメッセージは、『目の前のお客様大満足』というものでした。満足を超えた大満足を、という意味なのですが、当時の私は大学を卒業したばかりの未経験者。研修期間はありましたが、プロの販売員としての知識やスキル、経験などは全く足りておらず、自分よりもお客様のほうが何倍もおしゃれで、洋服に対する知識や造詣も深いという状況でした。そのときに店長から、『そんな未熟な販売員の話を聞いてくださって、提案した商品を買ってくださるお客様を何よりも大切にしなさい』という言葉をかけてもらいました。スキルや知識はもちろん大切ですが、それ以上に感謝の気持ちを持って、真摯にお客様と向き合うことを今も心掛けています。ヒト、モノ、ウツワという私たちが提供していることで、どうしたら東北のお客様に今以上に喜んでいただけるのかを考え続けること。それを店頭で表現し続けること。それが大事だと繰り返しメンバーに伝え続けています」
仕事をするうえで欠かせない愛用品3品。
「尊敬している先輩が右手の小指に大ぶりなリングをつけていたことと、大好きな映画の一つ『ゴッドファーザー』で、アル・パチーノも同じ指にリングをつけていたので、自分もつけ始めました」
「そうなんです。入社時、モッズやスカなどのレコードや洋服を扱うお店で購入しました。ビンテージのネクタイ生地を使用したもので、自分のバックグラウンドを感じるアイテムとしてずっと使い続けています。どれも長く大切に使い続けており、なぜそれを選び、使い続けているのかという理由がはっきりしているので、自分にとって仕事をするうえで欠かせないアイテムです」
仕事のモチベーションを高く維持してくれる趣味の音楽。
「一番の趣味が音楽鑑賞で、音楽を聴き始めて37年、レコードや写真集などの収集を始めて、もうすぐ30年になります。パンクやロック、ヒップホップ、ジャズなど、様々なジャンルを聴きますが、人が汗をかきながら演奏している姿が想像でき、体温やエネルギーを感じる音楽が好きです。音楽は聴くことも見ることも好きなので、今でも気になったライブには可能な限り行っていますし、レコードのジャケットや写真集などから、着こなしや色使いを参考にすることも多いです」
「そうですね。接客は、どちらかというとアウトプットが多い仕事だと思っています。だからこそ、自分自身がちゃんと好きなものに触れて、しっかりと充電されている状態のほうが、仕事のモチベーションを高く維持できるので、インプットとアウトプットのバランスはとても大事にしています」
「私が入社した2003年に発売されたUA初のCD『Citta de Vista』です。栗野宏文さん(現:上級顧問)が監修し、コメントも書かれています。自分の好きな曲が入っていて、店頭で販売した際は音楽カルチャーにも少しだけ関われた気持ちになり、とてもうれしかったです。当時、接客したお客さまほぼ全員にお勧めしていた思い出があり、今でも愛聴盤のひとつです」
世代を超えて愛されるお店、そして販売員へと成長していきたい。
「『目の前のお客様大満足』を積み重ねて、東北で一番のお店を目指したいと思っています。仙台地区にはUA社の店舗が、〈ユナイテッドアローズ〉、〈ビューティー&ユース〉、〈グリーンレーベル リラクシング〉、〈アウトレット〉が2店舗と、全部で5店舗あります。その5店舗すべてが東北のお客様に世代を超えて愛される魅力のある店舗と販売員に成長し続けていけるように、店舗や業態を越えて、貢献できる活動を行っていきたいです。また、自分が長く働き続けることで、一緒に働く後輩スタッフや、この業界に興味がある方たちに、『洋服屋は長く続けていくことができる仕事なんだ』と感じてもらえたらうれしいです」
INFORMATION
PROFILE
小野 道太
2003年、ユナイテッドアローズ 仙台店のオープニングスタッフとして入社。カジュアル、メンズドレス、ウィメンズなどを経験し、現在は〈クロムハーツ〉を担当。2021年にセールスマスター・ブロンズ認定継続維持、2026年にシルバーに認定。23年にわたり、お客様との関係性を大切にした接客を続けている。音楽や映画、レコードをこよなく愛するカルチャー好きでもある。