ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ディレクターが語る、〈グリーンレーベル リラクシング〉25周年の軌跡と、向かうべき未来。

ヒト

2023.08.29

ディレクターが語る、〈グリーンレーベル リラクシング〉25周年の軌跡と、向かうべき未来。

今年8月で25周年を迎えた〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(以下、GLR)〉。「Be happy ~ココロにいいオシャレな毎日~」をテーマとし、心が豊かになる「モノ」「コト」を提案し続けてきた〈GLR〉のこれまでの歩みを振り返りながら、今後ブランドが進むべき未来についてを、メンズディレクターの佐々木 弘幸さんとウィメンズディレクターの田中 安由美さんに語っていただきました。

Photo:Shinji Serizawa
Text:Masashi Takamura

チャレンジを続けた25周年。それを支えたブレない姿勢とコロナ禍での戦い。

―誕生から25周年を迎えた率直な感想をおふたりから伺えればと思います。

田中:四半世紀ですから長いですね(笑)。わたしは2008年入社なので社歴は15年。ブランドの半分以上を過ごしてきたのだと思うと感慨深いです。

佐々木:僕は2018年入社なので、〈GLR〉事業への参画は5年程度。すぐにコロナ禍に見舞われましたが、その分関連部署との連携やブランド内でのコミュニケーションは密になったと感じています。

田中:テーマに「Be happy ~ココロにいいオシャレな毎日~」を掲げ、心が豊かになる「モノ」「コト」を25年間提案し続けるというブレがない点は、立ち上げ当初の諸先輩方の残してくれた財産かと思います。

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佐々木:ブランドスタートから数えれば長いですが、これからもチャレンジを続けることで進化していく姿勢を見せ続けていきたいと思っています。

田中:長く続いている「老舗」は素晴らしいお店やブランドが多いので、やはりブランドが古びて見えないことが大事だと思います。


―おふたりが知るブランドの歴史の中で、やはり大きな転換点となったのはコロナ禍でしょうか?

田中:ブランド全体で連携していかないと乗り切れない厳しい局面だったので、販売面でも試行錯誤しました。毎週行うインスタライブは、お客さまとの接点を広げる意味でもとても良い試みだったと思います。いまは各店舗で来店促進に結びつけるツールとして活用しています。

佐々木:それまで全国85店舗の各店からスタッフが総勢120人ほど一堂に会して行っていた商品説明会もオンラインに切り替えたことも大きな変化でしたね。最近はディビジョンごとに分けて、商品部が各地に実際足を運んでいます。

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田中:チャット接客サービスも好調で、お客さまとオンラインで繋がるノウハウが鍛えられましたね。コロナ禍前は、スタッフたちも店頭とEC、それぞれで縦割りのような意識が多少なりともあったと思うんですが、いまでは店舗でご購入に至らなくてもECで購入していただければ…というような一体感が生まれ、シームレス化が進んだと思います。

佐々木:また、ご時世的に出掛ける機会が減ったこともあり、ライフスタイル商材の取り組みを充実させました。

田中:特に印象的だったのはライオンさまとのコラボレーション。ハンドソープ「キレイキレイ」のパッケージングを担当したのは、新たな施策のひとつですね。売り上げの一部がチャリティされるといったサステナビリティの側面もある点でも有意義だったと感じています。

新たなチャレンジが顧客の裾野を広げる。

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―ECと店舗の垣根がなくなってきたというお話は興味深いですが、ECが広がるにつれて得た新たな知見が生み出したチャレンジにはどんなものがありますか?

佐々木:ECを通じて得られたデータが、商品構成に変化をもたらしたことが大きいですね。これは、メンズの話になりますが、僕らがお客さまの支持を得ていると感じるのは、いわゆる「キレイめ」と呼ばれるシンプルなファッション。「僕らのお客さまはこういう傾向が好みだ」と勝手に寄り添い過ぎた結果、30代、40代向けの構成になりがちでした。ところがデータを紐解いてみると20代の若い層の方が一定数いることがわかり、そこへ向けたチャレンジングな商品構成が可能となったんです。
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英国の名門「バブアー」のウェアも、若年層のファッションを鑑みてセレクト。顧客のニーズに近づけることでブランドの広がりを見せることができたそう。

佐々木:そうした事情を加味して生まれたのが、ECのみで展開する〈GLR or(ジーエルアール オア)〉というラインで、まさにコロナ禍でスタートしたラインの一つです。新規層に〈GLR〉というブランドを認知いただけるいい機会ということで、商品幅を広く構成しています。色や柄にも新鮮味を感じていただけるかと。

田中:こちらは、ユニセックス展開なのも大きな特徴です。同じ服を男女のモデルが着用することでガラリと印象が変わる点も面白いですね。

お悩み解決を時代性と結びつけて独自性を追求。

―ECの発展によって生まれた新しい取り組みが活発化しているように見受けられますね。サイズ需要などもさまざまではないでしょうか。

田中:2020年から始めているのが、「ファインドマイサイズ」というラインです。身長に対するお悩み解決に向けた施策で、主に148〜155㎝の方に向けた「SHORTサイズ」と、166〜173㎝の方に向けた「TALLサイズ」を展開しています。ユーザーからの要望に応える形で、身長を問わずにファッションを楽しみたい層に支持されています。


―お悩み解決と時代性を兼ねた取り組みで、心を豊かにしてくれる。まさにブランドの真骨頂のように思えますね。

田中:〈GLR〉は、お悩み解決が昔から強いブランド。洗濯機で洗いたいというリクエストがあれば、全力で洗えるようにする。「カッコいいけど洗えない」ではなくて「洗えるけどカッコいい」を目指しています。機能性に加えて、最近重視されているパーソナルカラーと骨格診断も取り入れています。WEBで手軽に診断できて、そこでタグづけされたウェアや着こなしの提案も好評です。

佐々木:気にされる女性は多いですし、話題にもなっていますからね。

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田中:ただ、「お悩み解決専門店」というだけではダメだと考えていて。ブランドとしての先端性やメッセージ性を強く打ち出すための取り組みも必要と考えています。そこで生まれたのが「ワンオブマイン」シリーズ。これは、「珠玉の定番品」というイメージで、ファッション的な観点から着こなしを提案しています。
「気に入ったパンツをまた買いたい」と思っても、次のシーズンには展開がない、というのは“洋服屋あるある”ですが、やはり末長く愛されるブランドとしては、気に入っていただいた定番がいつまでも置いてある、という状況が理想だと思うんです。

ですから、シーズンごとにベーシックなアイテムをひと品番ずつ展開しています。今季はブレザーが推しですが、春はトレンチコート、冬はウールコートなど、一つひとつワードローブを完成させていくイメージです。



―メンズ、ウィメンズ共通のチャレンジングな取り組みがあれば、教えてください。
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田中:なんといっても「オルマイ」シリーズですね。「とにかく売れるパンツを作ろう」というのが発端。ちょっとしたお出掛けにもヨガに行くときにもはける。加えてやっぱり洗えたほうがいいだろう、と。そんなところを突き詰めたんです。

佐々木:キャッチーなネーミングも功を奏して。メンズ、ウィメンズともに非常に好調なんです。

田中:また、最初はパンツのみでしたが、人気に応じて徐々に品番も増やし、ジャケットなども展開しています。サステナブルな素材を使用していくなど、今後もこの「看板」を大事に育てていきたいです。

ブランドのコンセプトにも通じるサステナブルな視点。

画像 サステナブルを意識してセレクトしたアイウェア〈Jugaard14〉。エシカルな素材を採用した 時代を超えたボーダレスなデザインで 洗練されたアイウェアスタイルを提案。

―サステナブルといえば、〈GLR〉が掲げるコンセプトにも非常に関わりが深いと思います。実際、社内でどのレーベルよりも先駆けていたのではないでしょうか。

田中:まさにブランドの根幹思想だから、いち早く取り組まないと、という意識がありました。時代の方が追いついてきた印象です。

佐々木:現在UA社では、「SARROWS」という全社を挙げたサステナビリティに関する取り組みを掲げていますが、〈GLR〉はこうした社内の取り組みに先んじて、再生素材やオーガニック素材などを使用していました。

田中:特に環境配慮商材に関しては、黎明期のノウハウがいまに生きています。なにが環境配慮素材になるのか、認証機関にはどういったものがあるか。それらを手探りで進めてきたので、すでにレーベル内に一定の指針がありました。

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佐々木:まさに一日の長です。グリーンダウンプロジェクトへの対応も早かったですよね。不要になったダウンを店舗で回収、再利用して製品化する試みですが、2015年からスタートしています。

田中:SNS上で「この店舗でダウン回収をやっていますよ」というような投稿も見かけました。消費者行動の鋭さには、わたしたちも感心してしまいます。ブランドとしては長く取り組んでいる分野だけに、さらに認知を広げていきたいですね。

この先〈GLR〉が向かうべき未来とは?

―25周年を振り返るおふたりのお話から、未来に向かうヒントがたくさん詰まっていたように感じます。佐々木さんが改めて手掛けていらっしゃる“THINK LOCAL”の試みも、ブランドの絆を深めるプロジェクトですね。

佐々木:“THINK LOCAL”は元々、編集者の岡本 仁さんと取り組んでいた企画で、店舗周辺の情報をまとめた冊子でした。非常に面白い取り組みだと思っているので、プロジェクトチームを発足し、取り組みを再開させています。

田中:中でも、佐々木さんが手掛けられた旭山動物園とのコラボレーション(関連記事はこちら)による“旭山動物園応援商品”は、まさにコロナ禍においてライフスタイルの拡充と地方との繋がりが生み出したアイデアだと思います。

佐々木:全国に85店舗あるのは〈GLR〉の非常に大きな強みです。そのリソースをやはり最大限活かしたい。僕は、洋服屋は服を売るだけではダメだと思っていて、近所の美味しい飲食店やプレイスポットなど、地元の魅力も伝えられたほうがカッコいいと思うんです。

田中:いま、我々ディレクター陣は内装や包装などの再構成にも参画し、店舗づくりにも関わっています。地域の特性なども活かし、それぞれの店舗がより魅力的に輝けるように取り組んでいきたいです。

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―そうした地域との密着も、サステナブルと並んで、日本のモノづくりに不可欠なテーマですから、〈GLR〉のブランドの懐の深さが垣間見えますね。改めて、向こう25年。どのようなブランドでありたいですか?

田中:いままでもあっという間でしたから、きっとその先もあっという間なんでしょうね(笑)。引き続きブレずに進んでいると思います。また、柔軟に対応する力はUA社の組織風土でもあり、強みだと思っています。そのときどきで方針や戦略、または社会体制などが変わる中で、ポジティブに対応してきた実績がありますから、進化を続ける25年になるのではないでしょうか。

佐々木:一つひとつ丁寧に磨き上げていく25年でありたいなと。今後もブランドの“らしさ”は常に保ちながら、時代にフィットしていきたいです。

PROFILE

佐々木 弘幸

佐々木 弘幸

メンズ商品本部 GLR 部 副部長 兼 クリエイション課課長 ファッションディレクター。某アパレル会社にて、販売スタッフ、ショップマネージャー、MDバイヤーを歴任後、2018年入社し、ディレクターに就任。2020年から現職。店内内装や包装のディレクションにも携わる。

田中 安由美

田中 安由美

ウィメンズ商品本部 GLR部 副部長 兼 クリエイション課課長 ファッションディレクター。2008年GLRのデザイナーとして入社。2016年にチーフデザイナー、2018年にウィメンズディレクターに就任後、2020年から現職。GLR一筋15年。

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