
ヒト
2016.06.16 THU.
あのヒトにとっての大切な時間。
日々、あたり前のように送っている日常生活。いつもと変わらない朝を迎え、普段通りの一日を過ごし、夜になれば眠りに就いて疲れた体を癒す。そんなありふれた一日のなかで、あなたが大事にしているのはどんな時間ですか? ゆっくり過ごす朝の時間、家族と会話をしている時間、大好きな趣味にこうじる時間。人それぞれの生活があるように、大切に思う時間も十人十色。今回はユナイテッドアローズで働くスタッフの“大切な時間”をご紹介します。
Photo:Takeshi Wakabayashi
Text:Yuichiro Tsuji
“お弁当”に託された日常の大切さ。
「お弁当の時間。これが私の大切にしている時間です。」
そう語るのは、「グリーンレーベル リラクシング」のディレクターを務める百々 徹さん。しかしそれは、単に食事をするのが好き、ということではありません。頭のなかで献立を考えているときから、百々さんにとっての大切な時間がはじまっているのです。
「お弁当をつくるのは、ある意味ものづくりとおなじなんですよね。献立を考えて、そのおかずに見合う食材が揃うスーパーへ買物に行く。そして、おいしくできあがるように調理する。この動作を繰り返すうちに料理の腕前が上達して、お弁当のクオリティも上がってくるんです。それが楽しい」
そのお弁当好きが高じて、「グリーンレーベル リラクシング」では秋田県の工芸品である“曲げわっぱ”のお弁当箱を製作しました。
「これはひとつの絵本がきっかけでつくったものです。その絵本というのが、大塚いちおさんの『standard days / あたりまえのいちにち』という作品。タイトルにある通り、あたり前の一日が大切という内容なんですが、思えば「グリーンレーベル リラクシング」もそれと同じ考えを持っているんです。私たちの店舗では、大人のカジュアルウェアにスーツ、そして子供服に至るまで、老若男女あらゆる人たちが日常で着るすべての洋服を展開しています。お客さまの“あたり前の一日”をファッションを通してサポートしているんです」
そうして大塚いちおさんとコラボレートし、お弁当箱をつくった百々さん。湿気を吸い、おかずの味をおいしくキープする曲げわっぱのお弁当箱は、その昔ながらの佇まいも魅力のひとつです。
「学生のとき、多くの人がお母さんにお弁当をつくってもらった経験ありますよね? 当時はそれを当然のことだと思っていたけど、大人になるとそのありがたみが理解できる。“あたり前の一日”でも、実は目に見えない大事なことがたくさん起こっているんです。そういう文脈で考えると、お弁当は、日常が大切である、という理(ことわり)のひとつの象徴であるんじゃないかと私は思います。このお弁当箱が一日を考えるきかっけになってくれたらうれしいですね」
百々 徹:グリーンレーベル リラクシング クリエイティブディレクター
朝に飲む一杯のコーヒーがもたらしてくれるもの。
もともとはショップスタッフとして日々店頭でお客さまの接客にあたっていた「ユナイテッドアローズ」のプレスの井柳佳代子さん。当時は早番や遅番など、出勤時間に差があったため、生活のリズムが安定しなかったそう。しかし、プレスに就任後はオフィス勤務となり、毎日おなじ時間に出勤するようになったため、いまは朝の時間を大切にしているんだとか。
「朝起きてからバタバタとせわしなく出勤の準備をするのが好きではないので、毎朝早めに起きるように心掛けています。起きたら必ずコーヒーをハンドドリップで淹れて、それを飲みながらゆっくりと過ごすようにしているんです」
朝から晩までひっきりなしに仕事の電話が鳴ったり、アイテムの貸し出しや返却の対応に追われたりと、プレスの仕事は見た目以上にハード。「だからこそ、朝のスロウな時間が大切なんです」と井柳さんは語ります。
「朝のコーヒータイムが、私に心のゆとりをもたらしてくれるんです。その大切な時間をもっと充実させるために、コーヒー豆に凝ったり、上質なカップを購入して、より気持ちよく過ごせるようにしています。このカップとソーサーは私がプレスになったとき、記念にと思って自分で購入したもの。これで飲むコーヒーはなんだか味わい深くて、より一層朝の時間のありがたみを感じることができるんです」
井柳佳代子:ユナイテッドアローズ ウィメンズ プレス
いろんなシャツを着てバランス感覚を養う。
「スティーブン アラン ヨコハマ」の店長を務める工藤志士さんが大切にしているのは、常にバランス感覚を意識しながら一日を過ごすこと。なにかひとつのことに固執するのではなく、いろんなものを均等に味わい、楽しむ。そうすることで、ひとつ一つのモノやコトの鮮度をキープできて、いつも新鮮な気持ちでいられると話します。
「入社時から集めている「スティーブン アラン」のシャツは、自分にとってスタンダードなアイテムです。これもさまざまな色や柄を揃えることで、コーディネートの幅がグンと広がります。『今日は柄物だから、明日は無地を着よう』といったように、自分なりにバランスを取りながら毎日ファッションを楽しんでいるんです」
工藤志士:スティーブン アラン ヨコハマ 店長
ヨガを通して得られる心の健康。
「私はスポーツコンシャスな生き方を大事にしていて、運動をしながら心身ともに健康でいられるように心掛けています」
そう話してくれたのは、株式会社ユナイテッドアローズのファッションマーケティング部に所属する浅子智美さん。普段からランニングやサーフィンなど、アクティブに体を動かす彼女にとって、ヨガをしているときも大事な時間なんだとか。
「もともとは体を引き締めるためにヨガをはじめたんですけど、グーっと体を伸ばしてまたゆっくりと戻すと、緊張していた筋肉がほぐれた感覚があって気持ちいいんです。もう長いこと続けているんですが、ヨガをはじめる前に比べて体が強くなった気がします。それに、ポーズをとることに神経を集中させると、頭のなかが空っぽになって嫌なことを忘れられる。そうすると気持ちが前向きになり、いいコンディションで毎日を過ごせるんです」
マットを敷けば、とたんに自分だけのスペースがうまれる。だからこそ、そのマットにもこだわるのが浅子さん流のヨガの楽しみ方です。
「ヨガというと、どうしてもナチュラルでオーガニックなイメージを抱きがちですよね。でも、私はもう少しクールなもののほうが好きなので、自分の好みのマットでヨガをしています。そのほうが気分が上がるし、せっかくの大切な時間がもっと充実すると思うんです」
浅子智美:ファッションマーケティング部
散歩をしながら感じる季節の移ろい。
「この靴、足をきれいに見せてくれる上にすごく歩きやすいんです。スタッフはもちろん、お客さまにもすごく人気で、私もこれで4足目(笑)。これを履いて、いつも散歩を楽しんでいます」
「ボワンソンショコラ」のプレス、佐々木あずささんにとっての大切な時間は、歩いている時間。仕事が終わったあとは会社の最寄り駅へ行ってすぐに電車に乗るのではなく、2駅ほどの距離を散歩しながら街の景色を眺めているんだとか。
「歩いていると街の変化や、季節の移り変わりを感じることができるんです。道に咲いている花の香りなんかも歩いていないと分からないじゃないですか。あと、たまに普段とはちがう道を通ったりして、おなじ街でもいつもとは違う表情を捉えたりするのも楽しいんです」
今年の4月にプレスになったばかりという佐々木さん。散歩は仕事の振り返りをするのにも有効的だと話します。
「やっぱり部屋のなかで考え事をするよりも外を歩きながら思考したほうが、気分がリフレッシュするし、思考がポジティブになる。たとえ仕事でミスをしたとしても、歩いていると『また明日から頑張ろう』って気持ちの切り替えがスムーズにできるんです」
佐々木あずさ:ボアソンショコラ プレス
気持ちを引き締めてくれるベースボールキャップ。
メジャーリーグの球団や、大学の野球チームのロゴが入ったベースボールキャップは、「アンルート 二子玉川」の店長を務める武井 涼さんが大切にしているアイテム。
「野球がとにかく好きで、プレイをしているときはもちろん、観戦しているときや、このキャップを被っている時間もぼくにとっては大切な時間なんです」
自他ともに認める野球好きの武井さんは、小学生の頃から野球に明け暮れる生活を送ってきて、いまは会社のチームに所属中。現在シーズン真っ只中で、定期的に試合をしているそうです。
「野球は礼節を重んじるスポーツです。サラリーマンの方がスーツを着てネクタイを巻くように、ぼくも仕事中にキャップを被るとなんだか背筋がピンと伸びて、気持ちが引き締まる。小さな頃から野球に親しんでいるので、やっぱりベースボールキャップはぼくにとってあたり前のものであり、同時に宝物でもありますね」
武井 涼:EN ROUTE 二子玉川 店長
自分らしくいるためのライダースジャケット。
「アストラット」のMDを担当する、塩脇史恵さんは“自分らしくいること”が日々の生活のなかで大切だと説きます。朝の澄んだ空気のなかで思いきり深呼吸をすること、そして子供と会話することが日常のなかで自分らしさを確認できる時間になっているそう。そして、ファッションにおいても“自分らしさ”を追求することを大切にしている、と教えてくれました。
「年齢を重ねることで、ファッションもおのずと自分らしいスタイルというものが明確になってきました。私はワンピースやファーのベストなどが好きなのですが、これらのアイテムを単体で着ると自分らしさがちょっと欠けてしまうんです。好きなお洋服なのにどこかしっくりとこない。そんなときに頼りになるのが、このライダースジャケット。これを着るとワンピースの甘さや、ファーベストのマダム感が消え、自分らしくファッションを楽しむことができるんです」
塩脇史恵:ASTRAET MD