モノ
2024.02.15
スパイバー×バトナー×ユナイテッドアローズのタッグで生まれたサステナブルなニット
山形県に本社を置く企業Spiber(スパイバー)が量産化に成功したのは、自然界からヒントを得て、微生物発酵というプロセスで作られる新素材「Brewed Protein™(ブリュード・プロテイン™)」。〈ユナイテッドアローズ〉(以下、UA)では、その「ブリュード・プロテイン™」を使用した糸で、同じく山形県でニットウエアを手がけるブランド〈バトナー〉に製品を依頼。3社のコラボレーションで叶ったサステナブルなファッションプロダクトが、これからの持続可能な世界への足がかりになることを期待しています。
Photo:Go Tanabe
Text & Edit:Shoko Matsumoto
化石燃料に由来しない、人工のタンパク質素材の誕生。
スパイバー株式会社 取締役兼代表執行役 関山 和秀さん
山形県鶴岡市に位置する本社のラボでは、日々研究がおこなわれている。
抽出、精製したブリュード・プロテイン™ポリマーを紡糸して、繊維に、そして綿や糸へと加工。
地球にやさしくサステナブル。「ブリュード・プロテイン™繊維」の可能性。
培養液の中で微生物を発酵させブリュード・プロテイン™ポリマーを生産する。
1本の繊維に見えるものをほぐしていくと、無数の極細の繊維の束であることがわかる。
タンパク質の新素材が変える世界。
3社コラボレーションによるサステナブルニット。ナチュラル、ネイビーの2色展開で、レディス、メンズの2サイズ。
〈バトナー〉のニットに「ブリュード・プロテイン™繊維」がもたらす新しい息吹。
有限会社奥山 メリヤス ディレクター&デザイナー 奥山 幸平さん
「今回はオーガニックコットンの混紡率が高いということもあって、そこまで苦労はしませんでした。ウール絡みのほうが、もうちょっと縮みが出たりなど、いろんな問題が想像されましたが、比較的編みやすかったです。手触り、着心地は新感覚。『ブリュード・プロテイン™繊維』を使っていると、言われなければあまりわからないかもしれませんが、オーガニックコットンと混ぜるとカシミヤっぽい感じ。清涼感というより、ふわっとしたイメージの風合いを感じます」
オーガニックコットンに「ブリュード・プロテイン™繊維」が混紡された糸で、胴体や袖などの部位を昔ながらの製法リンキングすることで優れた着心地に。編み立てた部位を、職人による手作業でひと目ずつ縫い合わせていく。
「従来のシグネチャーモデルは、厚みがあって、しっかり感がありますが、『ブリュード・プロテイン™』ver.は、より軽さが加わっています。春の立ち上がりに着やすいような肉感に持っていくことができました」
「今回のニットは、20年かけてできあがった最高峰みたいなもの。クオリティ的にも、コスト的にも、産業的にも、しっかり使っていただけるものができてきて、そういう意味では我々の集大成と言えます。ただ当然、これがゴールではありません。むしろ、スタートラインに立ったばかり。衣類はもちろん、食べ物も今まさにプロテインクライシスと呼ばれていて、タンパク質がどんどん足りなくなるといわれています。いかに今ある農地を極端に広げずに、資源を使わずに、今まで利活用されていなかったバイオ資源を活用して、タンパク質を作るかが重要。そういうところでも、我々の技術を応用していきたいと思っています」
INFORMATION
PROFILE
Spiber株式会社
構造タンパク質「ブリュード・プロテイン™素材」を開発、生産するバイオベンチャー。2007年9月創業。現在、タイ・ラヨン県にて、Spiber初となる量産プラントで ブリュード・プロテイン™ポリマーの生産を開始し、段階的に生産量を拡大していく予定
BATONER
1951年創業のニットメーカー・有限会社奥山メリヤス。世に送り出されるニットウエアは、原料から製品に至るまですべての工程を高いクオリティで管理し、仕上げられています。日本が世界に誇る技術と伝統、さらなる品質を追い求める意欲をもって、次の世代へと受け継がれるモノを作り続けています。