ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

永く愛せる一本を。金子眼鏡とユナイテッドアローズのものづくり。

モノ

2026.01.27

永く愛せる一本を。金子眼鏡とユナイテッドアローズのものづくり。

福井県・鯖江で、世界から評価される眼鏡づくりを続ける「金子眼鏡」。その卓越したクラフトマンシップを背景に、ユナイテッドアローズ社(以下、UA社)は長年にわたり別注モデルを展開してきました。本企画では、金子眼鏡で別注を担当する国内営業部・池田良史さんへのインタビューを敢行。また福井県にある金子眼鏡の本社・工房を訪問。永く使える上質な眼鏡を、日常に寄り添う形で届けたいという両社の共通した姿勢や、別注モデルが生まれる背景を紹介します。

Photography:Taro Oota
Text & Edit:Shoko Matsumoto

ユナイテッドアローズ別注のはじまり


  • 昨年新しく建設された金子眼鏡株式会社の新社屋

  • 昨年新しく建設された金子眼鏡株式会社の新社屋
―池田さんのこれまでのご経歴を教えてください。

「金子眼鏡に入社したのが2002年なので、もう24年目になります。担当として正式に関わり始めたのは2011年からですが、それ以前も出荷などで関わっていたので、ほぼ全体を把握していました。実は学生時代、本当はユナイテッドアローズさんに入りたかったんです。ただ、当時は就職氷河期で、アルバイト採用すら厳しくて。だからこそ、こうして今一緒にものづくりをしているのは感慨深いです」

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―ユナイテッドアローズとの別注は、どのようなきっかけで始まったのでしょうか。

「“眼鏡からスタイリングを提案したい”という相談があったのがきっかけだと聞いています。当時、原宿にあった老舗の眼鏡店の担当の方からのご紹介で、UAさんは店舗の場所も近かったこともあり、お取り引きが始まりました。実は最初から“別注”だったんです。インラインを置くのではなく、いきなりコラボレーション。そこがすごく印象的でした」

画像 2013年春夏号のビューティー&ユースのカタログ。金子眼鏡の別注アイテムをかけたモデルさんが表紙になり、すごくうれしくて今も大切に保管していると語る池田さん。


“今の定番”をつくるという考え方

―池田さんが担当になった2011年は、転換点でもあったそうですね。

「そうですね。その当時、UA社の別注担当の青木さんとふたりで“全部デザインを変えてしまおう”と話しました。当時はモデルも増えていて、正直ちょっと飽きが来ていた部分もあったんです。お客さまにとってもきっとそうだったと思います。だから一度リセットして、僕らの世代で“鮮度感のある今の定番”を作ろう、と考えました。やはりずっと売れているのは普遍的なモデルです」

―最初は何モデルからスタートしたのでしょうか。

「5モデルです。当時はセルロイドフレームが流行っていたので、素材はそこに絞りました。形が被らないように試行錯誤して、ウェリントン、ボストンなどを軸にしながら、最初はモデル名をつけていなくて、A・B・C・D・Eとアルファベットで呼んでいました。今見ると“これ、今また新鮮だな”と思います。一周回って、またちょうどいいと思います」

画像 こちらはモデル名:Jake Emmaの図面。5月発売予定のもの。

―デザインはどのように決めていくのですか?

「基本はディスカッションですね。僕が提案することもあれば、青木さんが提案してくださることもあり、色や細かいニュアンスを詰めていく作業に入っていきます。ヴィンテージの資料などを見ながら、“この雰囲気いいよね”“でもそのまま出すと古いから、ここを1ミリ変えよう”などと話し合って。眼鏡って、本当に1ミリで印象が変わるんです。玉型が1ミリ変わるだけで、顔の見え方が全然違う。だからサイズには特にこだわっています」

支持される理由と、UA別注ならではの挑戦

―UA別注の眼鏡が支持される理由はどこにあると思いますか?

「最初の一歩を踏み出すような眼鏡を作っているからだと思います。サングラスよりも、まずは伊達眼鏡。クリアレンズだけどUVカットが入っている。おしゃれとしてかけられて、でもちゃんと意味がある。実際、昔は眼鏡ってアイテムの売上ランキングでも下位だったんです。でも数年前からバッグやスニーカーと並ぶくらいまでになりました。これは本当にありがたいですし嬉しいこと、ファンがついてくれている実感があります。洋服はどうしても気候に左右されて、なかなか売れない時期もありますが、その間に雑貨が売れるんです」

―様々な企業とコラボレーションされていますが、UA別注で特に意識していることはありますか?

「やはり定番の中に鮮度感のエッセンスを入れることです。面白いのは、UAさんは寛容で“売れなくてもいいから挑戦しよう”と言ってくれることが多くて、そこは本当にすごいと思います。ただ、早すぎることもある。1〜2年後に“今なら売れたのに”というモデルも正直あります(笑)。でも、それも含めて鮮度だと思っています。またプラスチックフレームであれば、エッジラインも特徴です。職人の手で角を落としてから磨きをかけることで、柔らかい表情になるんですよね。だからUA別注にはフォーマル感がありますし、全体のバランスが抜群ですね」

画像 Emery:メタルフレームの中でも2本のブリッジが特徴的なモデルを男女問わず着用できるようスクエアながら柔らかいアウトライン表現。ゴールドカラーは肌に合わせやすい薄金カラーをチョイス。現在発売中。

画像 Modern:眼鏡の定番ウエリントンモデルをベースにやや大振りサイズ感が存在感あり。サングラスに最適なサイズ感に拘っていったアイテム。2月発売予定。

―企画から完成まで、どれくらい時間がかかるのでしょうか。

「平均で1年です。特にメタルフレームは型が必要なので、それだけで2ヶ月。サンプルまで含めると最短でも3〜4ヶ月はかかります。眼鏡はアパレルと違って、急に流行ったからすぐ作る、ということができない。でもそこが眼鏡の面白さでもあると思っています。例えばウィンブルドンの試合を見ていて観客がかけていた眼鏡にインスピレーションを受けたら、そこからデザインを画像に落とし込み、デザイナーに図面を依頼しサンプルを作る。その間に生地や色、レンズ、装飾、ケースまでトータルでデザインして展開します」
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左・Matt:クラウンパントといわれる眉ラインが特徴的な玉形で、全体的に細いアウトラインが上品。ノーズパッドが付いたモデルなので、軽い掛け心地とアイメイクにも嬉しいデザイン。3月末発売予定。(_P0A0590)右・Mattモデルに調光レンズを搭載したモデル。※調光レンズとは紫外線を浴びるとクリアレンズから有色レンズに変わる特殊なレンズ。このモデルはブルーレンズに変化する。現在発売中。


鯖江のものづくりと、眼鏡づくりの本質

―鯖江のものづくりについても教えてください。

「基本は分業制です。元々は何人も職人さんがいましたが、やはり高齢化でどんどん減ってきています。弊社では一貫生産をやっていますが、ただ、最終仕上げの磨きや細やかな技術を必要とする部分だけは絶対に人の手。プラスチックフレームは8割が磨きと言ってもいいくらいで、ここで“顔”が決まります。途中工程では機械も使いますが、最後のフィニッシュは人じゃないと出せない。その積み重ねで、眼鏡に表情が生まれるんです」

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フロントパーツとテンプルパーツをつなぐ蝶番の穴をあける作業。かけ心地や着脱時の負担を軽減するために、精密さが求められる。職人の手でフロントとテンプルの繋ぎ目にズレがないよう手の感覚で滑らかにしていく。40代で若手の吉田さん家族が経営する工場にて手作業で行われます。

そしてそのあとは刻印。微調整を繰り返しながら、目視でコラボレーションモデル名など必要な印を、テンプルの中心に合うよう機械にセッティングします。刻印の作業を行うのは、この道30年以上になる80代の石原さん。丁寧で、緻密な手仕事は唯一無二。

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難しさの先にある愉しさ、これからの眼鏡づくり

―池田さんにとって、眼鏡づくりの一番の魅力は?

「作るのが難しいところでしょうか。半年は必ず時間がかかるし、簡単に真似できない。でもだからこそ、飽きない。ここ何年かやっていて、今回の新型はまさに自分がかけたい眼鏡、変身願望を叶えてくれる眼鏡が出来上がりました」

―最後に、これからの展望を教えてください。

「時代は巡ります。今だと2002年から2004年くらいのモデルがまた流行っているんです。でも、同じものは作りたくない。常に新しいエッセンスが散りばめられた、かけるだけで気分が変わるような眼鏡をこれからも提案していきたいです。眼鏡は、日常の中で一番顔に近い道具。だからこそ、丁寧に、真剣に向き合い続けたいと思っています」

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PROFILE

池田良史

池田良史

金子眼鏡株式会社 国内営業部
2002 年4月金子眼鏡に新卒入社。すぐに眼鏡の専門知識を習得するために修理受付を担当し、現在でも全国から到着する修理品の業務を担当。現在は、国内眼鏡専門店卸の営業、アパレルOEM企画、生産管理、出荷・検品・発送業務、眼鏡関連小物の商品企画など川上から川下まで幅広く担当している。

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