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「H BEAUTY&YOUTH」10周年を彩る「APFR」とのコラボレーション

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2026.06.23

「H BEAUTY&YOUTH」10周年を彩る「APFR」とのコラボレーション

インセンスやディフューザーといったホームフレグランスのプロダクトを通じて、空間に香りをデザインするという新しい価値観を示してきた〈APFR(アポテーケ フレグランス)〉。2011年のブランド設立以降、日常の風景に溶け込む香りのあり方を追求し続けてきた姿勢は、多くの方の支持を得ています。今回、表参道〈H BEAUTY&YOUTH〉の10周年を記念したコラボレーションを実施。「HEART」というオリジナルの香りを開発し、インセンススティックとクローゼットタグを制作しました。単なる別注や記念プロダクトにとどまらず、ブランド同士の価値観や美意識を盛り込んだ今回の取り組みは、両者が共有してきた心地よい空間作りへの思想を象徴するものでもあります。本企画では〈APFR〉ディレクター菅澤圭太さんへのインタビューを通じて、ブランド誕生の背景やものづくりへのこだわりをうかがいながら、〈H BEAUTY&YOUTH〉との関係性がどのように育まれ、コラボレーションへ至ったのかを紐解きます。

Photography:Go Tanabe

Text & Edit:Shoko Matsumoto

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異文化との出合いが、香りの原点に。

ー〈APFR〉を立ち上げた背景を教えてください。

もともとはアパレル業界で働いていて、海外へ出る機会が多くありました。なかでも強く印象に残っているのが、中東のスーク(香料市場)との出合いです。スパイスや香木、香油のボトルが所狭しと並ぶ店構え、独特の陳列の美しさ。そこに漂う空気ごと、異文化の豊かさに圧倒されました。香りを扱うおじさんたちの佇まいもどこかカッコよくて。日本にはない香りと暮らしが地続きになった文化に、強く惹きつけられたんです。

帰国後もその体験が頭から離れず、まずは自分の手で何かを作ることから始めました。最初に取り組んだのがフレグランスキャンドルです。ただ、香りについてもキャンドル製造についても、当時の自分にはほとんど知識がありませんでした。キャンドルに香りを定着させるには、ワックスの種類や配合、芯の太さ、香料の比率まで精密に管理する必要があります。どれかひとつ変わるだけで、香り立ちも見た目も燃え方も変わってしまう。しかも当時はインターネットもまだ普及していない時代。香りに関する情報を得るのが非常に難しく、試作と失敗を繰り返しながら、少しずつ学んでいきました。さらに深く香りを理解するため、天然香料を扱う会社で実際に働いた時期もあります。原料の知識と調香の経験を積み重ね、それをブランドの根幹に据えてきました。「歴史や伝統を紐解き、異なる文化や感覚を融合させながら新たな可能性を追求する」。その姿勢は、ブランドを立ち上げた当初から今も変わりません。

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ーブランドを立ち上げた当初、どんなことを考えていましたか?

当時の日本では、香りをライフスタイルの一部として楽しむ文化は、まだ今ほど広く浸透していませんでした。キャンドルやインセンスにもそれぞれに親しまれてきた歴史や背景はありましたが、もっと気軽に暮らしの中で香りを楽しむような、そんな選択肢はまだ多くなかったように思います。だからこそ、性別や場面を問わず誰もがカジュアルに香りを楽しめるものを作りたいと考えました。香りを特別なものではなく、日常の中で自然に取り入れられる存在にしたかったんです。

〈APFR〉を形作る美意識、「余白」と「繊細微妙」。

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ーブランドとして大切にしている価値観を教えてください。

香りはもちろん、パッケージや空間も含めてひとつの体験として考えています。香りは目に見えないものだからこそ、ブランドの個性はパッケージや店舗空間にも表れると思うんです。ただ、主役はあくまで香り。見た目はできるだけシンプルにして、香りそのものが際立つよう心がけています。また、受け手の想像力を大切にしたいという思いもあります。すべてを説明しきるのではなく、少し余白を残す。その人自身の記憶や感覚と結びつく余地があるほうが、香りはより豊かになると思っています。

個人的には、全直営店舗に共通して置いてあるガラスドームがお気に入り。ガラス作家の小澄正雄さんに作っていただいたものなんですが、これはお客様にじっくり香りと向き合ってもらうための装置のような存在。見た目も印象的ですが、テーブルに置くときの音も心地よく、香りを“選ぶ”のではなく“感じる”という体験へと導いてくれるんです。ぜひ店舗にも足を運んでいただいて、香りと感覚が結びつく、そんな特別な時間を過ごしていただけたら幸いです。

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ー〈APFR〉らしさにつながる美意識はありますか?

「繊細微妙(せんさいみみょう)」という日本古来の感覚に強く惹かれています。江戸時代、庶民は幕府から贅沢を禁じられていて、着物の色も地味なものに限定されていたらしいんです。その制約の中で微妙な色の違いを追求し、「四十八茶百鼠」と呼ばれる多彩な色彩文化が生まれました。抑制があるからこそ生まれる素朴ながら洗練された美しさ。これは〈APFR〉の考え方にも通じています。店舗やパッケージにも灰鼠や白鼠といった色を取り入れていますし、調香やデザインにおいても奥行きやニュアンスを大切にしています。一方で、異なる文化や素材を組み合わせることも好き。香りも空間も、異文化が交わることで新しい魅力が生まれるので、ひとつのスタイルに縛られず、実験的な素材や技術も柔軟に取り入れながら、機能性と美しさが共存するデザインを目指しています。その感覚は一貫していますね。

カルチャーや文化をたどり、香りを組み立てる。

ー香りの開発はどのようなプロセスで行われていますか?

まずはシンプルなキーワードやテーマを決めるところから始まります。そこから映画や音楽、本、旅先で見た風景などを手がかりにイメージを広げていく。逆もまた然りで、実際に土地を訪れたり、歴史や文化を調べたりしながら、その背景まで深掘りしていくんです。僕は昔から、シルクロードのような⽂化が交わり合う場所で⽣まれる新しい価値に魅⼒を感じています。歴史や文化を理解したうえで、現代的な感覚を加えながら新しいバランスを探していく。それが香りづくりの核心です。

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香りの方向性が定まったら、次はラボでの試作・検証から製造工場での量産化試験まで、何段階もの工程を経て製品へと落とし込んでいきます。キャンドルやインセンスなど各アイテムとの相性、安定性や拡散性まで細かく検証しながら形にしていく。イメージを膨らませる工程と、データと向き合う工程。その両方を突き詰めることで、はじめて〈APFR〉の香りになります。
ーインスピレーションはどこから得ていますか?

社内のメンバーとの会話や旅先の空気、音楽や映画、本など、本当にさまざまです。映画に登場する人物から着想を得ることもありますし、レコードのジャケットやアルバムタイトルから発想が広がることもあります。例えば「BLUE HOUR」は、夕暮れから夜へ移り変わる、静かで淡い空気をイメージした香り。同時に、ジャズサックス奏者スタンリー・タレンタインのアルバム『Blue Hour』からも影響を受けています。また「AGHARTA」という香りは、ジャズトランペット奏者であるマイルス・デイヴィスのアルバムからヒントを得ています。香りには形がないので、名前はその世界観への入り口になります。ただ、あえて物語を説明しすぎないようにもしています。受け取る人それぞれが自由に解釈できる余白を残しておきたいんです。

共鳴から始まった〈H BEAUTY&YOUTH〉との協業。

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ー〈H BEAUTY&YOUTH〉との出会いを教えてください。

最初のきっかけは、弊社のセールスと〈UNITED ARROWS〉さんに共通の知人がいたことです。その後、ブランド同士の交流が生まれ、少しずつ関係が深まっていきました。〈H BEAUTY&YOUTH〉は、単に商品を販売する場所ではなく、ライフスタイルや空気感まで提案している存在だと思っています。〈APFR〉も香りを通じて空間や体験を提案したいと考えているので、感覚や価値観を編集して伝えるという〈H BEAUTY&YOUTH〉の姿勢に以前から共感していました。
ー〈H BEAUTY&YOUTH〉の空間から影響を受けたことはありますか?

型にはまらない柔軟さですね。さまざまなジャンルが自然に混ざり合っているのに、全体としてきちんと調和している。商品を見るだけでなく、空間そのものを体験している感覚があります。ジャンルを横断してスタイルを提案する〈H BEAUTY&YOUTH〉の姿勢は、異文化の融合から新しい価値を見出そうとする僕たちのスタンスとも重なる部分が多いと思います。今回のコラボでもそれは感じました。また、ブランドの文脈と街の空気感が一致している、南青山という立地もいいなと感じています。

画像 〈H BEAUTY&YOUTH〉の10周年を記念してオーダーした「HEART」の香りのインセンススティック。

ー今回の〈H BEAUTY&YOUTH〉10周年コラボのテーマやコンセプトを教えてください。

企画のお話をいただいた頃、〈UNITED ARROWS〉さんが中国・杭州への出店を控えているとうかがったんです。それがきっかけで東京を起点に、上海や香港、北京といった東アジアの大都市をイメージした香りを考え始めました。都市のエネルギーや雑踏、無機質な空気感を表現できないかと考えたんです。一方で、〈H BEAUTY&YOUTH〉の空間が持つ静けさやミニマルな美しさにも着目しました。2つの相反するイメージを行き来しながら、最終的にはその静かな世界観を軸に開発を進めることになり、ヒノキをベースにした香りを制作しました。そこへ「もう少しスモーキーなニュアンスを加えたい」というリクエストに応えながら調整を重ねて完成したのが「HEART」です。温かみだけに寄りすぎず、都会的な無機質さも感じられるよう細部までこだわりました。

画像 〈H BEAUTY&YOUTH〉の10周年を記念してオーダーした「HEART」の香りのクローゼットタグ。

ー今回のコラボで特に印象に残っていることは?

今回は「インセンススティック」と「クローゼットタグ」の2種展開で、どちらもパッケージには細かな工夫とこだわりが詰め込まれています。〈APFR〉の既存デザインをそのまま使うのではなく、フォントや文字間隔の調整を行うなどして、両ブランドらしさが自然に共存する形を目指しました。特にインセンススティックのパッケージでは、切断面をまたいで箔押しを施すという難しい加工に挑戦しています。弊社デザイナーも「その加工はちょっと難しいんじゃないですか?」というような反応で。一方〈H BEAUTY&YOUTH〉チームは「ぜひ実現したい!」という熱量があったので(笑)、印刷会社の方とも何度も相談しながら試作を重ねました。細かな調整を繰り返したからこそ、安心したと同時に非常に印象深いプロジェクトとなりました。

香りの可能性をさらに広げていくために。

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ー〈APFR〉の今後の展望を教えてください。

これまではキャンドルやインセンスなど、空間に向けた香りを中心に展開してきました。今後は香水やボディケアなど、よりパーソナルな領域にも取り組んでいきます。すでにいくつかの商品開発も進んでいて、2026年12月には「APFR TOKYO」が位置する下北沢reloadの2階で香水5種をお披露目する拡張店を展開予定。海外からの要望も多いので、グローバル進出も視野に入れています。最近は香りを選ぶ基準が、何の香りかよりも、どう過ごしたいか、どんな気分になりたいかが重視されるようになってきました。だからこそ、単に香りを身につけるだけではなく、感情や記憶と結びつくような体験を提案していきたいと思っています。日本的な余白や静けさを大切にしながら、さまざまな文化や感覚を融合させて、香りの可能性をこれからも追求していきたいですね。

PROFILE

菅澤圭太(すがさわ・けいた)

菅澤圭太(すがさわ・けいた)

1980年生まれ、千葉県出身。
APFR(アポテーケフレグランス)の創業者兼ディレクター。中東やアジアを旅するなかで出合った、スーク(香料市場)に軒を連ねる老舗の香料店の文化に深く魅了される。独学でキャンドル製作に試行錯誤を重ねた後、香料原料会社で本格的に香りの基礎を学び、2011年にAPFRを設立。自社工場での生産にこだわり、世界中の伝統的な香料文化や芸術から着想を得た洗練された香りを提案し続けている。
https://apfr.jp/

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