モノ
2026.08.07
⽇本が誇るカルチャーを次世代へ繋ぐ、「UACG」から初のゲーム作品「ときめきメモリアル」にフォーカス。
「消費されないアニメアパレル」をコンセプトに掲げ、日本が世界に誇るカルチャーを次代へ繋ぐプロジェクト〈UACG(ユーエーシージー)〉。第4弾では、初の「GAME」カテゴリーとして、恋愛シミュレーションゲームの金字塔であるKONAMIの『ときめきメモリアル』を取り上げます。プロジェクトを立ち上げ、自らディレクター・商品企画を務めるPRの本山綺良莉さんに、アイテムへのこだわりや企画実現までの道のり、今後の展望を伺いました。
Photo:Takehiro Sakashita
Text:Riho Abe
初の「GAME」作品に挑む、〈UACG〉の新たな一歩
〈UACG〉は、UNITED ARROWSのUAとANIME、COMIC(MANGA)、GAMEを組み合わせた造語です。“消費されないアニメアパレル”をコンセプトに、作品へのリスペクトを込めながら、その世界観を自分なりに解釈し、アパレルアイテムとして表現しています。プリントやボディなど、細部までこだわって作る姿勢は、立ち上げ当初から変わらず続けてきました。
これまで90年代の作品をメインに取り上げる中で、作品をよく知る方からは「取り上げてくれて嬉しい」といった声をいただきました。一方で、「作品は知らなかったけど、デザインが可愛いから買った」という声もあり、作品の魅力を知るきっかけになれたことが嬉しかったです。また、原作者の先生方と直接やり取りしながらご一緒にモノづくりができたことも、すごく思い出に残っています。
やはり監修の部分です。〈UACG〉では、原作を改変せず、作品の良さをどうアパレルアイテムに落とし込み、表現するかを大切にしています。そのなかで、作りたいアイテムごとに色数やプリント方法の制約があり、色味や細かな線の表現など、実現できることと難しいことを判断しなければならない場面が多くありました。ただ、その度に作品側が細部まで丁寧に監修してくださる姿勢に触れ、こちらも一切妥協をせずにその想いに応えたい一心で制作に向き合いました。
日本が世界に誇るカルチャーのひとつとして、ゲームの存在はとても大きいと思っています。私自身も小さい頃からゲームが大好きで、父や兄の影響でレトロゲームにも興味を持つようになりました。そうした原体験も含めて、いつか〈UACG〉で「GAME」カテゴリーに取り組みたいと思っていたので、ブランド名にも最初から「GAME」を入れていました。
『ときめきメモリアル』は1994年に発売された作品なので、私が生まれる少し前のゲームなんです。最初は、単純にすごく可愛いなと思ったことがきっかけで、イラスト集を買ったりして興味を持っていました。調べるうちに、『ときめきメモリアル』が恋愛シミュレーションゲームを家庭用ゲーム機で広く楽しめるものとして定着させた、ジャンルの原点のような存在だと知りました。〈UACG〉を立ち上げたときの「アニメTシャツをファッションとして楽しめるような橋渡し役に」という思いとも重なり、ぜひ形にしたいと思い選定しました。
アイテム数の拡充と、細部に宿るモノづくりのこだわり
もっと日常の中で楽しんでいただきたいという思いから、アイテムの幅を広げました。第1弾はTシャツ3型からのスタートでしたが、今回はニットやスカート、ブルゾン、スウェット、プルオーバー、パーカーなど、さまざまなアイテムを展開しています。
Tシャツは、ヒロインの藤崎詩織の横顔をアスキーアートのように表現したデザインです。ゲームを構成するコードのアセンブリ言語・機械語ダンプリストモチーフに、一からグラフィックを作成。一文字ずつ細かく調整しながら、横顔のシルエットを浮かび上がらせました。当時の空気感を取り入れつつ、直接的すぎないアートとして見せられる一枚にしたかったんです。プリントは今回もシルクスクリーンで仕上げています。
90年代のゲーム制作を想起させるプログラミング言語のひとつ。
物語の冒頭、藤崎詩織が自己紹介をするシーンから、横顔のカットを抜粋したデザインになっています。実は、ニットは一番修正を重ねたアイテムです。無限にある糸の中から限られた6色だけで元絵の陰影や表情を表現する必要がありました。さらにニットは伸縮する素材のため、わずかな線や色の違いで表情の印象も変わってしまいます。編み上がりや着用時の見え方まで計算しながら細かく調整したので、一番難しかったですね。
彼女と出会うシーンの画面越しの雰囲気を、そのまま表現することにこだわった。
厚みが出にくいインターシャ編みを採用し、長く着ていただけるよう着心地の良さにも配慮。
『ときめきメモリアル』といえば、制服!というところから着想したデニムのラップスカートです。そのまま制服を作るとコスプレのように見えてしまうので、ファッションとして取り入れていただけるよう、デニムのプリーツスカートに落とし込みました。ボディも一から制作し、パンツにレイヤードしても、一枚で履いても楽しめる仕様にしています。藤崎詩織のビジュアルはレーザープリントで表現し、少しぼかすことでデニムになじむようにしました。プリーツ部分は形が崩れにくいように工夫をしたり、洗い加工で風合いも出しています。
藤崎詩織のなびく髪と、スカートがひらりと揺れる様子を連動させて表現。
今回初めて刺繍にチャレンジしました。当時のPCをイメージし、画面部分には藤崎詩織のビジュアルを刺繍で表現。細い線を重ねることで色を出し、PC画面の質感を意識しました。キーボード部分には発泡プリントを採用し、凹凸感や使い込まれたような質感を表現しています。
ボディは昔のアーカイブをオマージュしつつ、今っぽく着られるコンパクトなシルエットに仕上げました。日常使いしやすいよう、色数を抑えてミニマルにまとめています。
観覧車でのデート中に、藤崎詩織が「怖いわ」とつぶやくシーン。表情や上目遣いの可愛らしさも、選定のポイントだそう。セリフは英訳で配置。
時代を超えて新鮮に映る、『ときめきメモリアル』の魅力
以前から、作品の存在感やビジュアルの可愛さに惹かれていました。昨年、新作が発売されたタイミングでようやくプレイすることができ、あまりに面白すぎて徹夜でやり込みました(笑)。恋愛シミュレーションなんですが、主人公である自分自身も勉強や運動を通して成長していくところが面白いんです。努力すれば恋が叶うという、ポジティブな青春感も好きで。また、攻略方法を簡単に調べられなかった時代に、口コミで情報を共有しながらゲームの魅力が広がっていった背景にも、当時ならではのローテックな熱量を感じます。
『ときめきメモリアル』のビジュアルは、レトロでありながら、当時を知らない世代には新鮮に映る魅力があるのかなと。同時に、美少女キャラや学園ものという要素も、ファッションとして表現してみたいと思いました。中でも藤崎詩織は、ヒロインでありながら一番攻略が難しいということも含めて、とても魅力的なキャラクターです。今回は多くのアイテムでメインにし、自分が純粋に可愛いと思った表情をデザインに反映しました。『ときめきメモリアル』を知っている方はもちろん、作品を知らない方にも直感的に可愛いと思っていただけたら。90年代の美少女キャラクターをファッションとして楽しむ感覚も広がっていると思うので、そうしたカルチャーが好きな方にも届いたら嬉しいです。
新登場のショップバッグと、〈UACG〉のこれから
ただのショッパーではなく、その後もバッグとして使っていただけるアイテムにしたいと思って制作しました。素材にはビニールを採用し、中身が見える透明感のある仕上がりに。デザインは、A(アニメ)とG(ゲーム)はどちらも映像のピクセルを表現し、C(コミック)は印刷の網点などの意味を込めた〈UACG〉のロゴをバッグ全体に落とし込み、ゲームのような流れや遊び心が伝わるモノグラムのように表現しました。
モノづくりには引き続き力を入れていきたいです。技術や表現の幅をさらに高めながら、当初から掲げている「10年後にヴィンテージのように愛されるアイテムを作りたい」という思いは変わらず持ち続けています。また、SNSでは海外の方から購入希望のメッセージをいただく機会も増えました。版権上可能な作品については、越境ECやグローバルECでの展開も含めて、〈UACG〉のモノづくりを海外のファンの方にも届けていけたらと思っています。次回も新しい作品、新しいアイテムで進めていますので、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。
INFORMATION
PROFILE
本山 綺良莉
1997年生まれ。大阪文化服装学院卒業後、2017年にユナイテッドアローズへ入社。〈ユナイテッドアローズ 新宿店〉などでの販売経験を経て、2022年より〈ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ〉のPRに。現在は〈スティーブンアラン〉〈エイチ ビューティー&ユース〉を担当。幼い頃からのアニメ、マンガ、ゲーム好きが高じて、2025年に新プロジェクト〈UACG〉を立ち上げ、ディレクター兼PRとして活動している。