ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

〈グリーンレーベル リラクシング〉と「TOKYO SEQUENCE」が映し出す都市の魅力。

モノ

2023.05.11

〈グリーンレーベル リラクシング〉と「TOKYO SEQUENCE」が映し出す都市の魅力。

東京から世界に発信するブランド〈ファセッタズム(FACETASM)〉を率いるデザイナー・落合 宏理さんと、MVやCM、写真集や展覧会などの多彩なクリエーションで名を馳せる写真家・映像監督、奥山 由之さんが、ウェブマガジン『フイナム(HOUYHNHNM)』上で展開する不定期連載としてスタートしたプロジェクト「TOKYO SEQUENCE」。このプロジェクトと〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(以下、GLR)〉がコラボレートを果たしました。「TOKYO SEQUENCE」が切り取る東京の姿、そして、クリエーションがアイテムに落とし込まれることで生まれる「新たなカタチ」について、おふたりにお話を伺いました。

Photo:Sayuri Murooka(SIGNO)
Text:Masashi Takamura

幾重にも重なり合って変化していく東京の姿は、僕らに似ているところがある。

いまの東京を生きる、どこかの誰か。落合さんの作る〈ファセッタズム〉の服を着た彼らを東京のどこかで、奥山さんが撮影をする。

「TOKYO SEQUENCE」は、互いのクリエーションにリスペクトを捧げるデザイナーの落合 宏理さんと写真家・映像監督の奥山 由之さんが意気投合して生まれた、新時代のアートプロジェクトだ。コンセプトとして掲げているのは、「シークエンス=連続性」。

落合:5年ほど前に出会ったんですが、奥山くんの作品に惹かれていたこともあって、一緒に何かできないかと探っていたんです。

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奥山:このタイトルが決まって『フイナム』さんで進行していくことが決まる前に、すでに東京で生活している人たちに、〈ファセッタズム〉の洋服を着てもらって写真を撮りたいな、という話はあったんです。

落合:1年ほどの準備期間があって、撮影がスタートしてからも3年半くらいの時間が経っていますね。

奥山:僕も落合さんも東京で生まれ育ったわけですが、東京という街は他の都市にないような魅力があると感じていて。古い民家の横に新しいビルがドーンと建っていて、それが密集して、混沌としたレイヤーを生み出している。文化にしてもいろいろな国から様々な影響を受けて、“東京”という1つのカルチャーが練り上げられていると感じています。

スクラップ&ビルドを繰り返して、建造物といった物理的な意味でも、モノやコトといった文化的な意味でも、レイヤーが幾重にも重なり合っている。その単一的でない部分が魅力。それが、落合さんが生み出す〈ファセッタズム〉の服にもどこか似ていると、僕は感じていて。ファッションだけでなく、音楽やアート、スポーツといったエッセンスを混在させている点が、落合さんにしか表現できない、絶妙なバランス感を生んでいるなと思っています。

落合:モデルさんひとりに〈ファセッタズム〉の服を着てもらって東京で撮影するだけでは、この複雑な東京という街のシークエンスを表現できないだろうなということで、年齢や職業、性別なども限らずにいろいろな人を撮影していこうと。知り合いだけでは広がりが出せないので、いろいろなツテを辿って、個性豊かな皆さんにご協力いただいています。

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「TOKYO SEQUENCE」では、8ミリで動画撮影したフィルムをベタ焼きにして、そこから異なる3コマをセレクト。それぞれ大きくプリントした後に画質調整をして最後にそれぞれを組み合わせていく。そんな膨大な作業ののちに生まれている。現在200名を撮影することを目標に進行中の本プロジェクトは、ふたりの出会いからはじまった。

奥山:一枚絵にしなかったのは、後ろに車が通っていたり、風に髪がなびいていたりという、実際の出来事、事実として、ひとつひとつのコマは違ったものになります。つまり、厳密に言えば瞬間が異なるその3枚の間に流れる時間をもってして、連続性を表現したかったんです。1コマは18分の1秒。1秒にも満たない時間の中に、小さな変化があるということは、1分、1時間、1日、1週間、1ヶ月、1年…という単位で捉えたらもっと大きな変化があるわけで、人もファッションも街も、そうやってどんどんと変化しているのが“東京”なんだ、ということを伝えたかったんです。

1日に数名を撮影するこのプロジェクトは、多忙なふたりの時間と撮影に訪れるという被写体の方たちとの時間を合わせて撮影していく点でも手数が掛かっている。

落合:ロケーションはすべて奥山くんが決めています。ですが、選ばれるのはいつも僕ららしいなと感じられるロケーション。そこは僕らの行きつけの場所だったり、普段生活しているような場所だったりすることも多いのですが、撮影をするとまた新しい姿に見えてくる。被写体の方たちは本当にさまざまで、照れている人だったり、奥山くんに会いたくて仕方がない人だったり…。東京というキーワードだけで結びついた多くの方々が、僕が作った服を着て、ファインダーを見つめている奥山くんのほうに向かっていく。それは、すごく幸せな時間でした。たぶん僕は、日本でいちばん撮影する奥山くんを見ているデザイナーです(笑)。

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連続的に姿を変えていく東京という、たったひとつの接点で結びついた多種多様な人々を通じて、落合さんと奥山くんもまた結びついていく。「TOKYO SEQUENCE」が心を揺さぶるのは、そうした魅力によるところも大きいだろう。

東京で何かが起きる予感、それをカタチにできた意義は大きい。

では、「TOKYO SEQUENCE」がふたりに残したものとは何なのか。東京という都市に対して、自身のクリエーションに対して、あるいはお互いに対しての変化は感じているのか、おふたりに尋ねてみると…。

奥山:東京ってやはり、いつまでも完成しない街だと思うんです。どの場所も、常に最後に“(仮)”がついているような。どこか生き物のようにも感じていて。

落合:“東京(仮)”って感じ、わかるなぁ。ただ、こうした東京の記録ということではなくて、僕らはたまたま出会って、感じ合って、このプロジェクトをはじめた。その偶然性にも大きな意味を感じています。

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奥山:コロナ禍や延期して開催されたオリンピックの影響もあって、物理的にも街の姿が変わっていったし、はからずも時間を掛けたことで、そうした東京の大きな変化を捉えることができたんです。例えば、いまはもうない建物が写っていたり。過去に撮影したロケーションのほとんどが、いまは違う景色に変わっているかも知れませんね。

落合:奥山くんは、いつも“こんなところを!”っていうロケーション選びで僕を驚かせてくれるんです。でも、奥山くんが切り取るとやっぱり普段の見え方と変わってくる。それは、光や撮影の手法というのもあるんですけど、何か違う。

奥山:国外からの目線で見る東京って、いまでもいわゆる『ロスト・イン・トランスレーション』的な世界観で見られがちですけど、生活者の目線から見ると、工事現場や駐車場が多くて、急に坂道が現れたり、ビル群の間を縫って小川が流れていたりする。パリや京都では目にしないような混沌感をこのプロジェクトで表現したい想いもありました。

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落合:奥山くんと出会って“何かやろう”という話をしたときに、東京で何かが起こりそうだという予感めいたものを肌で感じていたんです。だからこそ、“いま、はじめなきゃ”と突き動かされるものがあった。そんな想いがこのプロジェクトの発端。たまたま、というか、コロナ禍やオリンピックなどで、想いのほか世の中は“動いた”。僕らが動きはじめた時間と、世界が動き変わりゆく時間が偶然一致した。タイミングの産物かなという面は感じています。

変化する東京の姿を、アクシデンタルな要因がありながら、約3年半という時間をかけて撮影してきたことで、ダイレクトに世に残す結果となったようだ。

僕らの写真が誰かの生活に溶け込んだ後に、再発見できたら面白い。

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このようにリスペクトし合う2組が生み出した「TOKYO SEQUENCE」に魅了されたひとりが、〈GLR〉のバイヤーである。新時代のアートプロジェクトが醸し出す世界観を〈GLR〉のユーザーとも共有したいという想いから、コラボレーションの運びとなったのだ。

落合:〈GLR〉さんの展開されている上品なワードローブ。都会的なライフスタイルに、僕らのプロジェクトはとっても良くマッチすると感じていました。大変多くの方に愛好されているブランドだと思うので、全国に展開のある〈GLR〉さんとタッグを組むことで、「TOKYO SEQUENCE」の魅力を多くの方々に知っていだだけるいい機会だと思っています。

展開するのは、フォトTシャツとロゴ入りキャップとトートバッグ。特に注目は、「自然/光/ライフタイル」という〈GLR〉のコンセプトに寄り添ったキーワードを元に、奥山さんが撮り下ろした写真がプリントされたTシャツ。ライブや映画感の物販に並んでいるような、気兼ねなく手が伸び、「一枚買っておこうかな」と感じてもらえるような商品展開を目指したそう。どのアイテムも本プロジェクトの魅力をダイレクトに味わえるのが、何よりの魅力だ。

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落合:デザイナーの視点でいうと、奥山くんの写真はTシャツにもよく映えると感じます。何より光が美しいですし、僕らの考える東京のひとコマがきちんと切り取られている。使うカットは奥山くんのセレクトの中から僕が最終的に決定しましたが、とてもバランスがいいと自負しています。

奥山:僕の撮った写真が日常で身に着けるものになるというだけで、新しい感覚を覚えさせてくれますね。これまで自分の写真展でも物販としてTシャツなどのアイテムを作ったことはあるのですが、それをどこかの誰かが買ってくださって、身に着けて街を歩いている。そんなシーンをたまたま僕が見かけたりするわけです。すると、自分が撮った写真なのにそう見えない。それが写真表現の不思議なところで…。ボーっと見ていて、“あ、僕の写真じゃん!”って数秒してから気付くというこの体験がとても新鮮だったんです。写真は、インターフェイスが変わることで見え方、捉え方も変わるんだと。なので、物販も写真表現の1つとして面白さを感じています。

落合:フォトTって本当に尊いものですよね…(笑)。

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奥山:誰にも着用されていない状態は、自分にとっては単なる、いちTシャツとしてニュートラルな見え方をしていますけど、のちに、洗濯して、色褪せて、何なら伸びたりして、また違うものになっていく。そして、このプロジェクトが表現している“時間の変化”という部分にも、その点で親和性があるとも思っていて。自分の写真によって切り取られた“瞬間”が誰かの所有物となり、それが手元に残って、もしかすると何十年もの未来にまた出会い直せるかもしれない。そういう可能性を思うと、新しい発見がまたあるのかなと楽しみでもあります。

やっぱり時間を内包できるのが “モノ”のいいところです。本や写真集もそうですけれど、経年変化があるし、存在することで、やがてそこに意識を注がれる時が訪れる。”モノ”としてそこに存在していることで編集不可能なわけなので、時間経過の中で基点となって、変化を内包しやすい。僕らの写真とともに時間の経過や連続性を感じていただけたらいいですね。

落合:〈GLR〉を通じて多くの皆さんに知っていただくことも、僕らの「TOKYO SEQUENCE」の使命だとも感じています。だから、いろいろな人たちの生活に溶け込んだ“東京の姿”というものを、奥山くんが言ったように“再発見”してみたい。それを考えると、このプロジェクトはこれで終わりじゃなくて、また未来が楽しみになる、そんな取り組みだったと思います。

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膨大な時間と手間を掛けて撮影された、とある日のとある東京の「瞬間」。ユーザーとしても、これらのアイテムを身に着けることで、ふたりのプロジェクトに参加しているような気分を味わえるに違いない。

PROFILE

落合 宏理

落合 宏理

1977年、東京都生まれ。2007年にファセッタズムをスタート。数々のアワードを受賞。東京コレクションだけでなく、2023年にはパリコレクションに参加するなど、世界の第一線で活躍。近年では、自身のブランド以外に、全国のファミリーマートで展開する「コンビニエンス ウェア」の監修も手掛けている。

奥山 由之

奥山 由之

1991年、東京都生まれ。具象と抽象といった相反する要素の混在や矛盾などを主なテーマに作品制作を続けている。2011年、第34回写真新世紀優秀賞や、2016年、第47回講談社出版文化賞写真賞など。写真家としてだけでなく、ユーモアに溢れたMVやCMを多数手掛け、映像監督としても活躍。

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