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チャリティプロジェクト「united LOVE project 2024」が繋ぐ未来

モノ

2024.05.24

チャリティプロジェクト「united LOVE project 2024」が繋ぐ未来

売り上げの一部を寄付に充てる「UNITED ARROWS」のチャリティプロジェクト「united LOVE project」。2024年は、カラフルな色使いと優しいタッチが印象的で、柔らかで軸のある女性像を描かれるイラストレーターの西山寛紀さんを迎え、イラストを描き下ろしてもらいました。テーマは「united LOVE project」の〝LOVE〟とユナイテッドアローズ ウィメンズのシーズンテーマの一つである〝STEP FORWARD TO〟。商品の売り上げの一部は自然災害発生時などにおける支援活動への寄付に繫がります。西山さんがどのような思いで「united LOVE project」に参加したのかを伺いました。

Photo:Go Tanabe
Text & Edit:Shoko Matsumoto

表現で世の中と関わっていきたい

--イラストレーターを目指したきっかけを教えてください。

そもそも美術の方面に向かおうと思った頃のお話になりますが、高校生の頃にNUMBER GIRLというバンドに出会った影響が大きいです。それまでヒットチャートばかり聴いていたのですが、ふとしたきっかけで彼らの音楽に出会い、身ひとつで音楽に向き合っていて、表現の力で圧倒させる彼らがなんだか身近でかっこ良く感じたんですよね。それに感化されて、自分も何か表現で世の中と関わりたいと思ったんです。特にメンバーの田渕ひさ子さんが弾くギターの音やフレーズがすごく好きで、シンプルなのにとても印象的に感じていました。ずっと同じ機材を使っていたりと、こだわりも感じられる。僕も一見単純な図形だけど心に響くようなイラストレーションを学生時代から心がけていたのですが、創作においての意気込みを音楽を通じて学んだような気がしています。大学時代はbloodthirsty butchersのライブに、月に一度観にいっていて、作品を送ったり、当時連載していた雑誌にファンレターと一緒にポストカードを同封したりしていました。大学院の頃にマネージャーさんから、バンドのグッズをデザインしてみない?と連絡をいただき、大学院から社会人2〜3年目まで、ポスター、フライヤー、Tシャツなどをデザインしていました。一方でイラストレーションのコンペに応募し、賞をいただいたりして、徐々に雑誌や書籍のカバーのイラストを手がけるようになりました。そういったことがすべて融合して今に繫がっている感じです。

画像 イラストレーターの西山寛紀さん。

--どのような経緯で今回のプロジェクトに参加されたのでしょうか。

昨年の10月くらいに、〈ユナイテッドアローズ(以下、UA)〉のディレクターの方から突然連絡をいただきました。UA自体、学生の頃からよく利用していて、社会人になってからは〈スティーブン アラン〉やUA系列のブランドをシーズンごとに購入するほどのユーザーでした。特に〈スティーブン アラン〉はアートカルチャーにも感度が高いように感じましたし、UAさんの広告は僕が学生の頃は、ジャンルイジ・トッカフォンドを起用していたり、グラフィックデザインやイラストレーションを学ぶ自分にとってはかなり身近で親近感があるブランドだったんです。だからお声がけいただいたときは、すごく嬉しかったですね。「united LOVE project」というプロジェクトをされていることは、実はお声がけいただいて初めて知ったのですが、服や日用品を扱う会社が、このようなチャリティをおこなっているということが、企業として素敵だなと感じました。普段は装画やポスターなど紙の媒体を手がけることが多いのですが、近年は、Tシャツ、バッグなどの日用品をはじめ、ショッピングウィンドウなども手がけるようになってきました。今回Tシャツ2型、キャップ、バッグとバリエーション豊富に展開されるので、自分の力試しという意味でもぜひ受けたいなと思いました。たくさんのユーザーの方に着ていただくデザインというのは、自分的には難易度が高かったのですが、トライしてみようと思ったんです。

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ポジティブなイメージを想起させるイラスト

--〝LOVE〟と〝STEP FORWARD TO〟というテーマを元に、どういうイメージでイラストを起こしていったのでしょうか。

まず〝LOVE〟は、単純に言葉として強いですよね。文字としても、ものすごくポピュラーなので図像はどうしようか、かなり悩みました。直接的なものよりも想像力がかき立てられて、なおかつキャッチーであることを重視しました。ハートは直球ですが、〝LOVE〟と相性がいい図形。そこに瞳を閉じて相手を静かに想う人の横顔を組み合わせました。横顔を描く際はハートで口もとを隠すことで、「言葉で言うことも大事だけれど、それと同じくらい行動することが重要だ」ということを想起させられるといいなという想いで描きました。静かなイメージですね。〝STEP FORWARD TO〟は反対に、動のイメージ。僕はプライベートワークでは日常をテーマに絵を描いているんですが、「歩く人」をテーマにした絵もこれまで何度も描いてきました。前へ踏み出すというのは、普遍的で前向きな行為。なので〝STEP FORWARD TO〟のテーマを聞いた時は、いつもの制作の延長線のように感じました。〝LOVE〟で人の顔を描いているので、〝STEP FORWARD TO〟は、より匿名性が高く、誰にでも当てはまるイメージで仕上げました。二色を使って、最小限に表現することで、シルクスクリーンにもハマる絵が描けたと思います。少し苦心したのは、レディースの商品なので、中性的よりも少し女性らしいニュアンスを加えたところ。靴のヒールやつま先のニュアンスの微調整を繰り返し、フォルムも優雅な印象になるように、何度も試行錯誤しました。

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手描きのイラストや文字をパソコンに取り込み、曲線など細かな部分を調整していく。

--実際に出来上がった商品を見た感想を聞かせてください。

Tシャツは生地がやわらかくて肌触りがよく、これからの季節にぴったり。紫色はCMYKの印刷だとくすみがちというか、暗く沈んでしまうことが多いのですが、シルクスクリーンにしたことで、しっかりときれいな発色が叶いました。理想の色に仕上がりましたね。タグもプリントで、僕の名前の手描きの文字を採用していただき嬉しく思います。

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バッグの生地は厚く、マチもあって、しっかり入る大容量サイズ。丈夫なので使い込んでもへたりにくい。イラストの色がのったときのイメージを話し合って、真っ白ではなく生成りの色味を提案されたときは、UAさん側のこだわりも感じました。僕はレコードを買う時などに使用したいです。

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キャップは、テーマの文字を採用。普段、文字と絵を一緒に展開することが多いけれど、文字だけを落とし込むというのは今回が初めてのことでした。刺しゅうはインクと異なり色落ちせず耐久性もあるし、糸を縫い合わせることで少し立体感がつくので、僕としては好きなマテリアルのひとつ。最初、文字の太さはもっと細かったんですが、少し太くすることでやわらかいニュアンスが加わり、よりポジティブな印象に仕上がったかなと思います。

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「united LOVE project 2024」をアクションのきっかけに

--「united LOVE project 2024」を通して伝えたいことや展望を聞かせてください。

今回「united LOVE project 2024」でイラストレーターを起用してアイテムを作るというのが初めてだと伺いました。テーマの言葉から想像力を働かせてイラストを起こし、UAさんが思い描くイメージにも寄り添う、良いアイテムが出来上がったと思います。チャリティ活動に敏感な方はもちろん、このアイテムがチャリティに繫がるということを知らない人にもぜひ手に取ってもらいたいです。このアイテムがきっかけで結果的に寄付の存在を知れる、ということは、すばらしいことだと思います。今、世界中でいろんな問題が同時に起こっているじゃないですか。世の中の役に立ちたいと思っていても、直接募金をするなどの行為は、ともすれば難しく感じられるかもしれません。なのでこのプロジェクトが、何か背中を押したり、少しでもアクションできるきっかけになったら嬉しいです。

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「united LOVE project 2024」のアイテムで、ファッションを楽しみながら、チャリティーを。ささいなきっかけや行動が、きっとポジティブな未来に繫がっていくはずです。

PROFILE

united LOVE project 2024

united LOVE project 2024

商品の売り上げの一部(1点につき100円)は、認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンが運営する災害緊急支援プロジェクト「空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”」に寄付いたします。災害地の方々が一日でも早く通常の生活に戻るための緊急・復旧・復興支援活動に役立てていただきます。

PROFILE

西山寛紀

西山寛紀

1985年生まれ。多摩美術大学大学院修了。対象を色面構成で絵画的にとらえる表現を得意とし、書籍、雑誌、広告、Web、衣料品やプロダクトなどのイラストレーションを手がける。クライアントワークと並行してオリジナル作品も制作し、国内外で展覧会を開催している。
最近の仕事にCONVERSE シューズカスタマイズデザイン、資生堂150周年「A BEAUTIFUL JOURNEY」SHISEIDO THE STORE店内リーフレット、良品計画「MUJI WALKER」商品告知ビジュアル、新宿ルミネ1ウィンドウアート、台湾VVG VILLAGEとのコラボレーションなどがある。

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