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2024.09.24
「アンダーアーマー」×「ユナイテッドアローズ」が創る、「SPORTY / LUXE for LIFE」という新しいスタイル。
「SPORTY/LUXE for LIFE」というコンセプトのもと、トップアスリートのサポートやトレーニングシーンで培ってきたナレッジによる機能性の高い素材を提供し続ける〈UNDER ARMOUR(アンダーアーマー)〉と、ファッションの楽しさを伝える〈UNITED ARROWS(ユナイテッドアローズ)〉が共同開発したカプセルコレクションが発売。今回は、株式会社ドームの執行役員、松原 陵太さんとマーチャンダイジングトレーニング&ランニング部部長、柴野 暁さんにコラボレーションの経緯からアイテムの特徴やこだわり、これからの展望について聞きました。
Photo:Takehiro Sakashita
Text:Mikiko Ichitani
機能性とファッション性、得意分野を掛け合わせた新しいスタイルができるまで。
株式会社ドーム・執行役員、松原 陵太さん。
松原:〈アンダーアーマー〉は1998年から日本での展開を行っていますが、プロアスリートやメンズといった印象が強く、それ以外のターゲットへの認知が広がりにくいという課題がありました。今後さらにブランドの拡大を目指すためには、ウィメンズを強化すること、また新たなブランドイメージを共に創り上げることのできる取り組みをするべきだと考え、今回〈UA〉さんにお声がけさせていただきました。
— 〈ユナイテッドアローズ〉と取り組むことでどのような効果を期待されましたか?
松原:〈アンダーアーマー〉が目指すべきターゲット、30代から40代のウィメンズ層に強いというのは大きな魅力でした。また、〈UA〉さんは個人的に学生時代からよく買い物で利用していたということもあり、信頼のおけるブランドです。これは余談ですが、両ブランドともに名前の頭文字が「UA」になることもあり、これは相性がいいのではないかと勝手に期待していました。
— 構想からローンチまでどのくらいの期間で実現されたのですか?
松原:2022年の年末ごろに話がスタートしてから事業計画を練ったり、〈アンダーアーマー〉の本国承認を得るといったプロセスを経て、実際にキックオフしたのは2023年の5月ごろでした。そこから約1年数ヶ月かけて、ようやく今年の8月にローンチにいたりました。
コンセプトを連想させるブラウンカラーを採用し、お互いのブランドネームがつながる特別なデザインでロゴを制作。
柴野:このプロジェクトで表現したかったのは、我々が持っているスポーツブランドとしてのDNAと、〈ユナイテッドアローズ〉が作る着こなしやファッション性の融合でした。コレクションのペルソナを考えていく過程でまず最初に思い浮かべたのは、都会で暮らす、生活にゆとりのある大人の姿。日常生活のなかでジムに行ったり、ヨガをしたりとライフスタイルのなかに運動があるペルソナを考え、自然と「SPORTY」と「LUXE」というワードに辿りつきました。
株式会社ドーム・マーチャンダイジングトレーニング&ランニング部部長、柴野 暁さん。
柴野:〈UA〉さんから提案いただいた型数などのプランから、毎週ディスカッションを重ねて絞っていきました。話し合いのなかでポイントとしたのは、軸を横に広げすぎないこと。テーマにある「LUXE」を感じさせるカラーと素材を選定し、そこからバリエーションを組み立てていきました。
両ブランドのロゴを配した、カプセルコレクション専用のハンガー。
柴野:スウェットは、インラインでも製品化している柔らかな風合いが特徴の「メリディアン」という素材を軸に、ミネラルが配合された〈アンダーアーマー〉独自のテクノロジー「RUSH」を糸に練り込むことで、人体から発せられた熱エネルギーを遠赤外線に変換し体内に戻す効果を加え、さらに裏地には遠赤外線を蓄え反射するセラミックプリントである「CGI」プリントを施すことで身体を温める機能に特化したアイテムになっています。
松原:いずれも単体の機能としては従来の商品に採用していましたが、一つの素材に盛り込むというのは初の試み。ファーストコレクションということで、オリジナルの素材開発から力を入れて取り組んでいます。
柴野:中綿のアウターには、ランニングにも使えるほどの軽量で保温性も高いパンチング中綿を使用しています。裏地にはスウェットと共通の「CGI」プリントを施し、見た目以上に温かい着心地を実現しました。
松原:このパンチング中綿は伊藤忠商事が扱っている特許素材で、インラインの商品にも使われています。シート状の中綿に無数の穴が空いているというものなのですが、この穴によってデッドエアを確保することができ、薄くて軽いのにしっかりと温かい。これからの季節に重宝するアイテムになっています。
都会的でヘルシーな日常をシームレスにつなぐウェアコレクション


柴野:今回の特設サイトにもあるように、朝は都内の公園で犬と散歩をしたり、その後にホテルのジムでトレーニング、終わってからはホテルのレストランでランチをするなど。ゆとりのある生活のなかでスポーツと上質な時間をつなぐことのできるウェアリングというのは意識したポイントです。
— キービジュアルからもシーンやアクティビティに縛られず、生活をつなぐというポイントが伝わってきます。撮影にあたり、こだわった点などもあれば教えてください。
柴野:全体として、〈アンダーアーマー〉と〈ユナイテッドアローズ〉のどちらかに偏りすぎず、両方のエッセンスをしっかりと表現するというのは意識していました。例えば、レディースのルックでハイブランドのレザーバッグにハイヒールを合わせると、高級感は出せるけれどドレスシーンの印象が強くなってしまう。だったら、バッグをウーブンのものに変えてスポーティー感を残すなど、スタイリングのバランスは細かい部分までこだわりました。


柴野:スウェット地は、ガウンジャケットとロングワンピース、ロングスリーブ、ショートスリーブのTシャツ、ロングスリーブのモックネックTシャツ、ワイドとストレートのシルエットが異なるボトムス2型をラインナップしています。ジャケットとワンピースにはウエストにドローコードを入れて、シルエットの変化を楽しんでいただけるようにしたり、ストレートパンツは裾のファスナーでフレアシルエットに調節することも。自由に着こなしを楽しんでいただけるアイテムが揃っています。
— 中綿アウターは洗練された印象のノーカラーのタイプとカジュアルにも着こなせるジップアップの2型がありますね。
柴野:ノーカラージャケットは、サイドがジップで開く仕様になっていて、横から見たときにテントのような綺麗な三角形に見えるようなフォルムにこだわりました。留め具はボタンにしていて綺麗めな印象です。ジップアップジャケットは、前後でキルトのデザインを変えていたり、ポケットをたくさん仕込んでいたりと遊び心もデザインに落とし込んでいます。シート中綿なので、着膨れせずにすっきりと着こなせるところは共通したこだわりです。
— 男女ともにスタイリングに取り入れやすいアイテムが揃っていますね。サイズ展開はどのくらいあるのでしょうか?
柴野:ワンピース以外のアパレル全ての商品をSからXLまでのサイズで作っていて、ユニセックスで展開しています。
ファスナー開閉でシルエット変化を楽しめるパンツ。各アイテム毎に機能的な意匠を取り入れている。
松原:こういった色味は〈アンダーアーマー〉ではあまり使ってこなかったものです。今回、〈UA〉とのコラボレーションを象徴する色として、話し合いを重ねて選定しました。
— トップスの内側に両ブランドのネームが入っていたり、ドローコードの金具やループに使われているレザーなど細かな部分にこだわりを感じます。
松原:こういった資材までかなりこだわっています。インラインではあまり使わないような高級感のあるボタンを使用したり、ドローコードの金具も別注で作りました。
柴野:金具やレザーといったアクセントになるパーツも、コレクション全体のカラートーンと調和するようにというのはかなり意識しています。
松原:インラインで出しているランニングシューズ「Infinite Pro」の「HOVR+」という本格的な陸上競技でも使用できる軽量のミッドソールを採用しています。コレクションのテーマやターゲットに合わせて、アッパーやストラップなどそれぞれのマテリアルを個別に指定し、コラボレーションならではの一足に仕上がりました。
柴野:フットウェアはグローバルのチームも参加していて、レザーなどの素材の提案などいろいろと有益な意見をもらうことができました。素材数が多いので色を合わせることが大変でしたが、何度かサンプルの調整を繰り返していくうちに、少しずつ整えていってアパレルと同じトーンに落としこんでいったという感じです。
グローバルの反響と次回のコレクションについて。
松原:社内の反響はとても大きいです。ローンチイベントも盛り上がりましたし、社員からも「欲しい!」という声が聞けるのは嬉しいですね。また、本国からも契約しているアスリートにギフトしたいという声があり、いくつか送ったのですが、SNS発信等で知った米国在住の方が「どこで買えるの?」という問い合わせが来ていると聞いて驚きました。残念ながら本国のアメリカでは販売していないのですが、このコレクションをグローバルでも注目してもらえているんだと実感することができました。
— 次回のコレクションもすでに動き出しているとのことですが、どのような展開を予定されていますか?
柴野:今回はファーストシーズンということで、一度に全ラインナップを展開しましたが、次回は春向けのアイテム、夏向けのアイテムというようにお客さまに対して段階的に楽しみを作っていきたいと考えています。引き続き「SPORTY/LUXE for LIFE」をコンセプトに、カラーや素材の軸はシンプルにまとめつつ、カテゴリの枠を少しだけ広げて、グッズなどの領域も増やしていこうかなと思い、企画・開発しています。ぜひこれからも楽しみにしていただけたら嬉しいです。
INFORMATION
PROFILE

株式会社ドーム 執行役員 松原 陵太さん
1998年に伊藤忠商事に入社。一貫して繊維部門で、ニューヨーク、ロンドンの海外駐在を経て22年に株式会社ドームの買収を担当。同年12月よりMDのヘッドに就き、アンダーアーマーの商品力強化に注力。マーケットインの発想で、アスリートのニーズに呼応した商品企画、コラボ企画を打ち出している。

株式会社ドーム マーチャンダイジングトレーニング&ランニング部部長 柴野 暁さん
2015年株式会社リンク・セオリー・ジャパン入社(2020年株式会社プラステと分社化)。店舗スタッフ、店長、エリアマネージャー、MDを担当。2023年株式会社ドーム入社。「アスリートが価値を感じる商品づくり」を軸としながら、日本市場におけるタウンユース可能なラインナップの拡大に注力。日本におけるアンダーアーマーブランドの顧客層拡大を目的としたイメージ変革に向け、モノづくり、商品ラインナップ、販売チャネルの再構築に従事している。