ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2021.09.16 THU.

“特別”なモノから“当たり前”へ。日常に溶け込むサステナ素材「THERMOLITE® EcoMade」。

〈ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ(以下、BY)〉で定番展開しているサーマルカットソーは、時代に合わせてアップデートを行いながら幅広いお客さまの支持を得てきたアイテムです。この商品に昨年から「THERMOLITE® EcoMade」という生地が採用されているのをご存知でしょうか? 軽くて暖かいという「THERMOLITE® 」の特徴はそのままに、リサイクル素材を使用して作られた生地。「これを定番商品に取り入れることで、社会貢献への意味合いが強まる」と語るのは、〈BY〉商品部の企画を担当している北川 洋一さんです。しかしながらそれを実行するには、自分たちの意識が高いだけでは叶えることができなかった言います。それはどうしてなのか? 商品開発に至るまでの道のりや想いを北川さんに語ってもらいましょう。

Photo:Yuta Okuyama(Ye)
Text:Yuichiro Tsuji

廃プラスチックやペットボトルを再利用して生まれ変わる。

ーこちらのサーマルカットソーは、〈ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ(以下、BY)〉で定番展開しているアイテムですが、大変人気の商品のようですね。

北川:毎シーズン、時流に合わせてシルエットや素材のマイナーチェンジを繰り返しながら長年展開しているアイテムです。秋や春などの季節には1枚でも様になりますし、寒い時期はニットやスウェットのインナーとしても着られます。そうした使い勝手の良さから、お客さまからも大変ご好評いただいているんです。

ー現在はリサイクル素材である「THERMOLITE® EcoMade」が生地に使用されています。この素材の特徴を教えてください。

北川:「THERMOLITE®」は糸の内部が空洞になっていて、それによって生地が軽量化しているのと、空気の層によって保温性能を持たせているんです。なので、軽くて暖かいのが特徴です。それに加えて「THERMOLITE® EcoMade」の原材料はポリエステルなんですが、廃プラスチックやペットボトルが再利用された、100%リサイクル糸。つまり、その名前にある通り、地球の環境に配慮した素材なんです。

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プラスチックボトルを洗浄し、フレーク状に加工。さらに細かくチップに砕き、POYヤーンという糸になり製品へと生まれ変わる。

ーこの素材を採用した背景には、どんな理由があるんですか?

北川:もともと「THERMOLITE®」を生地に採用していたんですが、その進化版である「THERMOLITE® EcoMade」が開発されたことを知り、昨年からこの生地を使用しています。社会的にもサステナビリティに対する関心が高まる中で、ぼくたちも当事者意識を持ちながら環境問題に対して取り組んでいかなければならないと考えていて、生地の採用を決めました。


定番商品に取り入れることで社会貢献への意味合いが強まる。

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ーこうした素材を取り入れることは簡単なことなのでしょうか?

北川:「THERMOLITE®」自体は既に多くのブランドで使われているので、生地屋さんでも供給体制が整っていましたが、「THERMOLITE® EcoMade」に関してはようやくその環境が整備されてきました。おそらくそれも昨今のサステナビリティへの意識の高まりによる成果だと思います。以前は生地屋さんにサステナブル素材を使いたいと相談しても、難しいと言われることが多かったんです。

ー難しいというのは、どういうことなのでしょうか。

北川:欧米諸国はサステナビリティへの意識が高く、以前からサステナブルな素材は存在していたのですが、それを取り入れると、どうしても価格が高くなってしまうんです。少量生産のアイテムにはフィットするかもしれませんが、今回のように定番アイテムに取り入れるにはハードルが高い状態でした。あとは生地の風合いなども大きく変わってしまい、ナチュラルな表情が損なわれてしまったり、〈BY〉で表現したいこととはかけ離れてしまったり。でも、「THERMOLITE® EcoMade」はそうした懸念点をクリアする生地で、表情もいいですし、適切な価格でお客さまにお届けできるんです。

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ーこのアイテムの生地の混率はコットンが51%で、ポリエステル(THERMOLITE® EcoMade)が49%です。ポリエステルが多くなると、どうしてもスポーティな印象になりがちですが、この生地は風合いがとてもいいですね。

北川:そうですね。ポリエステル100%のサーマルウェアも一般的に多くて、軽量で速乾性の高いアイテムにはなるんですけど、どうしても生地の表情がスポーツライクになってしまいます。しかし、この生地にはスパン糸と呼ばれる繊維長の短い糸が使われているので、よりコットンライクな風合いになっています。それと、どうしてもコットンの配分は増やしたかったんです。というのも、やっぱり肌に触れるものなので、着用したときの肌触りを良くしたかった。それにナチュラルで品のいい表情というのは〈BY〉としても守りたかったので、この混率になりました。

ーシーズンのアイテムではなく、定番商品にサステナブルな素材を取り入れているのもすごく意義を感じます。

北川:意識が高まっているからといってスポットで使用しても、それでは単なるトレンドで終わってしまいますが、定番商品に取り入れることで社会貢献への意味合いが強まります。〈BY〉ではスポットでデザインするアイテムよりも、こうした定番アイテムの多くにリサイクル生地やオーガニックコットンを使用しているんです。お客さまに定番を長くご愛用いただくことで環境への負担も減らすことができますし、そうやってより良い循環が生まれればいいと思います。


いちばん大事なのはお客さまに気に入って着ていただくこと。

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ーここ数年、〈BY〉に限らず、ユナイテッドアローズ社全体でサステナブルなアイテムが増えてきたように思います。商品の企画を担当されている方々は、そうしたムードの高まりを感じていらっしゃるのでしょうか?

北川:そうですね。昨年あたりから特にそのムードは高まってきたように思います。ですが、それは弊社だけではなくて、アパレル業界全体で起こっていることですね。先ほども話したように、生地屋さんでもこうしたリサイクル素材が多く普及してきているんです。サステナビリティという概念が広く浸透してきているのを感じています。

ー北川さんご自身は、企画をされる際にどんなことを意識して商品をデザインしていますか?

北川:〈BY〉らしさを常に考えつつも、お客さまがぼくたちの服を着て、いかに豊かさを感じられるかということを意識しています。ぼくは商品に付加価値をつけることが大事だと思っていて、一見すると普通だけど、実は生地やシルエット、ディテールにこだわった服を作りたいと思っています。例えば今回のサーマルカットソーでいえば、軽くて暖かな高機能素材で、なおかつ環境にも配慮した素材で作られている。そして表情もナチュラルで着やすいというのがポイントです。

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ーサステナブルな素材でこうした普遍的なアイテムを作ることで、環境に対して考えるきっかけが生まれやすくなると思います。

北川:そうですね。今回はそれを伝える下げ札も作っていて、お客さまにとってなにかのきっかけになればうれしいです。もちろん、もともとサステナブル志向だったお客さまにとっても手に取っていただきやすくなると思いますし、時代的にもこれからどんどん環境への意識が必要になってくると思います。だから、ひとりでも多くの方に手に取っていただいて、サステナブルな素材を使っているということを知ってもらいたいですね。

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ー見た目がカッコいいのはもちろんですが、見えない部分へのこだわりも大事ということですね。

北川:そう思います。でも、いちばん大事なのはそのアイテムをお客さまに気に入って着ていただくこと。それがぼくたちにとって、最高に嬉しいことなんです。捨てずに長く着るというのがいちばんサステナブルなことですし、これからもそうした洋服を作れるようにがんばっていきたいと思います。

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PROFILE

北川 洋一

BY本部 メンズ商品部 企画生産課 ビューティ&ユースデザイナー。2016年入社.。以来、BYオリジナル製品の企画を担当、WEB限定のオリジナル製品の企画も兼務している。

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