ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2017.10.13 FRI.

ビューティ&ユース ユナイテッドアローズの新しいモノ作りの試み。
セールスパーソンが考える、お客さまのための商品とは?

お客さまの接客を担当するセールスパーソンたちが商品を考案したらどうなるのか? 接客を通して伝わる要望や、「ココがこうだったらもっと人気が出るはずなのに」という日々の気持ちを商品に反映させたら? そんな想いを形にした商品が今〈ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ〉の店頭に並んでいます。今シーズンより始動したこの取り組みは、セールスパーソンを中心に、商品をデザインする企画、MD、生産、プレス等が一丸となって、お客さまの心に響く商品を作ろうというもの。今回、プロジェクトのメンバーである山口宏さんと馬場絵里子さんに、どんな気概を持ってこのプロジェクトに参加しているのか? その新しい試みについて伺いました。

photo:Kazunobu Yamada / Takeshi Wakabayashi
text:Yuichiro Tsuji

セールスパーソンが商品をプロデュースするという新しい試み。

ー今回のプロジェクトについて、具体的にどのように関わったか教えてください。

馬場:お客さまに幅広く支持される商品を作るというのが今回の目的です。アイテムの考案や、ディテールの提案、できあがったサンプルのチェックに至るまでを、私たち店頭スタッフがお客さまの目線になってアイデアを出し合い、商品を作りあげました。

山口:私たちの声を反映させて商品を作ることはこれまでもやっていました。ただ、それはあくまでアドバイス的なものだったんです。今回はぼくたちも実際に商品の企画に立ち会って、ゼロからモノづくりを経験しました。それがこれまでとは大きく違う点ですね。

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ープロジェクトに参加されたスタッフの方々は他にもいらっしゃるんですか?

馬場:そうですね。今回は関東のお店のスタッフが中心に構成されていました。私はご家族連れのお客さまが多くご来店されるお店にいますが、他にもOLのお客さまが多いお店や、流行に敏感なお客さまがよくご来店される路面店など異なる客層の店舗からメンバーが選ばれているんです。

ーメンバーに選ばれたときの気持ちはどんなものでしたか?

山口:大変な役目になるであろうことは予想がつきました。だから気持ちが引き締まったというか、いいものを作ろうという想いがおのずと強くなりました。

馬場:初めてのことだったので、当然不安もありました…。ただ、やっぱり山口さんと同じように「いいものを作ろう」という気持ちのほうが先行していたというか。ワクワクのほうが大きかったです。

ー実際の商品づくりのプロセスについて教えてください。

馬場:ある程度、大枠のテーマのようなものが事前に設定されているんです。例えば、ニット、アウターといったように、アイテムはあらかじめ決まっていて、細かなデザインや仕様を私たちが決めていくというやり方で進みました。

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山口:最初のミーティングである程度方向性のようなものを決めました。ターゲットとなるお客さま層や、アイテムのイメージを言葉で共有して、それを一度お店に持ち帰ります。今度は、お店のメンバーの意見を吸い取りながら、作りたい商品のイメージを具体的に固めていきます。それを次のミーティングで企画チームにプレゼンするんです。スタッフみんなでひとつのアイテムに対して意見を伝え合って、それをまとめ、サンプルを作って、出来上がったサンプルをベースに微調整を重ねて。

馬場:実際に商品ができるまで約半年かかりました。

ーなるほど。参加されているメンバーそれぞれの意見が集まると、まとめるのは大変そうですね。

山口:そうなんです。お店の立地や大きさによって出てくる意見が変わるので、それをまとめるのが難しかったですね。

馬場:それぞれの主張が出るのは当たり前のこと。ただ、みんな共通しているのは、「お客さまに喜んでいただきたい」という気持ちです。いろんなアイデアが出て、それをひとつに絞らないといけないときは、歩みを止めて全体を見渡すことをみんなで意識しました。そして、「このアイテムはどんなお客さまに向けて作ろうとしているのか」ということを再確認して、意見を摺り合わせていくんです。

山口:たくさんのアイデアが出るときはいいのですが、むしろ出ないときのほうが不安でした…。自分たちが好きなものに対しては活発なんですが、普段接することが少ないアイテムに関しては自信を持って発言することができなくなってしまうんです。

ーそんなときはどうされるんですか?

山口:企画チームがヒントをくれます。例えば今回ボアのスウェットを作ったんですが、最初のミーティングで決めた方向性に合わせて似た商品を実際に現場に持って来てくれるんです。それでアイテムを見ながら「ボアのボリュームを抑え気味にしたほうがいい」とか、「サイズがもっと大きい方がいい」といった意見を出し合えるようになって。お互いにサポートし合いながらできたのがよかったですね。


判断基準はお客さまに喜んでいただけるかどうか。

ープロジェクトが進んでいくなかで大事にしていたことはありますか?

山口:ぼくは少数意見にもしっかり耳を傾けるようにしていました。大多数の人が納得しているからといって盲目的に「これで大丈夫」と確信してしまうのは都合が良すぎるかな、と。まずは全員の意見に耳を傾けて、それらのアイデアをフラットな視点で吟味することを心掛けました。各店の意見はお客さまの声でもありますから、そこにしっかりと目を向けないとダメだと思ったんです。

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馬場:「お客さまのために」という気持ちは全員に共通するものだったと思います。とはいえ、ああしたい、こうしたいという意見があっても、洋服作りのプロからすれば実現不可能なことも多々ありました。私たちはあくまで店頭のスタッフなので、デザインに関しては素人。お客さまの声を具現化するのは簡単なことではなかったですね。

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ー具体的にはどういったところが難しかったでしょうか?

馬場:着心地を重視すると、シルエットのバランスが悪くなってしまったり…。またその逆もあったりして…。

山口:洋服はやっぱりいろんな要素が集合して成立しているんだと再認識しましたね。デザインだけではダメなんです。着心地や品質についても考えないと魅力的なものはできない。

ー問題はどうクリアにしていったのでしょうか。

馬場:最終的にはその商品を着てほしいお客さまのイメージをみんなで共有して、バランスの折り合いをつけていきました。やっぱり頼れるのはお客さまなんです。どんなことがあっても。

ーミーティングでは実際にサンプルに袖を通して、着心地やデザイン、ポケットの深さまでチェックされていましたね。

馬場:店頭に商品が入ったときに試着をしてチェックをするように、それぞれの具合を確かめていました。そのときはまだサンプルの段階なので修正が可能でした。だから細かく確認をすればする程、品質の向上に繋がっていきます。

ーなるほど。店頭での試着よりも入念にチェックされたわけですね。

馬場:そうですね。ウィメンズではボアのコートを作ったのですが、サンプルを試着したときにポケットへ手を入れたら、ボアがかさばってしまったんです。だからポケットのスリットを広めに設定して、手を入れやすくしました。そういう風に修正できたのはよかったですね。


手探りでの進行。でも反応は上々。

ーこの取り組みは今回が初めて。実際に参加されてどんなことを感じましたか?

山口:このアイデアは正しいのか、ひょっとしたら間違っているんじゃないのか、とか。自分たちの意見を伝えることや、イメージを共有することの難しさを感じました。

馬場:そうですよね。私も商品を作ることの難しさを痛感しました。

山口:とはいえ今回初めての試みだったので、よくよく考えればそういった悩みがでるのは当たり前のことなんですよね。最初は手探りでしたが、ミーティングを重ねるごとに目指すべき方向へ進んでいる感触を得ることができました。

馬場:次はもっとコミュニケーションが密になって、さらにいいものができると思います。私たちも洋服作りを勉強することができましたし、もっと精度の高いものができるんじゃないかと。そしてお客さまの声をベースに新しい提案をどんどんしていきたいですね。

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山口:かといって今回作ったアイテムもベストを尽くしましたし、いいものができあがった実感があります。実際に店頭での反応も上々なんです。まずは今お店に並んでいる商品に袖を通していただいて、使い勝手のよさを実感していただけたらうれしいです。

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