ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

数字で振り返る、ユナイテッドアローズのサステナビリティ活動。4年目を迎える「SARROWS」定点観測の意義。

ウツワ

2025.08.21

数字で振り返る、ユナイテッドアローズのサステナビリティ活動。4年目を迎える「SARROWS」定点観測の意義。

地球のため、社会のためにできることを明文化し、ゴールを掲げて活動を進めることは、企業の必須の取り組みとなりました。ユナイテッドアローズ(以下、UA)社が取り組むサステナビリティ活動「SARROWS」も今年で4年目を迎え、着実な歩みとなって足跡を残しつつあります。そんななか、今年度はCO2削減に関する大幅な改善が見られるなど、さまざまな動きが出てきています。どんな施策により、どのような進捗があったのか。サステナビリティ推進部の部長 玉井 菜緒さんに、1年間の振り返りと今後の展望を伺います。

Photo:Yuco Nakamura
Text:Maho Honjo

3年間で、サステナビリティ活動が社会に浸透していることを実感。

−−「SARROWS」の活動がスタートしたのが、2022年8月のことでした。3年間の取り組みを経て、今感じていることを教えてください。

まず、3年前と今とで社会的に大きく変わったことがあります。それが人々のサステナビリティ活動に対する意識です。興味と関心をもち、行動を起こすこと自体が特別なことではなくなっていると実感しています。たとえば、不要となった衣料品を回収して、さまざまな形でリユースやリサイクルにつなげる「UA RECYCLE ACTION」は、多くのお客さまに認知され、評価されるようになりました。

一方、上場企業としての責任が増しているのも事実です。「どんな活動をしているのか」に加えて「その活動が企業の経済的成長にどうつながるのか」の説明を求められる場面も増えてきました。「SARROWS」に期待される内容がアップデートされていると感じています。

なので今期は、これまでの3年間の活動を振り返る1年にしようと思っています。2030年のゴールに向けて見直すべき数値目標はないか、新しい指標を設ける必要はないか等検討していきます。また、それぞれの活動と企業価値向上のつながりを見つめなおす作業にも注力していきたいと思っています。

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−−明確なゴールを設定しながらも、人々の社会的意識にともなって微修正を繰り返していくのが「SARROWS」ということですね。では、2024年の実績報告を伺っていきたいと思います。よい点悪い点、それぞれをどのように捉えていますか?

よい点として挙げられるのが、「Circularity 循環するファッション」の「繊維製品廃棄率」と「商品廃棄率」です。「繊維製品廃棄率」は0.00%が目標数値ですが、0.01%まで近づけることができました。「商品廃棄率」は0.10%という目標数値を達成しています。それでも昨年の0.08%に比べると0.02ポイントの悪化という側面もあり、数値達成に満足することなく、変動を見据えていきたいと思います。

一方、改善が必要なのが、「Carbon Neutrality カーボンニュートラルな世界へ」のなかでも「CO2削減 スコープ3」です。目標数値の15.0%削減まで、昨年は13.1%削減に到達したにもかかわらず、今季は2.8%増加という大幅なビハインドとなりました。

「スコープ3」はサプライチェーン、UA社の事業活動に関連する他社のCO2排出です。事業の成長とともに増加傾向となるカテゴリーもあります。スコープ1,2(自社のCO2排出)と比べると算定方法が複雑なのと、削減に向けては他社との連携が前提となるため、詳細を分析して、対策を検討していきたいと考えています。

昨年に引き続き、商品廃棄率は数値目標を達成。

−−では、今期の「Circularity 循環するファッション」について、具体的に教えてください。

先ほど挙げた「繊維製品廃棄率」が0.01%まで到達できたのは、繊維製品の反毛リサイクルと再生製品の需要が見込まれていることに起因しています。家庭ごみと同じで、丁寧な分別により資源として活用していただくことが可能です。引き続き精度を上げて、廃棄率0.00%達成を目指していきたいと思います。一方で、非繊維製品のリサイクルは課題となっています。

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「商品廃棄率」の目標達成には「適量生産、適量調達、適量販売」が基本で、そのうえでどうしても廃棄品が出てしまった場合は、一つひとつのアイテムに対して丁寧な分別と、平行して新しいリサイクル技術に常にアンテナを張っておくなど、一見地味ではあるものの確実に効果が上がる作業を続けて、尽力していきます。

「環境配慮商品の構成比」も伸びつつあって、やや微増といったところです。より一層推進するために、ストアブランドごとに環境配慮素材の使用状況を分析しています。また、ボタンやファスナー等副資材の環境配慮製品も増えているので、商品調達部門への情報提供や社内基準の詳細化も試みている最中です。

再生可能エネルギー使用により、CO2排出の大幅削減へ。

−−引き続き、「Carbon Neutrality カーボンニュートラルな世界へ」を見ていきたいと思います。

「CO2削減 スコープ1.2」においては、目標値の30.0%削減を上回って、32.5%削減を達成することができました。これは、UA社の出店先である複数の商業施設が再生可能エネルギー使用に切り替えたことが大きく影響しています。これまで複数の商業施設オーナーさまと積極的に意見交換を続けてきましたが、お互いにCO2削減を目指すという方向性の一致が得られていたことも関係しているのではと、喜ばしい気持ちです。これからも業界を越えた横のつながりを大切にして、コミュニケーションをとっていきたいと思います。

また、今年の3月に実施した本部オフィス移転に際しても、再生可能エネルギーを採用している場所を選ぶというリクエストを出し、その条件を満たす場所に移転したことで、数値への貢献が叶っています。ほかにも、新規店舗は基本的にすべての照明がLED仕様です。これは以前から行なっていることですが、引き続きこの設定をデフォルトにしていきます。

−−新しい本部オフィスのエレベーターでは、「SARROWS」のメッセージを読むことができるのですね。

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「SARROWS」の印象的なブルーのロゴとともに、「ユナイテッドアローズは国際的枠組みであるパリ協定に沿ってカーボンニュートラルな世界を目指す」という文言と、「2030年までに再生可能エネルギーを50%導入する」というターゲットを、それぞれ英文で記載しています。エレベータに乗るという日々のルーティンで「Carbon Neutrality カーボンニュートラルな世界へ」を意識してもらいたいと考えているのです。

−−本部オフィスを移転したという話がありましたが、「Circularity 循環するファッション」の一環として、1階に「SARROWS」をテーマにしたお店がオープンしたと聞いています。その詳細を教えてください。

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それが「UNITED ARROWS LTD. STORE(ユナイテッドアローズ エルティーディー ストア)」です。生産や流通の過程で、なんらかの理由により傷がついたり基準から外れたりすることで規格外となってしまう商品があります。その規格外品と、それらを丁寧に修理したリペア品、開発段階で制作されるサンプル品に、新たな背景やストーリーを吹き込んでお客様のもとへお届けしようというのが狙いです。「循環するファッション」そのものを体感してもらえる場になるので、ぜひ立ち寄っていただければと思います。

第三者機関による、環境情報開示システムで最高評価を取得。

−−「Carbon Neutrality カーボンニュートラルな世界へ」に関しては、国際的な非営利団体CDPが実施した2024年の「サプライヤー・エンゲージメント評価」において、最高評価の「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」に初選定されたというニュースもあります。

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CDPとは、環境情報開示システムを運営するグローバルな非営利団体です。環境課題に関心が高い世界の機関投資家と連携して、世界中の約24,000社を対象に調査を行っています。その調査リストにUA社が回答し、情報開示を行なった結果、評価をいただきました。
ちなみに「サプライヤー・エンゲージメント評価」とは、サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量削減の課題に対して、どのようにサプライヤーと協働して取り組んでいるかを評価するもの。そのうち、最高評価を受けた企業が「サプライヤーエンゲージメント・リーダー」に選定されます。

なおUA社は、「気候変動」分野でマネジメントレベルの「B」評価、「水セキュリティ」分野でリーダーシップレベルの「Aマイナス」評価を獲得しています。今後も情報開示を適切に進めていくことで、企業価値を高めることを強く意識していきます。

アクションが成長へと繋がることを、明文化していきたい。

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−−では最後に、今後をどう見据えているのか、その課題と展望を教えてください。

冒頭で述べたとおりで、「SARROWS」というサステナビリティ活動が浸透するにつれて、それが企業成長とどうつながるのかを問われる場面が増えてきました。そのことをより具体的に明文化していきたい、これが今後の課題のひとつです。

これは社外的な対策のようでいて、社内スタッフに向けてのより強いメッセージにもなると考えています。というのも「何のためにやっているのか」「何につながるのか」を理解することで一人ひとりの納得感が増し、よりアクションが根づいていくと思うからです。

また、「Humanity 健やかに働く、暮らす」の「従業員エンゲージメントスコア」「従業員意識調査 肯定的回答率」は、前年度からビハインドではあるものの、中間目標値においてはともにクリアしました。UA社が目指す未来像を具体的に提示するとともに、従業員意識調査を今後も続けていきます。働き方が多様化するにつれて、人々の就労観にも変化が見られるため、意識調査のもと、効果的な人事施策を検討していきます。

持続可能な地球と社会に向けて、UA社が掲げた明確なゴール。そこに向かってどう推進するのが効果的なのか、4年目にして道筋がより具体的に見えてきました。今後もさらなるブラッシュアップを続けていきます。

PROFILE

玉井 菜緒

玉井 菜緒

1999年、株式会社ユナイテッドアローズに入社。情報システム部門にてコミュニケーションツールの企画・運用を担当後、2004年より同社の社会・環境活動の推進に従事する。同分野に携わって21年目で、現職はサステナビリティ推進部 部長。

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