
ウツワ
2024.07.11
Ryu Ambeが考える、アートで地元と繋がる大切さ。
自らのローカルで活動し続けているファインアーティスト、Ryu Ambeさん。Ambeさんが描くカートゥーン調のキャラクターはポップでいて、どこかシニカルな表現が魅力的。街やホテルの壁画などから立体物にまで自分の絵を表現されています。
そんなRyu Ambeさんが、ローカルコミュニケーションを大切にしている〈California General Store(以下、CGS)〉とコラボレーションし、Tシャツなどのアパレルグッズをはじめ、アートの展示などを含むイベントを開催します。このコラボでAmbeさんがどんなデザインをどういう想いで表現したのか。またルーツにはどんなカルチャーがあるのかお話を伺いました。
Photo: Takehiro Sakashita
Text: Ryo Tajima(DMRT)
茅ヶ崎にいたから壁画を描きたいと思った。
2016年に、茅ヶ崎のマービスタガーデンで開催した個展がきっかけです。その前から絵が好きで趣味として描き続けていて、別の仕事をしながら絵をSNSにアップしていたんです。そこで自分の作品を見てくれた方が徐々にお仕事をくれるようになっていった流れがあります。
ーいつ頃から自分の絵をSNSで発表するようになっていったのでしょうか?
2011、12年頃だったと思います。最初はFacebookでアップしていたのですが、次第にInstagramもアップするようになり、なんとなくアーティストとしての活動が始まりました。当初は作家を本格的に目指していったわけでもなかったんです。
そうですね。高校の頃はデザイン美術コースに通っていたんですけど、デッサン力があったわけでもないですし、周りには自分よりも熱心にやっている人がいっぱいいたので、将来は絵の仕事に就くんだって決心していたわけでもありませんでした。でも、卒業後に別の仕事をしながらも、気づいたら絵を描いている自分がいて、そこで本当に絵が好きなんだってことを自覚したんです。そこから絵を模写したりして見聞を広げながら、どうやったら面白い絵になるのかを考えながらやっています。
ー作風についても教えていただきたいのですが、アメリカ西海岸の雰囲気が感じられ、カートゥーン調のキャラクターが魅力的です。この辺りのカルチャーなどはお好きですか?
はい。『トムとジェリー』や『ルーニー・テューンズ 』(バッグス・バニーなど)とか、カートゥーンが大好きで、幼い頃からチラシの裏に鉛筆で描いたりしていました。CMを一時停止してキャラクターを模写したり。そのように意識的に真似していた背景があるので、今も自然とその世界観が絵に現れていると思います。
Ambeさんのアイディアを書き溜めているメモ帳。作品を作る際に見返すことでイメージが湧いてくるそう。
やっぱり壁画の存在が大きかったです。いろんなアーティストが描いてきた壁画を見てきて、絵があることで町に彩りが生まれるんだなとか。何もない無彩色の空間にちゃんとした絵がいきなり存在するということ自体がカッコいいと感じたんです。それで、自分も壁画を描きたいと思うようになっていきました。日本には絵を描きたくなる壁がたくさんあるので、どんどん埋めていきたいんですよね。それが僕の目標で今後やっていきたいことです。
ー壁画に興味を持ったのは、何かそういう出会いがあったんですか?
そこは、地元・茅ヶ崎の文化が大きいかもしれないです。この辺りには個人経営でお店をやっている人が多くて、例えば「僕、絵を描いているんですけど、壁に描かせてくれないですか?」ってお願いをしたらOKをくれたりして。その絵を見た別のお店の人が連絡をくれたり。そういう地元のコミュニケーションを通じて町の中に僕が絵が点在し始めたんです。
Ambeさんの手がけた壁画。茅ケ崎駅からakaneya galleryまで続く道には多くのAmbeさんのアートを見ることができる。
ロケーションがいいですよね。自然といつでも触れ合える環境というのは大きいです。特に海が近いというのは、自分の生き方やアティチュードに大きな影響をもらっています。僕は自由に自分らしく生きていこうとモチベーションを常に持って生きていくことを大事にしているんですけど、海で何もせずぼーっとしている間に、何かを吸収しているんだろうなって思いますね。
ポップな表現を貫くことが自分らしさに繋がる。
2022年8月にオープンしたギャラリーで、オリジナルグッズや1点もののプロダクトを販売しています。月に1回飾るアート作品を変えたりして、いつ来ても楽しい空間になるようにしていますね。
ー立体作品もあって実に楽しい空間ですね。Ambeさんのアートに間近で触れられるのもポイントです。ちなみに作品を描くうえでの、こだわりはありますか?
ポップ、キュート、シニカルをコンセプトにしつつ、特にポップである点はどの作品にも入れようと思っています。そこが自分らしさに繋がると思うので。あとは、コラボ相手によったり、その都度シチュエーションに合ったものを表現しています。
描く立場として考えると、出来上がった壁画を見ると嬉しくなるんです。自分の存在を残していくような感覚があって自信にも繋がります。見る側の立場としては、壁画は年齢問わず無意識的に触れることができるアートじゃないですか。小学生低学年の子供が見て「あれって何だろう?」と思っていたものが大人になるにつれてアートだって気づいたり。自分も小学生の頃は友達と「〇〇の絵の前で待ち合わせね」なんて約束をして遊びに行ったりしていましたからね。そんな風に、町に溶け込んでランドマーク的な存在になったりするのが面白い点だと思います。
サーフだけではなく自分らしさをどう落とし込むか。
以前一緒にお仕事をした方が繋いでくださって、一緒にお話していく中で何かを一緒にやりましょうっていうことになったんです。そこで、アパレルもやりつつ、展示などアートも体験できるイベントを開催できたらいいねってお話ししています。
ープロジェクトを進めるにあたってどんなことを考えられたんですか?
〈CGS〉と自分のコラボレーションで想像しやすいのは、海やサーフィンなど波乗りのカルチャーだと思います。実際に最初にワードとして出てきたんですけど、〈CGS〉がサーフカルチャーに近いことは誰もが知っていることじゃないですか。そこに、自分のオリジナリティをどう落とし込むか、というのが今回のコラボレーションの意義だと考えていて、普段から描いているモチーフなどを取り入れてデザインしていこうと思ったんです。


はい。でも、完全にサーフを無視するのも不自然かなと思っていて、バンダナにはサーフィンをしている様子を描いています。これはインドネシアのロンボク島にサーフィンしに行ったときに描いたもので、子供のサーフスクールの様子を描いたんです。初めてボードに乗る子が背中を押されて海に出て、ちょっとアンバランスな姿勢になりつつも、本人は初めて体験するサーフィンを楽しんでいる感じを描きました。
このフラワーモチーフのキャラクターをシルクスクリーンプリントのポスターを展示しようかと考えています。1点ごとにナンバリングしているんですよ。油性プリントでやっているんですがムラが出ていて、そこが面白いかなと。その他にも外装的な部分でライブペイントっぽいことをやるかもしれません。
世の中にトピックとして上がらない社会問題だったりを風刺するものを自分のアートで表現したいと思います。実際に起こっている事実をポップなものに昇華して自分らしい絵にしたら面白いものができそうじゃないかって思っているんですけど、それをどうやって形にするのかは、まだ模索中ですね。アーティストというのは、そういう社会風刺を表現する役割を担っていると思うので、誰かを癒すのも大切なんだけど、何らかの共感を生むようなものを表現したいと思います。
INFORMATION
PROFILE

RYU AMBE
ファインアーティスト。1989年6月生まれ。ポップ、キュート、シニカル、などをキーワードとした表現を通し活動している。オリジナリティ溢れる色とキャラクターで、これまで数々のアパレルブランドや音楽フェスなどとコラボーレーションをしたり、地元茅ヶ崎でのストリートアートが話題となり雄三ストリートやサザンストリート等街中至る所に壁画アートが描かれている。ライフワークとして、気になる街に住むように旅をしオリジナル作品「TRIP DIARY ZINE」を発表している。