ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2022.09.30 FRI.

再生プラスチックを使ってサングラスをつくる。
「Zoff」と「UNITED ARROWS」の、地球とファッションをつなぐプロジェクト。

2021年から、〈Zoff〉と〈ユナイテッドアローズ〉のコラボレーションプロジェクトがスタートしていることをご存知でしょうか。「MEET THE NEW ME ― 新しい自分にしか見えない景色がある。」をコンセプトに、メガネを“ツール”ではなく“ファッション”の一部として捉え、メガネのある上質なライフスタイルを提案してきました。今回は、〈Zoff〉が推進する“See Blue Project”による、再生プラスチックを素材の一部に使ったシリーズ「See Blue #14」のコラボレーションに注目。〈Zoff〉の商品戦略本部 本部長の高橋 和司さんと、〈ユナイテッドアローズ〉デザイナー 青木 義彦さんに、再生プラスチックを使う意義、さらにこだわり抜いたデザインの詳細まで、じっくりお話を伺いました。

Photo:Kosuke Matsuki
Text:Maho Honjo

若狭湾に漂着したペットボトルを再生プラスチック材の一部に。
新しいフレームの材料として再活用。

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一再生プラスチックから生まれたメガネと聞いて、すごく驚きました。これは、〈Zoff〉さんが推進している「See Blue Project」の一環ということですが、このプロジェクトが立ち上がったきっかけを教えてください。

高橋:今、地球や社会はさまざまな課題を抱えていて、企業としてそれらに取り組むことは必須、そして急務とされています。環境問題や社会課題、それらを包括するSDGsにどう向き合い、どんな行動を起こしていくのか。その取り組みを考えていくのが、この「See Blue Project」です。構想自体はずっとあったものの、企業活動としてアクションを起こすのか、アイウェアメーカーとしてものづくりに落とし込むのか、それとも雇用など社会問題に寄与するのか…。何からどう取り組むべきなのか、ずっと考え続けていました。そんなとき、再生材に関するいい出合いがあり、「再生材を使ってメガネをつくる」プロジェクトをスタートさせることになったのです。

一そこからから生まれたのが、今回のコラボレーションサングラス「Zoff|UNITED ARROWS See Blue #14」なのですね。

高橋:「Blue」は、海や大気など地球を表す色であり、私たち〈Zoff〉のブランドカラーでもあります。実際に今回誕生したコラボレーションサングラスにも、若狭湾の海岸に流れ着いたペットボトルなどを原料にした、再生プラスチック材を使用しています。

青木:若狭湾のある福井県鯖江市といえば、日本が世界に誇るメガネの一大生産地。工場があって、資料館があって、メガネの文化と歴史が街全体に根付いています。そこが原料のスタートとなるのは、印象深いストーリーですよね。

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(右)レンズはブルーグレーとグリーンの2色展開。(左)レンズはブルーとグレーの2色展開。「ブルーグレーは清潔感と透明感を醸し出します」(青木)

一実際にペットボトルからどのような工程を経てフレームが生まれているのか、原料の生産背景や加工工程を教えてください。

高橋:ペットボトルを原料にした再生プラスチック材は、かなり大変な作業を必要とします。まず「1、捨てられたペットボトルを集める」。ひと口にペットボトルと言っても色つきのものはNGで、使えるのは透明なボトルのみ。その仕分け作業も発生するのです。次が「2、きれいに洗う」。汚れなどの混合物が混ざってしまうと、折れやすくなるなど直接品質に響くので、かなり丁寧な洗浄が必要となります。そして「3、粉砕して溶かす」。さらに「4、再生材に加工する」。溶かしたものを加工し、メガネとして最適な状態に加工します。そうして最後「5、フレームに成形して完成」。ようやくここで完成に至るのです。

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    「1、捨てられたペットボトルを集める」。地元の住人や学生、環境団体の方々の協力を得て、若狭湾のゴミを拾い、再生材として使用可能なペットボトルの仕分けを行う。※2022年6月26日実施のビーチクリーンの様子です。(この日に拾われたペットボトルは今回のサングラスに使用されておりません)
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    「2、きれいに洗う」キャップを外し、ラベルを剥がし、手作業でていねいに汚れを取り除く。※2022年6月26日実施のビーチクリーンの様子です。(この日に拾われたペットボトルは今回のサングラスに使用されておりません)
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    「3、粉砕して溶かす」きれいに洗浄した透明のペットボトルを細かく粉砕して、加工しやすい状態に。
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    「4、再生材に加工する」粉砕したものを加工し、再生材へ。

青木:原料の生産背景からフレームの加工過程まで、ここまで責任を負っているのは本当にすごいことですよね。ものづくりの業界でもSDGsへの取り組みは始まっていますが、「再生材を使っています」「地球に還る素材を使っています」といっても、実はわずかなパーセンテージに過ぎないこともあるとか。同じ志をもつ〈Zoff〉さんとコラボレートすることで、私たちもいい刺激を受けています。


シンプルなデザインにカラーレンズを合わせて
ベーシック、かつトレンド感のある仕上がりに。

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一では、コラボレーションしたサングラスのデザインのこだわりをお伺いしたいです。

青木:今回は「再生プラスチックを使う」と聞いて、ならば〈ユナイテッドアローズ〉はどんな視点で取り組むのか、我々のフィルターを通したらどんなものができるのか、そのことをじっくりと考えました。そこで、フレームはすべて黒。デザインは3型。それぞれにカラーレンズを2色ずつ展開した計6種類という、潔いラインナップになりました。おそらくメガネを買い求める人は、再生材を使っているからではなく、素敵なデザインだから、かけ心地がいいから、という理由で選ぶと思うのです。特に我々はメガネをファッションアイテムと考えているので、着こなしを格上げするものを提供したいという気持ちが強くありました。そこをベースにした上で、地球環境を考えたときに大切なのが「長く使ってもらうこと」。私たちが得意とするトラッドマインドを極めた、究極にシンプルなデザイン3型に落とし込みました。そして今回は付属品もすべて素材を見直して、メガネケースは60%再生紙を使用。メガネ拭きを兼ねた巾着ケースは100%再生繊維を使用したものにしました。

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一確かに〈ユナイテッドアローズ〉らしい、オーセンティックなデザインに心惹かれます。そこに淡いカラーレンズを採用して、サングラスに仕上げているのが印象的です。

青木:この数年で私たちを取り巻く環境は激変しました。特に顔まわりは、マスクの存在をなしに語ることはできません。では、マスクとフィットするメガネとは何か。そう考えたとき、ほんの少しレンズにカラーが入っていることで、パッと華やいだ印象になる。顔半分がマスクで隠れていても「今日の自分、ちょっといい感じだな」なんて思える。フレームを黒一色にするならなおさら、今こそ淡いカラーレンズのサングラスに仕上げるのがベストだと考えたのです。

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レンズはブルーグレーとライトブラウンの2色。「ライトブラウンは、どこかメンズライクな印象に仕立ててくれます」(青木)

高橋:最初に「フレームは黒だけ。レンズのカラーを変える」と聞いて、大丈夫かな、と思ったんです(笑)。でも青木さんは、ファッションの奥に社会を見据えているんですよね。その視野の広さ、そして深さには毎回感服させられます。今回もデザインで普遍性を、カラーレンズで時代性を、それぞれ見事に表現した逸品に仕上がっていて、完成品を実際にかけたときに「これは参った!」と思いました。

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    マットなブラックフレームにゴールドの金具をあしらって、上質なアクセントに。
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    「See Blue #14」と「UNITED ARROWS」のダブルネームが刻印されている。

一さらに、つけ心地がなめらかで、かけているストレスが全くありませんね。

高橋:再生材を使うと、柔らかすぎたりコシがなかったりすることがあるのですが、今回は先ほど話した「4、再生材に加工する」の段階での工程を見直して、“しなやかな強さ”を追求しました。耳から後頭部にかけて頭を包み込むラインを“抱き込み”というのですが、そのカーブをかなり内側に設定しました。これぞ、今回の素材だからこそ出せる、絶妙なカーブ。しなやかなので、柔らかくホールドしてくれるのが特徴です。

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頭部をやさしく包み込むしなやかな「3Dフィットテンプル」で、快適なかけ心地を実現した。


お互い大切にしているのが「お客様を第一に考える」
その共通点を携えて、よりよい未来へ。

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一今回のコラボレーションを経て、お互いに感じたことを教えてください。

高橋:青木さんが素晴らしいのは、ファッションを通じて社会に何ができるのかをつねに考えているところ。「なぜ今このようなアイテムを提案するのか」を、社会的背景を踏まえた上で、丁寧に語ってくれます。「再生材を使っています」というだけではなく、社会潮流を眺め、把握し、未来を見据える…そんな広い視野に切り替えることの大切さを、あらためて教えてもらいました。

青木:嬉しい言葉をありがとうございます(笑)。私が感じたのは、我々と〈Zoff〉さんには大きな共通点があるということ。それこそが「お客さまを見る」。〈ユナイテッドアローズ〉には「すべてはお客さまのためにある」という社是があるのですが、最終的に大切なのは「実際に身につけたお客さまがどう感じるか」。そこを最終地点に、逆算してものづくりをする姿勢が、私たちは一緒なんです。どこに向かっているのか、着地点はどこなのかを共有できるからこそ続いてきたのが、このコラボレーションプロジェクト。この先も何ができるのか、楽しみにしていただきたいと思います。

PROFILE

高橋 和司

1974年東京生まれ。大学卒業後、福井県鯖江市にあるWWをベースとしたメーカーに勤務。デザイナーから始め、米国にてプランナーに転向したのち、国内、仏でOEM営業、デザイン、企画、生産指示等を行った。現在は、メガネブランドZoffを運営する株式会社インターメスティック商品戦略本部にて、企画・生産を両面から推進。

青木 義彦

メンズ商品本部 BY部 クリエイション課 ビューティ&ユース デザイナー。 2003年入社。販売を数年経験後、オフィス商品部部門へ。現在はユナイテッドアローズ/ビューティ&ユース オリジナル製品の雑貨企画を担当。

JP

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