フラテッリ ジャコメッティの靴には個性がある。そして何足も欲しくなる|知っておくべきブランド

フラテッリ ジャコメッティの靴には個性がある。そして何足も欲しくなる|知っておくべきブランド

いくら直幸


目の肥えたシューズマニアや大人のファッション好きを虜にしているイタリアのファクトリーブランド<フラテッリ ジャコメッティ(F.LLI Giacometti)>。超本格にして独創的、ほかの高級靴とは一線を画す無二の存在です。

伝統と現代性が息づくハンドメイド

北イタリア・ベネト州。豊かな自然に囲まれ、世界遺産にも登録されている東アルプスのドロミテ山塊を臨むこの地方では、古くから農作業や登山に向けたハンドメイドシューズが作られてきました。

<フラテッリ ジャコメッティ>は、この地に残る唯一の紳士靴メーカー、ウォレス社が展開するオリジナルブランドです。ルーツは1890年代まで遡り、祖父が開業した小さな靴工房が始まり。1940年代後半に父と2人の弟子へと受け継がれると、高い技術力と堅実な仕事ぶりから大手の生産も請け負うシューメーカーへと発展しました。現在は創業者の孫であり、先代である父から靴作りを学んだジャコメッティ兄弟のもと、伝統を継承しながらモダナイズにも成功。クラシカルにして独創的なハンドメイドシューズを提案しています。

そのブランド名は、イタリア語で “ ジャコメッティ兄弟 ” を意味します。兄弟は経営の傍らで今も現場を取り仕切っており、社長である兄のルイジーノ氏は仕上げライン&品質を管理。弱冠22歳で靴学校のモデリスト(型紙)講師を務めた弟のロベルト氏は縫製などの生産コントロールを担い、多くの腕利き職人を束ねています。

名だたるブランドが絶賛する技術力

<フラテッリ ジャコメッティ>の魅力を語るうえで、前提となるのがファクトリーとしての秀でた実力です。たとえば、防水や屈曲、堅牢性に優れることから作業靴や登山靴に用いられるノルベジェーゼ製法による底付けは、この地域に根付くお家芸。ほかにも、得意とするハンドソーンをはじめ、グッドイヤーやマッケイ、ボロネーゼ、チロレーゼ、チロレーゼマッキャなどなど、あらゆる製法を行っており、モデルごとに最良の製法を使い分けているのが大きな特徴です。
さらに、レザーソールのヒドゥンチャネル仕上げ(底面のレザーを縁に沿って薄く切り剥がし、内側に切れ込みを入れ、その細い溝にステッチを施してソールを縫い留めた後、レザーを伏せ戻してステッチを隠す仕様。歩行による縫製糸の摩耗を防ぐと同時に、底面がスッキリとして気品や高級感が増す)や、モデルによっては半カラス仕上げ(接地面以外の土踏まずをブラックやダークブラウンで着色する仕様。フォーマルシューズに由来し、ドレッシーさや高級感が増す)といったビスポークシューズさながらのディテールも。これらもまた高度な技術を要し、手間隙を惜しまないクラフツマンシップの賜物であり、靴好きの所有欲を高めるポイントになっています。

こうした世界トップクラスのスキルを頼りに、エルメスやグッチ、ラルフ ローレン、そうそうたるラグジュアリーメゾンやショップがシューズの生産を依頼しています。さらに、一流ブランドとの仕事で培われた豊かな経験や柔軟性がまた糧となり、いっそうの品質向上を叶えるとともに、斬新な発想力がもたらされているのです。

ほかにはない種類豊富な希少レザー

そしてブランド最大の個性は、他社を圧倒するレザーのバリエーション。カーフやスエードのようなポピュラーな素材はもちろん、クロコダイルやアリゲーター、カイマンといったワニ革、リザード、アザラシ、オストリッチ、エレファント、カバ、イグアナ、ウナギ……ほかでは滅多に見ることができない希少なエキゾチックレザーでもファンを楽しませています。それを実現しているのが、レザー大国のイタリアを筆頭とする各国の名門タンナー(製革メーカー)との太いパイプ。加えて、ビッグメゾンとの強いコネクションがあるからこそ、極上レザーや変わり種レザーの供給を優先的に受けることができるのです。ライニングにいたるまで上質なレザーが採用されている点も、素材への徹底したこだわり、細部まで妥協なき姿勢を物語っています。

そうした素晴らしいレザー、扱いの難しいマテリアルを最大限に活かしきることができるのも、最高峰のノウハウを有するがゆえ。正統派からマニアックなシューズまで幅広く取り揃え、どれをとっても美しい木型とデザイン、丁寧な仕立てが相まってイタリア靴らしい色気を漂わせます。それでいて同等クオリティのブランドより価格は抑えめ。こうしたファクトリーブランドならではの高いコスパも多くのリピーターを生んでいる理由です。

超本格の革靴メーカーでありながらドレスシューズだけに固執せず、アクの強いデザインやブーツ、サンダル、スニーカーまでを手掛け、独特のフォルムと巧みな素材使いによってカジュアルなスタイリングにも合わせやすい。そのバラエティに富んだラインナップと良好な履き心地も手伝って、2足目・3足目を買い求めるファンが絶えないクセになるブランドなのです。
ファッションライター いくら直幸

ファッションライター いくら直幸

人気アパレルメーカーのPRを経て、1990~2000年代に絶大な影響力を誇ったストリートファッション誌『Boon』の編集者に。現在は『Begin』『OCEANS』をはじめとするメンズ雑誌とウェブマガジンに寄稿するほか、有名ブランドや大手セレクトショップの広告&オウンドメディアなどで活動。また、日本テレビの情報バラエティ番組『ヒルナンデス!』のコーディネート対決コーナーでは審査員も務める。

※掲載している商品は、販売終了によりご購入いただけない場合がございます。あらかじめご了承ください。
12 件

HOT WORDS