金子眼鏡がファッション好きのおメガネに適っている理由|知っておくべきブランド

金子眼鏡がファッション好きのおメガネに適っている理由|知っておくべきブランド

いくら直幸


日本が誇るアイウェアメーカーであり、その名を冠したオリジナルブランドである<金子眼鏡/KANEKO OPTICAL(カネコオプチカル)>。視力の補正具としてだけでなくファッションの視点からも人気の理由や、他社との違いを解説します。

世界3大産地、鯖江メガネの代表格

メガネの聖地と知られる福井県の鯖江市。この地域におけるメガネ作りの歴史は、およそ120年前となる明治時代の後期にまで遡ります。当時、鯖江周辺には取り立てて産業や特産品がなく、庶民の暮らしを支えるのは農業のみ。それも深い雪に閉ざされる冬になると仕事はなくなり、出稼ぎで生計を立てる寒村だったといいます。こうした脆弱な状況を案じたのが、地元の豪農・増永五左衛門(増永眼鏡の創始者)氏でした。彼は農閑期の副業として手内職でのメガネフレーム作りに着目。私財を投じて大阪や東京から職人を招へいし、人々に製造技術を学ばせたのです。

やがてメガネを本業とする者が増え、それぞれが腕を競うように技術を磨いたことで、より高度なノウハウが蓄積されていきました。そして現在、市内には大小を合わせて約600ものメガネ関連の工場が集まり、就業人口の1/6が関係する仕事に従事。街全体が広大なメガネ工場に例えられる地場産業へと発展し、国内の実に96%、世界でも20%ほどのシェアを占めるまでに。高いデザイン力・ブランド力をもつイタリア、低コスト・大量生産で成長した中国と並び、優れた技術力・開発力・品質を武器とする鯖江は、メガネ作りの3大メッカとして日本だけでなく海外にも名を馳せています。

このように圧倒的な国内シェアを誇る鯖江ですが、それでも産業規模は著しく縮小しています。主な要因は、多くの発注元がアジアを中心とする海外へと生産拠点を移しているため。そうした苦境のなか価格競争とは異なるモノ作りを打ち出し、日本を代表するメーカーとなっているのが<金子眼鏡>です。

培われた技術と磨かれた感性を凝縮

同社は1958年にメガネの卸商として創業。'87年にはライセンスビジネスの全盛期だったアイウェア業界にあって、ほかに先駆けてオリジナルブランドを立ち上げます。'90年代の後半からは海外にも本格進出し、メイド イン ジャパンのクオリティで高い評価を獲得したのです。また有名デザイナーズや大手アパレルのオリジナルモデルを手掛ける傍ら、そうそうたるブランドとのコラボレーションも展開。さらには感度の高いショップからの別注も相次ぐなど、ファッションシーンとも深い関係を築き上げてきました。そして2010年、長きにわたって培われたキャリアと磨かれたセンスの集大成たるシグネチャーブランド<金子眼鏡>を満を持してデビューさせます。
金子眼鏡のメガネ
そんな<金子眼鏡>の大きな特徴は生産体制にあります。メガネ作りはパーツごとに別々の工場で製造し、それらをまた別の工場に集めて組み立てる完全分業が効率的であり一般的。しかし同社では、自らが理想とするアイウェアを自らの手で追求するため、鯖江に3つの自社ファクトリーを構えて、ほとんどすべてを内製で完結させているのです。

「バックステージ」と名付けられた第1工場では、アセテートやセルロイドといったプラスチックフレーム&高級なべっ甲フレームを。ここでは商品企画からデザイン、素材の切削・加工・研磨・組み立て・調整にいたるまで、手仕事をメインとした一貫体制が確立されています。デザイナーと現場の作り手がひとつ屋根の下に身を置くことで、分業では伝達しきれない様々をダイレクトに疎通でき、より完成度の高いプロダクトを可能にしているのです。

第2工場となる「グラスワークス」はメタルフレームに特化。その製造にはプラスチックフレームの約4倍となる工程があり、とりわけ高度なスキルと専用の設備が必要です。そこでメタルフレームを得意とする別工場とグループを結び、専門の技術と豊かな経験をもつ熟練たちに頼るとともに、新たな機械を積極的に導入。これによってハイクオリティで精度の高い製品を実現しています。

さらに第3工場の「ベースメント」では、マシンメイドとハンドメイドを融合。一部の工程で最先端のロボットを稼働させ、繊細で重要な工程は職人が担当しています。ロボットによるサポートを受けることで、ヒトにしかできない手仕事がいっそう発揮され、より難しい作業に時間を注ぐことができるのです。ここは鯖江の伝統と職人たちをリスペクトしながら、次代のアイウェア産業の在り方を模索・挑戦しているイノベーティブなファクトリーです。

自社一貫生産で実現する伝統と革新

こうした自社での一貫生産体制は、微妙なニュアンスや意思のコミュニケーションが円滑になり、その過程で生まれるアイデアを取り入れやすく、修正点を改善しやすいといったメリットがあります。分業に比べると生産効率では劣るものの、妥協なきモノ作りを遂行でき、さらなる品質の向上を叶えられるのです。

加えて、前述のようにイチ早くオリジナルブランドに着手することで磨いた個性や提案力といったクリエイティビティ、精力的な海外展開によって世界の潮流を肌で感じ取り、名だたるアパレルとの協業をとおして強化したファッションのアンテナから、ことに国内ではアイウェアのトレンドリーダーとなっています。先人から継承した伝統、未来を切り開く革新、そうした「不易流行(決して変わらない本質を守りながら新しい変化も取り入れる)」の精神に<金子眼鏡>の魅力が詰まっています。
ファッションライター いくら直幸

ファッションライター いくら直幸

人気アパレルメーカーのPRを経て、1990~2000年代に絶大な影響力を誇ったストリートファッション誌『Boon』の編集者に。現在は『Begin』『OCEANS』をはじめとするメンズ雑誌とウェブマガジンに寄稿するほか、有名ブランドや大手セレクトショップの広告&オウンドメディアなどで活動。また、日本テレビの情報バラエティ番組『ヒルナンデス!』のコーディネート対決コーナーでは審査員も務める。

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