ゼロハリバートンは頼もしく美しく、一流にこそ相応しい|知っておくべきブランド

ゼロハリバートンは頼もしく美しく、一流にこそ相応しい|知っておくべきブランド

いくら直幸


アルミ製スーツケース&アタッシェケースの代名詞である米国発の<ゼロハリバートン(ZERO HALLIBURTON)>。創業85周年を迎えた現在も世界中のトラベラーやビジネスパーソンから信頼される、その輝かしい旅路と名場面をプレイバック。

プロテクト至上主義が生んだ機能美

石油産業に携わる実業家だったアール・パルマー・ハリバートン・シニア氏は、国内外を忙しく飛び回る仕事のなか、ある不満を募らせていたといいます。それはバッグの隙間から入り込む砂やホコリ、湿気によって、大切な書類や着替えが汚れたり傷んだりすること。この困りごとにウンザリとしていた彼は、過酷な環境下にあっても荷物を守る堅牢性と、優れた密閉性をもった鞄の製作を決意。最先端の知識と技術を有する航空業界のエンジニアからも協力を仰ぎ、タフかつ軽量なアルミニウム合金を用いたアタッシェケースを完成させたのです。

そのアタッシェケースは、あくまで自分で使うため個人的に開発したもの。ところが、これまでにない機能性と洗練されたデザインを併せ持つそれは同様の悩みを抱えていた友人・知人たちから評判を集め、次々と注文が。かくして本格生産に乗り出すべく、1938年、ロサンゼルス郊外のバーバンクに<ハリバートンケース>社を設立します('52年、当初より製造を担っていたゼロ コーポレーションの傘下となり、'59年にブランド名を<ゼロハリバートン>へと改称。現本社はニューヨーク)。

シェルのアルミ合金には、通常のジュラルミンを上回る高強度を備えるも重量は同等、航空機の機体にも使われる超ジュラルミンを採用。これに熱処理を加えることで、外部からの圧力には1平方メートルあたり440トン、内側からも450kg以上の圧力に耐え得る設計に。また開口部にはゴムのガスケットを施し、防塵・防水・防湿のハイレベルな気密性を実現。パーツにおいても、ヒンジを引き剥がすには180kg以上もの力を要し、ラッチは10,000回以上の開閉が可能という、驚異的に屈強な作りを叶えていました。
ゼロハリバートンのスーツケース
同社の伝統的なディテールである、シェルにあしらわれた2本のプレスラインも単なる装飾ではありません。ダブルリブと呼ばれるそれは、さらに剛性を向上させる工夫であり、外圧や衝撃によるボディの変形と荷物への影響を抑える役割を果たしています。併せて、ソリッドで無機質なルックスに優雅な表情を添える、まさしく機能美なのです。'46年の導入から今日まで変わることのないブランドのアイデンティティであり、<ゼロハリバートン>のアイコンとして認知されています。

逸話と顧客が物語る、実力と魅力

第二次大戦が終わり、アメリカが黄金期を迎え始める頃、ブランドもさらに躍進します。大手企業のエグゼクティブや各国のセレブリティ、様々な分野のプロフェッショナルが愛用するようになり、一流ブランドの地位を確立。数多くの映画にも出演し、機密書類や大金といった重要な荷物を運ぶシーンに登場することで、その用途とイメージが人々に定着していきました。また時に手荒く、時に丁重に扱われる場面をとおして、タフネスとリッチ感を兼ね備えた無二の魅力が映し出されたのです。

そして'69年、あの有名なエピソードによって同社の存在は世界の隅々にまで知れわたります。そう、人類初の月面着陸を成し遂げたアポロ11号への参画です。NASAは、ほかに類を見ないプロテクション性能を誇る<ゼロハリバートン>に目をつけ、月面採取標本格納器の開発を要請。アームストロング船長らとともに宇宙へと旅立ち、月の石を持ち帰る歴史的ミッションを無事に成功させます。しかも月と同じく真空を保ち、大気圏突入や着水時にも中身にダメージを与えなかったそのアルミケースは、内装と開閉部のカスタマイズを除けば当時の市販モデルのまま。このことも商品への信頼を揺るぎないものとし、ブランドの名声をさらに高めました。

また'74年、レバノンの空港にて発生したハイジャック事件では、人質解放後に飛行機が爆破。その残骸から<ゼロハリバートン>のケースが見つかり、中身に損傷はなかったという逸話も。ほかにも、救急医療装置や通信機器といった精密機械を持ち運ぶケース、軍用の特殊ケースの製造を請け負っていることも、堅固な作りと突出したクオリティの証。さらに歴代の米国大統領やヨーロッパの王室、政財界の要人、ハリウッド俳優に大物アーティストなど、そうそうたる顧客の顔ぶれも最高峰のステータス性に大きく貢献しています。

輝き続けるための新機軸と原点回帰

2008年にはアルミケースの高級感やスタイリッシュな佇まいを損なうことなく、いっそう軽量なポリカーボネート素材のタイプも発売。今ではアルミケースと双璧をなす人気シリーズとなっています。以降、ブランドの哲学と美学、卓越したモノ作りを継承しながら、レザーやナイロンのバッグ、アクセサリー、近年はゴルフコレクションでのグッズ&アパレルにもラインナップを拡大。時代のニーズにフィットする多彩なプロダクトを展開し、より幅広いファンを獲得しています。

そして現在では、一部を除くすべての主要製品にて原点のメイド イン USAが完全復活。非日常のトラベルシーンから日々のビジネス、はたまた緑豊かなターフの上にいたるまで、本物志向のユーザーを満足させる強く・美しく・ラグジュアリーなプレミアムラゲージをトータルで取り揃えています。
ファッションライター いくら直幸

ファッションライター いくら直幸

人気アパレルメーカーのPRを経て、1990~2000年代に絶大な影響力を誇ったストリートファッション誌『Boon』の編集者に。現在は『Begin』『OCEANS』をはじめとするメンズ雑誌とウェブマガジンに寄稿するほか、有名ブランドや大手セレクトショップの広告&オウンドメディアなどで活動。また、日本テレビの情報バラエティ番組『ヒルナンデス!』のコーディネート対決コーナーでは審査員も務める。

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