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上質なデッドストック生地が主役の新プロジェクト誕生。 真摯に続ける“ONLY ONE”のモノづくり。

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2023.02.24

上質なデッドストック生地が主役の新プロジェクト誕生。 真摯に続ける“ONLY ONE”のモノづくり。

兵庫県の生地メーカー「植山テキスタイル」と〈ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ(以下BY)〉が協業し、上質なデッドストック生地を使ったプロジェクト〈ONE BEAUTY&YOUTH〉がデビューしました。日本製の生地にこだわり、タグは環境に配慮した素材を使用するなど、随所にこだわりが詰まったアイテムを展開していきます。また、大量生産はせず、店舗により入荷する型も違うなど、“一期一会”な買い物体験にも注目が集まります。今回は「植山テキスタイル」の工場を訪れて、プロジェクトがはじまったきっかけや生産工程、モノづくりへの想いを伺いました。

Photo:Shunya Arai(Yard)
Text:Riho Abe

先染め織物発祥の地、藩州地域で江戸時代から続く「播州織」。

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兵庫県の播州地域。この地域は、200年以上前の江戸時代から「播州織」の産地として、染物に向いている美しい水源とともに発展を遂げていきました。播州織の大きな特徴は、先に糸を染めてから、染め上がった糸で柄を織る「先染め織物」という手法。手間ひまをかける分、自然な風合いや複雑な色柄を表現することができます。世界の老舗メゾンでも、播州織の生地が数多く使われています。

そんな播州地域で織工場を構える「植山テキスタイル」は、1948年に創業し、今年で74年目を迎えます。自社で手掛けるシャツブランド〈SHUTTLE NOTES〉でも知られ、メイドインジャパンの上質な生地づくりを続ける企業。

「播州織の生産工程は、主にデザイン・糸の染色・織布・加工となり、それぞれ分業制で作業を行っています。現在この地域には、大小含めて150社ほど播州織に関わる企業があり、僕たちと同じような織工場は100軒ほど。織工場の他には、糸を染める染工場、糸を織りやすくなるように糊付けして補強する“サイジング”を専門の工場、販売部門だけの会社もあります。僕たちは、自分たちで企画し、生産・販売までを一貫して行っています」とは、植山テキスタイルの代表・植山さん。

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メイドインジャパンのデッドストック生地を主役に、“今の気分”を表現したシャツ。

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生地のデザインから行う植山テキスタイルでは、播州織の各工程を専門とする協力会社とタッグを組んで、素材を行ったり来たりさせながら、生地を完成させていきます。

「最初に生地のデザインを決めて、僕たちが原糸を買ってきます。デザインに応じて、糸づくりから行うこともあります。そして経糸と緯糸を別々の染色工場へ。染まった糸が帰ってきたら、サイジング工場に出します。糸を機械に通すために製織準備を行い、僕たちの工場の機械でガシャガシャと織っていきます。そして最終的な生地を加工場に渡して、仕上げてもらいます」。
細かく分けられた工程の中でも、一番作業時間を必要とするのが織工程だと言います。
「機械を1日フル稼働させて、平均的に約120メートル分。生産性やコスト削減を考えると、同じ柄を1000メートルくらい織って、1反から販売しています。1反は60メートルで、シャツならだいたい30着が取れるくらいの大きさです。もちろん織った生地は、売り切る前提で作っていますが、どうしても余剰が出てきてしまう。UA社とは、長いお付き合いを通して、これまでもさまざまなアイテムを作ってきました。2022年の夏頃、次は何を作ろうか?と話していたとき、“うちのデッドストックの生地を使って何かできないか”、と提案したことがきっかけで、プロジェクトがはじまりました」。

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植山テキスタイルで大切に残してあったデッドストックの生地を主役にしたのが、〈ONE BEAUTY&YOUTH〉のアイテム。今回のお披露目では、1枚でも様になるトラッドなシャツ、3型10アイテムが登場しました。まずBYが生地をピックアップし、人気のシルエットのデザインに落とし込んだシャツです。各型のキャラクターに合う生地をペアリングしています。

そして誕生した〈ONE BEAUTY&YOUTH〉。ネーミングやロゴに込めた想いとは。

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また、店舗ごとにラインナップが異なる商品展開があるのもこのプロジェクトの大きな特徴。

「デッドストックの生地は、過去のアーカイブ。希少価値の高い生地を使って、今のスタイルに合う形で表現したら、ヴィンテージのような感覚で楽しめる。また、本来どの店舗でも同じものが買えることは当たり前の感覚ですが、店舗ごとに違うデザインのものが置いてあったりしたら、面白いなと。一期一会の買い物を楽しんでもらえたらいいなと思っています」。

大量生産ではないモノづくりと一期一会の出会いを楽しみながら、お客様にとってONLY ONEなモノになって欲しいという想いから、“ONE”と名付けられました。また、良質なデッドストックの生地を無駄にしないという前向きな姿勢と、これからのモノづくりにおいて環境に配慮した考えを大事にしたいという想いで、地球が連想できるロゴデザインを採用しています。

モノを生み出す企業として欠かせない、持続可能性を意識した取り組み。

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モノづくりを行う上でもはや避けて通れない、SDGsへの意識。工場として地球環境に配慮することはもちろん、どうしても出てしまう残反の活用方法もユニーク。重機が通る作業スペースや洗面所などの入口には残反を縫い合わせた暖簾が下げられていたり、工場の片隅には、短くカットした残反を展示し工場見学に訪れた学生に提供しているのだとか。また、地域の障害者施設に生地を無償で提供し、ティッシュケースを作ってもらい、それを買い取りノベルティにしたり。地域としての雇用の安定という意味でも企業として貢献していきたいと考えているそう。

「僕たちとお付き合いがある付属屋さんでも、環境への配慮はもはや当たり前になってきています。例えばネームをペットボトルのリサイクルや再生紙から作られたものを使ったり、パックTシャツのビニール袋もバイオ素材の混紡だったり…。もちろん、〈ONE BEAUTY&YOUTH〉のネームタグや下げ札も、エコ素材を使用しています」。

播州地域の産地としての発展と会社としての展望。

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時代に応じて変化を重ねながら、丁寧なモノづくりへの姿勢は創業当時から変わらない「植山テキスタイル」。その生地のクオリティの高さと生産哲学はUA社と共通するものがあると言います。最後に、植山さんに未来への展望を伺いました。

「シャツを着る、というシーンが、年々少なくなっているように思います。播州織の産地としても、工場はどんどん減っていき、業界として縮小傾向にあるのが現状です。僕たちの会社が存続することが、地域の雇用を守り、産業や伝統を守ることにも繋がります。今回のコラボを通して“播州の生地”を少しでも多くの方に手に取っていただき、興味を持ってもらえたら嬉しいです。僕たちだけではやれることにも限界があるので、今後はさまざまな企業とのコラボレーションを積極的に行っていきたいですね。UA社とも、作り手の立場、売り手の立場それぞれができることを精一杯やって、両者が力を合わせてクオリティの高いアイテムを提案したい。今回はシャツでしたけど、ファッションアイテムに限らず、今後もさまざまな商品づくりにチャレンジしていけたらと考えています」。

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PROFILE

株式会社植山テキスタイル

株式会社植山テキスタイル

1948年創業。布帛製造工場よりスタートし国内・海外へ拠点を構えながら、繊維関連及びファッション・ライフスタイル全般の企画・製造を行っている。
https://www.ueyama.net/

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