ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2021.03.18 THU.

地球にも身体にも優しい、「ヒポポタマス」のタオルの魅力。

鮮やかなカラーバリエーションと、肌触りのよさで人気の高い〈ヒポポタマス〉。「新しい生活様式」の提唱により、ライフスタイルの見直しが計られ、日用品の価値に改めて注目が集まるなか、〈ヒポポタマス〉のタオルが強く支持される理由は、よりよいものを生み出したいと邁進する真摯な姿勢と、工場とのたしかな連携、そして地球環境に徹底的に配慮する取り組みにありました。ひとにも、地球にもやさしいものづくり。それが〈ヒポポタマス〉の信念なのです。

Photo:Go Tanabe
Text:Shoko Matsumoto

ブランドの立ち上がりとネーミングに込められた想い。

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ーまずは、ブランド誕生の背景から伺わせてください。

2007年からスタートして、今年で14年目になります。まずブランドを立ち上げる際に、メイド・イン・ジャパンへのこだわりと、カバのロゴだけが存在していたんです。代表が小さい頃から好きだった動物のカバをロゴに使って、長年愛される物づくりをしたいという思いがありました。そこで、〈ヒポポタマス〉のコアアイディアを求めて日本全国を旅していた中で出会ったテーマがタオルでした。日本のもの作りは素晴らしい、特に布製品や糸偏のクラフトマンシップは素晴らしいと改めて気づきました。そして、タオルには高い機能と「モノを贈り合う文化」が日本には存在していた事に可能性を感じました。〈ヒポポタマス〉はタオルのステレオタイプを壊せたんじゃないかと思います。当時、日本のタオルの色といえば生成りや白ばかりで。オーガニックコットンでなくともそのような市場でした。最初それを見たとき、日本のタオルを芸術品にできないか、色のあるテキスタイルにできないかと思ったんです。ベルベットの絨毯のような、芸術品を想起する色のタオルが存在しなかったので、それを実現したいと強く感じて。洋服に関しては、シーズンごとに当然流行があります。しかし我々はそこにあまり左右されたくない、継続してどの時代も使ってもらえるアイテムがいい、なおさら糸偏のものがいいという思いがありました。そこで、タオルに特化することにしたんです。製品化にあたり、オーガニックコットンとエコ素材のバンブーレーヨンを織り交ぜることに加え、安心安全面を追求していった際に知ったことなのですが、実際にカバ自体もすごく肌が弱い生き物なんですね。陸にあがると赤い汗のようなものが出るんですが、あれは肌荒れのようなもので、危険信号なんです。非常にナイーブな動物だったというのも、ブランドを作っていく過程で、点と点が繋がったおもしろいポイントではあります。


安心安全なタオル作り。

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ーヒポポタマスの製品が取得している、「エコテックス®︎スタンダード100」について教えてください。

国際的に認められている、繊維の安全証明になります。350種類以上の有害物質に対して厳しく検査が入り、それらが含まれていないことを証明するものです。〈ヒポポタマス〉はもっとも厳しい基準のクラス1の認証を得ているんですよ。「エコテックス®︎スタンダード100」にはランクがあり、基準値の基準は、肌に近づくにつれ厳しくなります。例としてクラス4の主な対象はカーテン、3はジャケット、2は肌着、1は乳幼児の衣料。一本一本の繊維であったり、一滴の水や染料、織機や検品、物流に関しても、すべてチェックが入るので、クラス1のものは、手にした瞬間から洗濯せずともすぐ使用できるほどなんです。海外では認知が高いのですが、ようやく日本でも聞くようになってきましたね。現代は科学が発達しているので、大量生産のための時間短縮やコスト削減などの利便性を求めることで、化学物質が使用されてしまうことが多くあります。我々の製品は数を多く作れる量産型の生産背景ではなく、1枚1枚に対し、安全と認められた商品だけをお客様に届けています。環境面で問題視されている汚水処理に関しても、バクテリアによる駆除を長時間行って、瀬戸内海に戻せる基準まで浄化しています。そこで海草類が育つほど、汚水処理を徹底的に行っています。


こだわりの素材選び。

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ー素材として使用されているバンブーレーヨンとはどのようなものなのでしょう?

空洞糸なので、良く吸って良く乾くというのが特徴です。ドレスや下着などにも使われる繊細な素材でもあります。竹自体がシルクに近い光沢のある繊維なので、独自の光り方、ツヤがあるんです。竹はメリットばかりでなく、摩擦に弱いところもあるんですが、オーガニックコットンとバランス良く織り合わせることで耐久性もクリアしました。タオルの製造行程上、先染めといって、糸を先に染めて、その後に柄を折り込むことが多いんです。しかし我々は、コットンとバンブーレーヨンをひとつひとつ繊維が表に出るようにジャガード織りしたあと染色します。この方法を後染めというのですが、そうすることで繊維の違いによって同じ色でも濃淡がつくんです。何度も試行錯誤を繰り返すことで、奇跡的にすごくきれいなタオルができ上がりました。また洗濯に耐えうるタオルを作るために、洗いの行程を5時間以上おこなっています。洗いにかけることで強くなり、どんどん風合いが増し、肌触りも良くなっていきますが、吸水性は高いまま。たくさん使い込んで、〈ヒポポタマス〉のタオルのよさを実感してもらいたいですね。


ブランドを象徴する、物語のある色。

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ーブランドの大きな特徴である色について伺わせてください。

〈ヒポポタマス〉のカラーは、印象派の絵画からインスピレーショを受けており、印象派の絵画の柄を色で表現しています。ブランドのデビューカラーとしたのは、パリ生まれパリ育ちである代表が幼い頃にオルセー美術館で目にしたゴッホの名画「星月夜」の夜空です。ひとことでブルーとは言えない、絶妙なニュアンスを表現しました。ほかにもゴーギャンやモネ、マリーアントワネットなどが愛した世界、実際に目にした雄大な自然など、様々な世界観の再現を目指しています。コットン100%だと、色の出方が単調になってしまうんですが、コットンに先ほどお伝えした竹繊維のレーヨンを織り交ぜることで、素材を生かした吸水や発色の違いによる立体感のある霜降り柄のタオルを生み出すことに成功しました。今、定番で展開している11色は、ひとつひとつの色に背景やストーリーがありますし、リミテッドカラーに関しては、ブランドのキーワードでもある「旅、アート」に沿って、色から様々な景色を想像していただけるよう制作に取り組んでいます。今はなかなか気軽に外出することもできないですし、日用品であるタオルを使いながら、少しでも旅の気分というか、豊かな気持ちになれる手助けができたら、という思いもあります。色を決めていく行程自体は、現在はチップなどで単純におこなうこともできると思うんですが、我々は染色師の方々とイメージを共有し何度も打ち合わせをおこなって、より感度の高いアイテムを生み出す努力をしています。

ー加えて、製造工程のこだわりについても教えてください。

我々の工場に関しては、すべてを一貫生産しています。行程により工場を分けると各基準も異なりますが、ひとつの工場で全行程を行うことですべてを把握できますし、それに伴い技術も向上します。またタオルは、基本的に毛羽立ちを抑えるためにのり付けの行程があるのですが、我々の工場ではのり付けは一切行っていません。我々は特殊な紡績を行うことで、生地の風合いを落としかねないのり付けやのりを落とすという無駄な行程は、一切なくしています。


ひとつの工場で一貫生産するからこそ保たれる品質。

硬度成分が低く、極めて不純物が少ない良質な水資源が豊富なことにより繊維産業が発達した今治市。やはり、美しい水を使うからこそ、ニュアンスのある染色が実現し、ふんわりとした独特の素材感が生まれると言います。〈ヒポポタマス〉の製品を手がけているのは、1971年から続く「一広」。清潔に保たれた広大な敷地内で、製織、染色、縫製までを一貫生産しています。工場内は、一年中室温25度、湿度は70%に保たれています。これは綿花が一番育つと言われている温湿。オーガニックコットンを扱うのに最適な環境を保っています。

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工場
今治市内で最大の敷地面積を誇る「一広」のタオル製造工場は、特殊な構造と人の手による徹底した衛生管理で、常に清潔な環境が保たれています。

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素材
海外の厳選されたオーガニックコットン畑から輸入したオーガニックコットンに、エコ素材であるバンブーレーヨンを織り合わせます。

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製織
オーガニックコットン63%にバンブーレーヨン37%という絶妙な配合により、独特の色味や手触りが生まれます。

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染色
〈ヒポポタマス〉特有の色が生まれるのは、この後染めの行程があってこそ。ありきたりのイメージに近い染色液を使わずに3~12色をブレンドすることで、オリジナルカラーを表現します。反応染料のため水の硬度に都度合わせ試行錯誤を繰り返したのち、現在では安定して染色できるようになりました。

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乾燥・裁断
揉みたたきながら乾燥させます。同時によれないようにし、テンター(収縮などを防ぐ幅出し機)で幅を出します。乾燥機は最新の機種を採用し、優れた製品を作ることが可能になりました。

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縫製
天然繊維は熱に弱いため、最後の裁断と、タグを折り込むミミの縫製作業は機械ではおこなえません。数ミリのズレも許されないので、職人による丁寧な手作業が施されます。手間や時間がかかりますが、確実に良いものを届けたいという思いからです。

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汚水処理
排水処理までを、しっかりと自社でおこないます。バクテリアが繁殖しやすい37〜40度にタンク内を保ち、染料や薬品を分解させます。約3日間かけて生物処理された水は無色透明になり、飲めるまでに浄化。自然の湧き水と中和させて海へ戻します。生産後も徹底的な環境管理があり、安心安全な商品が生まれるのです。


時代を超えて長く愛されるトータルインテリアブランドへ。

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ー最後に今後の展望について聞かせてください。

“タオル屋”という根底は変わらず、時代の変化とともに日用品やバス、キッチン、リビングなど、トータルインテリアとしての商品開発に邁進し、ライフスタイル全体をプロデュースできるブランドになりたいですね。現在まではメンズブランドとのコラボが中心でしたが、メンズだけではなくレディースブランド、アートなど新しいコラボレーションの展開も考えており、新鮮な話題をお届け出来るかと思います。最近ではギフト需要もさらに高まっていますが、今後は〈ヒポポタマス〉のタオルを「送る人、送られる人、双方にとってうれしい」そんなアイテムに育てていきたいです。やはり毎日使うものだから、安心安全であるのはもちろんのこと、からだにも地球にもやさしいものがいいと思うんです。日本のものづくり、メイド・イン・ジャパンの製品は、今後さらに価値を増していくと思うので、海外に対してのアプローチも強化していきたいと思っています。

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PROFILE

金澤 怜

2011年HPS入社。入社後、営業、販売、生産、企画、多くの部署の担当を経て、2016年取締役に就任。現在は、ブランディング、販売戦略、開発などを含めたヒポポタマスのブランドマネジメントを担う。 https://hippopotamus.co.jp/

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