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セルフプロデュース文化に根ざしたヘアサロン「FLEURI」との協業「UA HAIR」

ウツワ

2025.11.20

セルフプロデュース文化に根ざしたヘアサロン「FLEURI」との協業「UA HAIR」

昨年10月よりユナイテッドアローズ社(以下、UA)がスタートさせた次世代向けのコミュニケーション施策。第三回目の新プロジェクト『UA CURATED』は、同社が展開する全ブランドの多彩なプロダクトを横断的に編集し、新たな切り口で発信していくキュレーションストアプロジェクトで、外部のクリエイターやカルチャーリーダーをパートナーに迎え、それぞれの嗜好や感性に沿ったテーマでストアを展開します。10月からスタートしたヘアサロン「FLEURI(フリューリ)」との協業のストアでは、Instagramを中心に展開されます。セルフプロデュースした写真を発信し、そこにUAの商品をリンクさせることで、ファッションを「自分らしさの延長」として感じてもらえる導線が設計されています。SNSネイティブ世代にとって、髪型やファッションは自己表現の重要な要素。「UA HAIR」は、その価値観に寄り添う形で、UAの商品を提案する新しいアプローチとなっています。このUA社の新しいブランディング施策について、ヘアサロン「FLEURI」オーナースタイリスト・Sakieさんに伺いました。

Photography:Taro Ota
Text & Edit:Shoko Matsumoto

“今”を発信する「FLEURI」というサロンのあり方

−「FLEURI」のコンセプトについて教えてください。

「6年前に自分でサロンを立ち上げて、今年で7年目になります。始めた当初はコンセプチュアルなほうがいいのかなと思い、分かりやすいテーマを掲げて、80年代風の撮影をしたりもしていました。でも、それはその時のムードでした。実際に続けていくうちに、時代も流れていくし、私自身も変化していく。そんな中でお客さまと話していると、“FLEURIってこういうサロンだよね”と言ってもらえることが増えていきました。そこから、“みんなに作ってもらっている場所なんだ”と感じるようになったんです。コンセプトをひとつ決めるより、常に変化できる状態でありたい。私の中では“みんなで作るFLEURI”という感覚がいちばん近いと思います」

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−お客さまと一緒にサロンを育ててきた感覚があるんですね。

「そうですね。以前在籍していたサロンはとてもコンセプチュアルだったのですが、外部の予約サイトなどは使わず、Instagramや口コミを通じて来てくださるお客さまだけでした。FLEURIを始めてからも、そのやり方は変えていません。月に一度、あるいは数か月に一度お会いする中で、サロンの変化や展開している企画、新しいスタッフにも興味を持ってくださる方が多いんです。だからこそ、来てくださるのは私の世界観を理解して選んでくれる人たちばかり。私がやりたいことをやっているだけなのに、みんなが自然と気にかけてくれて、そうやってFLEURIが形づくられていく。お客さまそれぞれの中にある“FLEURI像”があって、全員同じイメージではなくても、それがとてもいいなと思います」

−Instagramのセルフィー投稿も印象的です。どんな意図がありますか?

「特別に狙っているわけではなくて、普段お客さまが髪型の参考に持ってきてくださる写真って、プロが撮ったような360度のスタイル写真よりも、PinterestやInstagramで見つけた自撮りっぽいものが多いんです。みんな、結局は“雰囲気”で選んでいる。プロ目線で見ると細部の作り込みが大事ですが、実際のお客さまは“こういう空気感になりたい”という感覚で選んでいるんですよね。だから、サロンの投稿もリアルなセルフィーを中心にしています」

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−普段インスピレーションはどんなところから得ていますか?

「日常の中で、街を歩いている時や映画を観ている時など、いろんな瞬間にヒントがあります。また同業の友人よりも、ファッション、デザイン、モデル、音楽など、他業種の人が多いんです。そういう人たちの活動を見て、“こういう表現の仕方があるんだ”“自分の仕事に落とし込むならどんな方法があるだろう”と刺激を受けることが多いです。また、20代前半のアシスタントたちと話していても、意外と同じものが好きだったり、視点が近かったりする。世代が違っても感覚を共有できるのは面白いですね」

UAとのコラボレーションという新しい挑戦

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−今回、UAとのプロジェクトに参加されていますが、引き受けた理由を教えてください。

「今までは企業とのお仕事はあまり引き受けてきませんでした。うちのサロン自体が、コアな感じというか、インディペンデントだと思うんです。ストリートカルチャーに根付いている人たちに来てもらいたいし、ちゃんとかっこいい状態でいたいと思っているので、企業と組むことによって広告っぽくなってしまうんじゃないか、自分たちの世界観が守れないのではという懸念があったんです。でも今回は、UAさん側に“新しい層に向けて発信したい”という明確な意図があり、こちらのやりたい方向で進められる企画でした。クリーンでどの層にもフィットしているUAさんが、うちのような少しエッジのあるサロンを選んでくださったことも新鮮で、FLEURIを知らない方々に知ってもらう良いきっかけになると思いました」
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−プロジェクトを進める上で意識していることはありますか?

「このプロジェクト自体が、UAさんのことを今まで知らなかったり、知ってはいたけど手をつけてこなかった人たちにフィットさせたいということだったので、新しい若い層にちゃんと届くことを意識しています。これから伸びそうなモデルさんや、面白い活動をしている子など、リアルにカルチャーを感じている人たちと一緒に作るようにしています。PR会社を入れた大きい打ち出し方などもあるとは思うのですが、ただ“きれいな広告写真”を撮る従来の方法だけでは、今の時代には響かないと思うんです。TikTokやInstagram、YouTubeのように、“楽しかった”“面白かった”と自然にシェアされること。それがいちばんリアルな広がり方だと感じています」

−実際に動いている「UA HAIR」のアカウントを見た感想を教えてください。

「今はまだ試行錯誤していて、写真の撮り方やアップの仕方を変えていこうと話し合っています。ただ、すでにいろんな友達から、あの企画は何?と気にかけてもらえているので、いいスタートは切れたかなと思います。インタビュー動画も撮っているのですが、いろんな個性の子がいて面白いですね。スナップと動画を組み合わせて、より人柄や考えていることが伝わるようなコンテンツにしていきたいです」

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−企業と協働する上での発見や変化はありましたか?

「初めは大きな企業と組むと、多くの人を巻き込むことになるので難しいのかなと感じていました。実際スピード感や進め方に違いが出ることもありますが、UAさんは私の意見をしっかり聞いてくれて、寄り添いながら、対等にものづくりをしてくれました。これまで、企業と組むと自由がきかないのでは、と思って避けてきましたが、そうではないんだと気づきました。UAさんのように、新しいことに挑戦してストリートやカルチャーに敬意を持って向き合っている企業となら、これからも一緒に面白いことを仕掛けていきたいです」

これからのFLEURI、これからの自分

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−今後の展望を教えてください。

「私がやっていきたいのは、友人たちとつながって一緒に面白いことを生み出していくことなのですが、UAさんがそういうストリートカルチャーに関心を持って、私たちを選んでくれたことは、本当に嬉しいことだと思います。FLEURIも私自身も、変化を恐れず、関わる人たちと一緒にこれからも成長していけたらいいなと思います」

PROFILE

Sakie

Sakie

代官山のヘアサロン「FLEURI」を率いるトップスタイリスト。ニューヨークや青山の有名サロンで経験を積み、2019年に独立、自身のサロンをオープン。ファッションやアートからもインスピレーションを受けながら、髪を通してその人の空気や個性を形にする。サロンワークにとどまらず、撮影やヘアメイクなどクリエイティブな活動も精力的に行う。UAのプロジェクト『UA CURATED』において、Instagramのアカウントを中心に発信する「UA HAIR」をディレクションしている。

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