ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

『UA CURATED』と『AfterParty』が目指す、世代を横断するリアルクローズ。

ヒト

2026.01.29

『UA CURATED』と『AfterParty』が目指す、世代を横断するリアルクローズ。

ユナイテッドアローズ(以下 UA)社が取り組む、次世代へ向けた新たなコミュニケーション施策。その第三弾となる新プロジェクト 『UA CURATED』 は、同社が展開する約30ブランドの多彩なプロダクトを横断的に編集し、独自の切り口で提案していくキュレーションストア企画です。本プロジェクトでは、外部のクリエイターやカルチャーリーダーをキュレーターとして迎え、それぞれの嗜好や感性を起点にストアを構成。既存のブランドイメージにとらわれず、多様なファッションテイスト・世代へアプローチする UAの新たなブランディング施策として注目されています。
今回の企画では、ファッションを軸に社会や文化を語り合うポッドキャスト番組 『AfterParty』のパーソナリティである編集者・ライター・クリエイティブディレクター長畑宏明さん、プロデューサー・ライター倉田佳子さん、編集者の平岩壮悟さんの3名がプランナーとして参加。多角的な視点を持つ彼らに、UAの新しい挑戦『UA CURATED』について、その狙いと可能性を伺います。

Photography:Taro Oota
Text & Edit:Shoko Matsumoto

ファッションへの間口を広げる、3人という最適解

―『AfterParty』として3名が集まった背景を教えてください。

倉田:もともとは私が「ファッション系のイベントをやりたい」と長畑さんに相談したのがきっかけでした。とはいえ、まずはイベントをやるにしてもオーディエンスを作るところから考えた方がいいねということで、手段のひとつとしてポッドキャストを始めました。ファッションを軸にしながらも、出来るだけ間口は広く、様々な切り口からファッションに興味が持てるような内容にしたいと思ったので、映画や音楽など他の文化と紐付けながら話せる2人に声をかけました。

画像 ポッドキャスト番組「AfterParty」のキービジュアル

長畑:でも正直なところ、ポッドキャストが絶対に成功すると思っていたわけではないです。ただ、人を動員するならファンダムは必要だよね、という順序の話で、その手段のひとつがポッドキャストだったというだけです。「今はポッドキャストでしょう」みたいな強いメディア論があったわけでもなくスタートした感じですね。

平岩:でも結果的に、この3人の距離感とか温度感が、ポッドキャストにはすごく合っていた気がします。

倉田:これまでファッションのポッドキャストとして、メディアが運営するものか、TPOや年齢に沿ったスタイリング術やヴィンテージの歴史、背景などを語る番組はありました。それらとはまた違った切り口でのファッションポッドキャストの立ち位置にちょうど入ったのかなと感じてます。

―始めてみて、手応えを感じた瞬間はありましたか?

長畑:基本的にはずっと右肩上がりで聴いてもらっています。ただ、何度か「ちょっと跳ねたな」というタイミングはありました。

倉田:その一つで、2025年の初めにSpotifyが主催する次世代のポッドキャストカルチャーを担う新進気鋭のクリエイター5組「RADAR: Podcasters 2025」に選んでもらったことは大きかったです。そこから知ってくれた方も多かったと思いますし、もともとカルチャー系のポッドキャストを聴いている人たちが、巡り巡って出会ってくれたケースもありました。もう一つが、ポッドキャスト内でのコラボでした。お互いに番組を聴きあっているご縁から「桃山商事」と「take me High(er)」のそれぞれとコラボレーションして、また普段私たちが話しているトピックとは違った広がりが出て、新たに知ってくださったリスナーも増えたと思います。

画像 編集者・ライター・クリエイティブディレクター長畑宏明さん

長畑:ポッドキャストって、Xのポストみたいに「バズってる感」が見えづらいメディアなんですよね。でも、聴いてくれている人たちが粛々とシェアしてくれて、気づいたら業界の中の人も結構聴いてくれていたりして。あと、他のポッドキャストとの横のつながりも大きかったと思います。ゲスト出演や名前を出し合うことで、ゆるやかな連帯がすごく力になった気がします。

倉田:夏に初めて開催したリアルイベントも初めてリスナーと対面する印象的な機会になりました。私たちのトークがメインではありますが、最後のフリータイムでリスナー同士が自然に話し始めてる光景を見て、少しずつコミュニティが出来てきてるのかもと実感できました。その後も、キネカ大森、SKAC (SKWAT KAMEARI ART CENTRE)に声をかけてもらってイベントを開催する機会に恵まれて。今後も定期的にイベントを実施して、最初の動機にあった大規模なファッションイベントを開催したいです。

「未完成」でいられるメディアとしてのポッドキャスト

―数あるメディアの中で、なぜポッドキャストだったのでしょうか?

長畑:一番の理由は「楽だから」です。本を作るとか、文章を書くとかだと、たぶん続かなかったと思います。ポッドキャストは、とにかく人が集まって話すだけ。ファミレスで集まって喋るのと、やってることはほぼ同じなんですよね。パワーワードを引き出していこうみたいな目的があるわけじゃないので、始めるハードルも低いし、続けるための労力もそこまでかからない。それに、校正もされていない、取材もしていない、自分たちの思ったことをそのまま出していい。リスナーにとってもアプローチする際のハードルが低いんじゃないでしょうか。そういう未完成な状態が成立するメディアって、今はポッドキャストくらいしかない、新しいなと思います。

倉田:毎回特に台本もなく、トピックだけ決めて本人たちが楽しく話すことを優先してます。続けていくうちに、それぞれが違うモチベーションで楽しめる余白があることに気づきました。海外だとYoutuberと同じく、Podcasterは職業として成り立っていますが、日本だと再生回数などで収益化できるシステムは実装されていないんです。その分、数字を気にしないでいられるので、仕事とは少し違うテンションで共有できる場になったのが良かったなと思っています。

画像 プロデューサー・ライター倉田佳子さん

―「UA CURATED」へ声がかかったときの感想を教えてください。

平岩:最初のきっかけとしては、『AfterParty』を聴いてくれている知り合いの方から、「この企画、『AfterParty』でどうですか?」と相談をもらったんです。自由度も高く、挑戦しがいのある企画だったので、ぜひぜひ、という感じで速決でした。

長畑:僕は前職時代、UAさんがクライアントだったこともあって、勝手に馴染みがある存在でした。最近のセレクトショップって、強い提案というより、ちゃんと全体に向き合わなきゃいけない局面が出てきているんだと思います。一方で、尖った提案はインフルエンサーなど個人や小さな単位に集まっている。その中で、UAさんがもう一度「声をあげたい」というタイミングなんだな、と受け取りました。日本のセレクトショップのオリジナルって、クオリティは本当に高い。そこにファッションとしての色をどう足すか、広い意味でどうスタイリングするかという点は、やりがいがあると思いました。

倉田:UAさんって、誰もが知っている存在じゃないですか。一人一人が思い出があったり、イメージを持っている。だからこそ、自由度が高く、企画の内容からキャスティングまで全てクリエイターにお任せする器の大きさは素直にすごいと思いました。

数字では測れない「服が好き」というリアリティを求めて

画像

―今回のキュレーションのテーマや意図を教えてください。

長畑:トップダウンで「これが正解です」とファッションのプロが提案する企画にはしたくなかったんです。今はお客さんの方が情報も早いし、状況はかなりフラット。だから、今のムードを共有している人たちが、自分にとってリアルだと思う服を自由に選んで再構成する。その姿を見せたいと思いました。いわゆるプロでもアマチュアでもない、その「間」の感覚。現実離れしたファンタジーじゃなくて、リアルといっても鍵カッコ付きではありますが、その「リアル」をどう表現できるかに向き合った企画です。

―歌人・ユーチューバーとして活躍する現役大学生のベテランちさん、Miyuさん、中国・四川省成都市出身のアーティスト・モデルminky qianさんの3名をキャスティングした理由を教えてください。

画像 UAの洋服をセレクト中のベテランちさん。

ベテランち:2017年に東京大学理科三類に入学し、医学部で5留中。灘中・高校時代の友人らを中心に構成されるグループ「雷獣」、単独名義「ベテランち」としてYouTubeで人気急上昇中。2018年には東京大学Q短歌会で作歌を始め、「青松 輝」名義で歌人としても活動中。

倉田:数字よりも、「この人、ちゃんと服が好きだな」と思えるかどうかを重視しました。現場を共にする中で自分だけのセンスを持っている人たちだと改めて感じました。ベテランちさんは、Youtuberとして一般的に知られていますが、インディペンデントなブランドからハイブランドまでちゃんと自ら買って着たりしてる姿が気になりました。まだ公には伝えられきれていない、彼のファッション観が気になったというか。長畑さんと平岩さんにもベテランちはどうだろう?と相談した時に、確かにちゃんと企画や服に興味を持って接してくれそうだねということで満場一致で声をかけました。

長畑:Miyuさんは、過去に『STUDY』に出てもらった縁があって、前職の古着屋に伺ったりなど実際に会ってきた関係性がありました。

倉田:minky qianさんは、たまたま中国のフォトグラファーが来日する時に食事の場で出会い、モデル含めて表現者としてすでに活動しながらも芸大にも通っている話をきいていました。

画像 UAの洋服をセレクト中のminkyさん。

minky qianさん:中国・四川省成都市出身のアーティスト/モデル。現在は東京を拠点に、東京藝術大学油画第四研究室に在籍。絵画をはじめ、プロダクト制作や映像・パフォーマンスなど、ジャンルを横断して表現活動を行う。

長畑:みなさん「会ったことがある」「人となりを知っている」というのは大きかったです。画面上の数字だけで決めると、どうしてもリアリティのない企画になってしまうので。

平岩:今回の「Our Closets」という企画では、スタイリストなどのプロが提案するのではなく、「非トップダウン」「横並び」の関係性を作りたかったので、その方向性に自然にフィットする人たちでしたね。

日常の延長線にあることこそ、ファッションのリアル

―プロジェクトを進める中での気づきはありましたか?

平岩:『AfterParty』というユニットとして、プランナー的な立ち位置で関わったのは、今回の企画が初めてでした。3人いるし、企業や媒体にとっては扱いづらい存在だと思うのですが、それでも任せてもらえたのはありがたかったです。

画像 編集者の平岩壮悟さん

長畑:制作面でいえば、「売れる正解」を探すプロセスを最初からやっていないので、すごくスムーズでしたし、楽しかったです。本人がいいと思っているならOK、という前提があるから、より良く見せることに集中できました。UAさんもその前提を理解し、共感していただいていたのが大きかったです。

倉田:3人それぞれの編集の経験値と、ポッドキャストで培った信頼関係があったから、意思決定も早かったと思います。

―この企画が、どのように広がっていってほしいですか?

倉田:どう感じるかはオーディエンス次第なので、みんなで楽しく形にできた熱量が自然と広がればいいかなと思っています。ファッションの企画という枠組みのなかで、こんなに自由に解釈や設計できるんだという柔軟さが伝わったら嬉しいですね。

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長畑:コマーシャルで人生が変わるほどイージーモードな時代でもないと思うので、もっと手前でいいです。企業と個人が、自由意思を持ったままきちんとコラボレーションできている、その姿が伝われば本望です。それに、UAさんが自分たちが働いて作ったレガシーや売上に対して、いい施策をやってくれたなと思ってもらえたらうれしいですね。

平岩:「UA CURATED」自体、すごくいい施策だと思っているんです。プランナーに一任して期間限定のセレクトショップを作るという、その人たちが面白いと思っていることを「信じる」「任せる」という強度の高い企画なので、これからもいろんな人に開かれていったら面白いなと思います。

長畑:オーディエンスとしても、続いていくところを見てみたいですね。

PROFILE

長畑宏明(ながはた ひろあき)

長畑宏明(ながはた ひろあき)


編集者・ライター。2014年にインディペンデント雑誌『STUDY』を創刊。近年はポッドキャスターとしての活動も精力的に行い、「AfterParty」をはじめ、奥山由之との「穴」などに参加している。ファッションを主軸に、近年は映画分野の取材が増加。編集・執筆のほか、ミュージシャンやバンドのスタイリストを務めることもある。

倉田佳子(くらた よしこ)


倉田佳子(くらた よしこ)


プロデューサー・ポッドキャスター。独学でライターとしてキャリアをスタートし、前職ではプロデュース、アーティストコーディネーション、ギャラリー運営などを経験。4年前に独立。現在は企画・制作を中心に活動している。ポッドキャスト「AfterParty」を通じて活動の幅が広がり、新たなコラボレーションや相談が増えている。

平岩壮悟(ひらいわ そうご)

平岩壮悟(ひらいわ そうご)


編集者。前職のi-D Japanで、ファッションカルチャー誌の制作に携わる。独立後はカルチャー誌、文芸誌、単行本にて編集や執筆をジャンル横断的に行う。訳書にヴァージル・アブロー『ダイアローグ』(アダチプレス)。

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