シテンの視点 #6

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2021.10.18 

シテンの視点・#6 「人と光線」
文:シテン クリエィテイブ・アドバイザー 百々 徹

マン・レイと言えばデュシャンの仲間であり、シュルレアリスムを写真から牽引した人と言われている。
シュルレアリスムと言えば横浜美術館が私にはまず来る、積極的にその一派の作品展を定期的に行なっている。(ただいま長期の改装休館中)我が、横美なのだ。

ココ・シャネルというファッション人の一番有名な写真、実はマン・レイが撮っている。その後の色んなファッション写真家に影響を与えている。
その撮影している年代に驚かされる、その時代にもうこのモードがあったのかということだ。
シュルレアリスムという言葉だけでは彼の理解には届かない。色んな種類の芸術を残している。特にファッション関係のものが素晴らしい。

真の意味でファッション写真の前衛と美しさはマン・レイが構築したと思っている。
いわゆる左岸の人である、リヴ・ゴーシュだ。
ニューヨークのブルックリンの仕立屋に生まれ、パリも左岸に行き、20年代のパリのモードの渦中にさらされ、西海岸へ行き、
そしてまた晩年は私の心はやはりパリにあると、パリで生涯を過ごした人であった。

ここにあるのは、先日の文化村での美術展のミュージアムショップで購入したTシャツとバッジ、とてもお気に入りすぎて着れていない。
この写真そのもののオリジナルはソラリーゼーションという手法で表現されている。
100年近くも前の当時だから驚くとともに、新しい視点がある、
今のデジタルであっという間に作ったような表現にも見えるが、実はそうではなくて、そんな便利なものなど何もなかった時代、そこが驚くところなのだ。
写真の構図、ヘアスタイルの美しさ、などなど、色んな偶然の条件が重なってできていると思えるのだ。
マン・レイの驚くべきところは、その写真など、それだけに止まらないところであって、万能の芸術家といわれ、二十世紀を代表する「前衛」の精神そのものだとも思えるのだ。
シュルレアリスムとは訳せば「超現実主義」といって、理性や慣習、決まり事から人を解き放ち、無意識、あるいは夢、
はたまた偶然なことを主張する作品に落とし込んだコトと解釈できるが、
マン・レイのそれにはパリの左岸を通じて、知り合った、異能な才人たちの存在があっただろう、芸術、文筆、ファッション、ジャーナリズム、思想家などなど、
それらの人の溢れるばかりの表現に自らも影響を受けながら表現した人であった。
知れば知るほどに、深く、濃く、面白い。マン・レイと言う一つのジャンルである。
私には何よりも当時先端のファッション・モードと深く関わりがあった点が面白みを感じるところではある。
シュルレアルな人の中でも最もモードに影響を与え、ヴォーグやヴァニティ・フェアなどの当時の前衛モード誌に多用された100年も前の写真技術やスタイル技術とは思えない、
その感性に驚くばかりなのだ。
この1920年代のパリではマン・レイが撮影する斬新な写真は「モードとアートの境界線を曖昧にした」と言われ、芸術家として認知されるようになり、
そのモード界には颯爽とココ・シャネルが登場し、自由で自立した女性たちを鼓舞するデザインのドレスを制作したのだ。


先日、文化村のミュージアムショップで購入のTシャツとバッジ、秀逸な出来のTシャツ。


ソラリーゼーションの技法で撮られた恋人の写真、ソラリーゼーションはマン・レイがこの時代から世に出した。
その新しさはその当時の恋人でありモデルであった、この写真のリー・ミラーが偶然にマン・レイと発見している。
ヘアスタイルや目線のやり場の表情などは現代のモードそのものだとも言えないだろうか、実は100年前のものだというのが驚愕だ。

20世紀を代表する万能の芸術家マン・レイ(1890-1976)の人生には多くの女性が登場する。
彼は親しい女性たちをモデルにし、特に写真では、ときに優しく、ときに強く自立的で、ときには神々しいまでに美しい女性像ミューズを生み出した。 モードの誕生だ。

この瞬時の緊迫した作業のなかで彼は、「ソラリゼーション」、「レイヨグラフ」などと命名された画期的な表現法を発明した。
ここで彼は、くしくも自己のペンネームとして選んだ「マン=人」と「レイ=光線」とを繋ぐ魅惑のアートの数々を生みだすことになった。


単に美術展に行くのではなくて、物事を多角的に見る、見つめ続けることを心がけてはいたい、シテンであります。


およそ2週に一度のペースでコラムを担当させていただいています。



【百々 徹】
2000年から2020年の約20年間グリーンレーベル リラクシングのクリエイティブディレクターをつとめる。
今はその知見を活かした様々なアドバイスをしている。

参考:横浜美術館、マン・レイと女性たち:厳谷國士、とその文化村ミュージアムでの展覧会、シュルレアリストのパリ・ガイド:松本完治、フランシス・ベーコン:2013年3月美術手帖、シュルレアリスムとは何か:厳谷國士

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