シテンの視点 #16
WOMEN / MEN / シテンの視点
2022.03.07
シテンの視点・#16「Meet your art」
文:シテン クリエィテイブ・アドバイザー 百々 徹
住む視点からアイクラーホームズを見るシテン。
西海岸に点在するアイクラーの家々を見て廻り研究したことがありました。その家づくりの点から、街づくりの面を作り、住むことのエリアのブランド化が実践された街と家々を。
「理想の住まいを探して」 アイクラー・ホームズ。第二次大戦後、アメリカと言えども戦地からの膨大な数の若い兵士の帰還は平和を求める民衆の本能とともに暮らしを構成する、つまりアメリカにもあったベビーブームは大量に家を必要とする時代の到来、しかも対象は若いから安いことが前提にもなる、そしてモダンで新しい時代を感じさせること、ここの下の方にある募集のパンフレット、この当時のものですが、当時の日本の為替レートで言えば360円の固定レート、それにしても1千万しない、50年以上前のアメリカにしてもリーズナブルであった、当時はなかった、工場で作っている部品を使う家、つまり大量生産が前提、だから安くは出来る、土地は広大なカリフォルニアにして、何もないところだったからこれも安かったはず建売住宅。イームズの家も基本はそうでした、工場で作る家。つまりケーススタディハウスにつながる、あれは建築家これはセンスが抜群にあった建売業者、違うのはEHはエリアを開発してパターンを作ったモデルの中から部屋数や予算に応じて選んでもらい、街が出来るという開発形態、未だに日本の住宅開発ハウスメーカーのお手本でもあると言えます。何が違うか、ジョセフ・アイクラーは建売の不動産業者であったが、デザインに対する街づくりに対する決定的にこだわった思想を持ち合わせていたという視点・シテンです。だから今も街として残り、価値は数十倍にもなり高級住宅地、資産価値となって、代替わりした住まい手のセンス良いリノベーションと共に現在を過ごしています。
アップルの創業者でスティーヴ・ジョブスという人がいます、彼の家はアイクラーではなかったが周辺にアイクラーの家が点在していたと本人、クパチーノという今やシリコンバレーの中心を成す伝説の街、そこにあった。アイクラーの家々がデザインと暮らし方の憧れであって、自分の成り立ちに大きな影響を与えていると著書で言っていました。アップルのデザインというかライフスタイルに影響を受けたのがアイクラー・ホームズの家々だったのです。アウトラインはともかくとして、とにかく住宅、住居に関してこの平屋の水平な家や、ミッドセンチュリーの要素、イームズ、ネルソン、サーリネン、ベルトイア、リゾム、ノグチと共に、この時代の根幹、ミッドセンチュリーという事象に深く影響しています、なぜか、住まいやすいということと、アーティスティックであったという要素が前提を構成しているからです。
アイクラー以降、当時の若い世代への住宅は、住まうというライフスタイルは、ファッション的になったといえます。
壁の色はこの色しか使わせない、使わないことを守らせることによって、アイクラーの家はそれそのものがデザイン住宅となり、ブランドとなった。
これはアップルの思想への決定的な影響だった。
アイクラーの家、の広告、とにかく当時としては安かっただろう、デザインを共通化し、素材は工場で作るという当時なかった思想を持ち込んだ。
そしてデザインが優れていた、当時の若いデザイン思想でもあった。戦後の画期的な事例は今の日本の洒落たハウスメーカーにも影響与え続けている。
典型的なアイクラーの内装リビング、ミッドセンチュリーのモダニズム、今も素敵に見える、ハウスモダニズムはここから始まった。
世界にも例がなかった、建売住宅のブランド化、それもオプションの多様性もあった。家づくりをデザインビジネスに変えた最初の人。
タイトルにFOR YOUNG HOMEMAKERS とある。
建売で安いのに、ファッションしていた住宅と言える、そんなものはなかったのだ、だから若い人が夢中になった。
有名な逸話はこれだ、これがブランドを守るということになった。ブランド作りに真剣に向き合い、熱狂の嵐の中へ。それが今やコレクションピースの家々になっている。
まるでスティーヴ・ジョヴスの逸話のようだ。
典型的なアイクラーの家、そのライフスタイル
平屋の水平デザイン
木や環境に順応すること。今の日本に欲しいゆとり。歩道とかのあり方、街全体で作るデザインが欲しい。電鉄会社の沿線開発ならできる思想ではないだろうか。
ものには色んな視点、諸説があると思います。多様な角度からの視点で見ていますことをお含みおきくださいませ。
およそ2週に一度のペースでコラムを担当させていただいています。
【百々 徹】
2000年から2020年の約20年間グリーンレーベルリラクシングのクリエイティブディレクターをつとめる。
今はその知見を活かした様々なアドバイスをしています。
参考:CHRONICLE BOOKS :EICHLER HOMES , LIVING
PHOTOS: TORU DODO