シテンの視点 # 21
WOMEN / MEN / シテンの視点
2022.07.11
シテンの視点・# 21
文: 百々 徹
鮮度を失わないものはどうして生まれるのか。
発刊されていた当時からジャンル分けなどができなかった雑誌「STUDIO VOICE」 その遙かな昔の源流はウォホールのインタビューという雑誌の日本版としてファッションとカルチャー誌の位置づけで発行されたというルーツをいちようは持っている。2015年の407号から何冊かは野村訓一さんがクリエイティヴ・ディレクターという位置づけで編集に携わっていた。特に409号、視点が野村さんらしい。この号のお題であった「night stories」の解説というかつぶやきのような、テキストのページがあり、これが面白く興味深く惹きつけられるものがあった。最近発売の雑誌・ポパイのクルマの特集があり、真ん中あたりに1ページのクルマに関する寄稿をやはり、されていて、この文章が、長い物語の一節のような感じがして、とてもよくって、すぐにこのスタジオヴォイスのナイト・ストーリーズのテキストのくだりを思い出してしまった。
以下その項のごく一部の引用
「夜はユースのものだ。
夜はゆりかごだ。
夢や希望は夜に生まれ
そこで産声をあげ
そこから羽ばたく。」
STUDIO VOICE 409号 night stories Kunichi Nomura 巻頭のテキストの一部を引用
また、408号の特集はファッションで is FASHION というお題目、そのコンテンツの中にアニエス・べーさんを取材した記事があった。やませ・まゆみさん(アーティスト)が写真とエディトリカルを担当していたのだが、これがとても秀逸で、アニエスさんの本質を捉えていたように思えた。このような視点のアニエスさんの紹介がそれまではなかったからだ。「愛があるから生まれるファッション」というコンテンツだった。
「アニエス・ベーをなぜ今取り上げる必要があるのだろう。ほとんどの人がその名前を聞けば、知っている有名なブランドなのに。そんな質問は編集会議でも持ち上がった。なぜアニエス・ベーなのか。・・・・けれど彼女自身がどういう人なのか、そこから汲み取り理解する人は少ない、今回見せたいのはそのどれにもあてはまらないアニエス・ベーという人間。そして最高にクールな彼女の生きる姿勢を少しでも紹介できればと思う。」
STUDIO VOICE 408号 is FASHION Mayumi Yamase のEdit の一部を引用鮮度を失わないものがどうして生まれるのか...このすでに廃刊になった雑誌の優れたアーカイヴスを遡り触れることで、理解につながる視点があるのかも知れないな、と、ふと最近思ってしまった。
ものには色んな視点、諸説があると思います。多様な角度からの視点で見ていますことをお含みおきくださいませ。
およそ月に一度のペースでコラムを担当させていただいています。
【百々 徹】
家具インテリアで15年、ファッションで22年、横浜・石川町の小さな雑貨店MWL STOREの店主として7年目、コラムニスト。
参考:STUDIO VOICE 406と407~410 (野村さんがCDの号)