シテンの視点 #24

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2022.10.11 

シテンの視点・# 24

文: 百々 徹

造型という視点をシテンする。

「ムサビ」でかなり・愉しみな展示会をやっていて行ってきた。内容のレベルの高さに比して、平日だからか人の少ない日にあたり、嬉しくて一日中を過ごしてしまった。(102日で会期は終了しています。)
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この二つのテーマが同時に開催されているという、私にとって、それは限りなく愉しみな展示会であった。原弘をずっと追いかけてきた、なぜ、どうしてあの美的な感覚が今ならわかるが、あの時代、80年も前に育ったのかと。。。武蔵野美術大学美術館を初めて訪問した。美しい大学で、さすが美術大といえる全体敷地の印象であった。
3213.jpg敷地の案内のボードのデザインもわかりやすくて、単純だが美しさがある、さすがである。案内はこうでなければならない。いきなり入り口からやられている。


近代デザインの確立と原弘(ヒロム)の視点

武蔵美で教鞭をとっていた原弘ということもあり、完璧な展示であった。
image003.jpg原 弘(ハラ ヒロム)

1903年、長野県飯田の生まれで家業は印刷業だった。家業のこともあり、新設されたばかりの東京府立工芸学校(現・東京都立工芸高校)へと進んだ。デザイナーになろうとは思っていなかったという。
しかしその母校があったのが築地で、近くにある銀座は年中歩いていたという、そしてそこにあった資生堂の余り大きくもないショー・ウィンドウの、ハイ・ブローなディスプレーが気になり出し、資生堂のもろもろのデザインが好きになり出したと言う。強く惹かれたという、当時では他で見ることのできない、すぐれたデザイナーによるすぐれたデザインに。飯田から出てきて、大都会のデザインの洗礼をうけた。原は学校で印刷の教育を受けながら、気持ちはデザインに傾斜していったという。そして卒業し、母校の教員となり残った。東京府立工芸印刷科教員の時代には写真と新しい宣伝美術を拓(ひら)くことになる。そしてこの時代
1925年にバウハウス、ニュータイポグラフィと出会っている。これがモダニズムデザインの原として、決定的になった。
それらが1940年代初頭の対外宣伝誌「FRONT」をデザインした「東方社」を生むことになる、原はエディトリアル・デザインを担当した。写真はなんと、木村伊兵衛である。
この「FRONT」は80年前に生まれている、なんということだ、今の雑誌と言っても過言でない、デザインのバランス、原弘がモダンデザインの確立者と言われるゆえんはこのあたりから始まった。その後に与えた「視点」の影響が果てしなくあるといえる。日本のモダンデザインのスタイルを確立したデザイナーであると言える。機会があれば原弘の功績に触れることをおすすめしたい。その圧倒的な他に無さ具合に驚くことになる。
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スクリーンショット 2022-10-02 10.22.29.png作品はいろんなものがあるが、私的にはこの2枚に尽きる。内容やこのグラフの背負った目的ではなくて、デザインという視点からの見地だけではあるが、なぜこの時代にこのようなデザインとして優れたものができたのかが不思議でならない視点・シテンなのだ。もっと学びたい気分だ。


「みんなの椅子・ムサビのデザインⅦ」展の視点

椅子のあまりの数の多さ、しかもかなりハイレベルなものが並び、それのほとんどのものを触れて、しかもなんと座らせてもくれて、そして写真もオッケーですよと。なんという懐の深さというか寛さである。ムサビである。実は、これさすがに多いので、どなたかの個人のコレクションとかを貸し出しとかされて集められているのでしょうか?と聞けば、いえ、ほとんどが武蔵野美術大学の蒐集した所蔵品ですとの答え、のけぞった。な、なんということだと。だから触っても座ってもいいと、言い切れるのか、椅子の製作をするものにとっては、これはとても大事なことなのだ。ホンモノの椅子に座るってことは、かなり細やかで繊細なニュアンスが伝わることになるからで、特にウェグナーなどのデンマークの椅子、優れたものはほぼすべてあるのだ、そこは美大としての矜恃を示したことになる。
3247.jpgまた、さすが美大の展示である、そそられるのだ。造型とその集積の関係、これだけあると、何か違うものを訴えてくる。椅子は美しい、いわばファッションのようだった。
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IMG_3226.jpg別部屋に展開した、ポストモダン倉俣史朗の椅子、ミス・ブランチ
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3253.jpgフレーダーマウスチェア、ウィーン分離派の流れのヨーゼフ・ホフマンの椅子だ。上野リチも関係した世紀末の芸術を由来とする造型美。ウィーン工房が深く関与している。
image011.jpgなんと、椅子の回廊だ、チャイニーズチェアから続く中国椅子の軌跡。

以上が「みんなの椅子・ムサビのデザインⅦ」展示会
(椅子の撮影はすべて:百々 徹、撮影許可な部分のみを撮影し引用しています。)
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これは武蔵野美術大学のアプリ、MAU M&Lで引いてください、椅子の膨大なコレクションが3Dでどの角度からも見ることができて、このアプリすごいです。名作の解説も完璧です。


ものには色んな視点、諸説があると思います。多様な角度からの視点で見ていますことをお含みおきくださいませ。
およそ月に一度のペースでコラムを担当させていただいています。


百々 徹:家具インテリアで15年、ファッションで22年、横浜・石川町の小さな雑貨店MWL STOREの店主として7年目、コラムニスト。


参考:武蔵野美術大学美術館:みんなの椅子/原弘と造型展   
写真は許可されている場所のみを撮影、原弘デザインの世紀:平凡社

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