連載コラム【音楽のある風景】 Vol.12
2013.04.23 NEW
グリーンレーベル リラクシング のBGMを選曲されている、
選曲家の橋本徹さんよりコラム【音楽のある風景】が届きました。
どうぞお楽しみください!
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4月の選曲は、限られた時間を彩る永遠の音楽を
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春爛漫ですね。
新しいスタートの季節に相応しく、これまでコンピCDの選盤をさせていただいていた「green label relaxing」のショップBGMが、
4月下旬から5月上旬にかけて、「usen for Cafe Apres-midi」に切り替わることになりました。
「usen for Cafe Apres-midi」は株式会社USENの音楽放送チャンネルのひとつで、
僕は最近ライフ・ワークのように週2回はUSENスタジオに行き、選曲・番組制作を行っていますので、このニュースは嬉しい限りです。
さっそく“恋するレーベル”を標榜する「green label relaxing」のために、“恋する音楽”というテーマで、
6時間分のスペシャル・プログラムも作りました。
ぜひ楽しみに聴いていただけたらと思います。
今月は、その「usen for Cafe Apres-midi」にも大きくフィーチャーされている、
僕の最新コンピレイション『Twilight FM 79.4』から紹介しましょう。
選曲コンセプトは「灯ともし頃のFMステイション」。
夕闇せまる頃、都会の黄昏の光に包まれたFMから流れる音楽を“シティー・ミュージック”として解釈し、
珠玉のメロウ・グルーヴやサウダージ・ソウル、胸を焦がすアーバンAORやラヴァーズ・ロック、
フォーキーなシンガー・ソングライターやシルキーなジャズの名作を集めました。
刻一刻と空の色が夕焼けのオレンジから深い藍に変わっていくような、それにつれて街の明かりが少しずつ灯っていくような、
夕暮れどきの優しい気持ちを封じ込めた、限られた時間を彩る永遠の音楽をお楽しみください。
4月──希望の季節の始まりに毎年のように聴いてしまう、僕が青春時代をすごした1980年代に芽生えた爽やかな音楽も推薦しましょう。
それは、やがて“ネオアコ(ネオ・アコースティック)”と呼ばれるようになる、
イギリスのパンク~ニュー・ウェイヴの嵐が過ぎ去った後に吹いた一陣の風のような新しいポップス。
“放課後感覚のギター・カッティング”が清々しい、当時は“New Sensitivity”とも言われた若く繊細な生楽器中心のポップ・ミュージック。
1983年は僕にとって音楽人生元年で、それまではラジオやヒットチャートを聴いたり、
貸レコード屋(というものが当時あったのです)を利用したりする程度だったのが、
その“ネオアコ”をきっかけに決定的に音楽に夢中になり、レコード・ハンティングに明け暮れる毎日をすごすようになったのでした。
最初の一枚になったのはペイル・ファウンテンズのシングル「Just A Girl」(そして「Thank You」~「Palm Of My Hand」)。
その蒼くナイーヴな感性は、切なく甘酸っぱく僕の胸を疼かせ、ときには激しく掻きむしりました。
同じ頃、ジャムというバンドを解散して、スタイル・カウンシルとして新たなスタートを切ったポール・ウェラーの姿にも、
いまだに気持ちを掻き立てられるほど、感化されました。
その名も「Headstart For Happiness」という曲を聴けば、
いつでも春の始まりのように凛としたブラン・ニュー・スタートの気分にリフレッシュできるのです。
実はその2曲は、僕が2006年末に編んだ『ネオ・アコースティック・ラヴ~ヘッドスタート・フォー・ハピネス』
『ネオ・アコースティック・ドリーム~ジャスト・ア・ガール』のサブタイトルにもなっていますので、ぜひとも聴いていただければと思います。
初心に戻るつもりでマイ・エヴァーグリーンをこれでもかと詰め込んだ、
瑞々しいアコースティック・ギターとメジャー・セヴンス・コードの魔法にあふれたコンピです。
この時季に聴きたいエイプリル・シャワーズ、という素敵な名前のバンドも見逃さないでほしいですが、
やはり僕が1983年に出会った一生の名盤(そう、今年で30周年です!)、
ベン・ワットの『North Marine Drive』とアズテック・カメラの『High Land, Hard Rain』に触れないわけにはいきません。
ベン・ワットのタイトル曲の歌詞に倣うなら、ここに収められた音楽は、僕にとって“どんな気分のときにも気持ちがしっくりくる海”
(A sea that matches all of your moods, a place where we always agree)なのです。
そしてアズテック・カメラの惹句に倣うなら、これらのコンピは“君に捧げる青春の風景”。
好きな音楽への憧れや愛情を素直に表現する“ファンタスティックな何か”が、
彼ら(と自分)の走り抜けた青春の映像を鮮やかにフラッシュバックさせてくれます。
陽光きらめく春の午後に、月の光輝く春の宵に、ぜひどうぞ!
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4月の選盤
甘酸っぱい高揚と切ない感傷が溶け合う“夕暮れのFM”をセレクション・テーマに、
多彩な名曲の絶品カヴァーも数多く収録された、橋本徹さん選曲のコンピレイション『Twilight FM 79.4』
“ベスト・オブ・ネオアコ”というコンセプトで、フォーク~ボサノヴァ~ジャズ~ソウル~ラテンなどの影響を受けた
80年代イギリスのアコースティック・ポップスを集大成した、橋本徹さん選曲のコンピレイション
『ネオ・アコースティック・ラヴ~ヘッドスタート・フォー・ハピネス』
『ネオ・アコースティック・ドリーム~ジャスト・ア・ガール』
『ネオ・アコースティック・パレード~ウォーク・アウト・トゥ・ウィンター』
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橋本徹 (SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。
サバービア・ファクトリー主宰。
渋谷・公園通りの「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。
『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』シリーズなど、
選曲を手がけたコンピCDは230枚を越える。
USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」を監修・制作。
著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。
http://apres-midi.biz
http://music.usen.com/channel/d03/