連載コラム【音楽のある風景】 Vol.41
2015.09.30 NEW
グリーンレーベル リラクシング のBGMを選曲されている、
選曲家の橋本徹さんよりコラム【音楽のある風景】が届きました。
どうぞお楽しみください!
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9月の選曲は、“愛と自由を求めて”恋する音楽を。
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夏の終わりを名残り惜しむ間もなく過ぎ去ってゆく9月、という感じですが、
最近は気持ちのよい秋晴れや美しい月夜が続いていますね。
オープン・エアですごしたり、美味しいものを食べたり、スポーツをしたり、
飲み歩いたりするには、とても心地よい季節です。
すっかり秋の装いを楽しまれている皆さんも、多いのではないでしょうか。
今月は、遂にリリースされた、その名も『Forever Free Soul Collection』というコンピCDを、紹介させていただきます。
そう、昨年リリースされ、旧譜カタログのコンピレイションとしては、近年では稀に見る大きなヒットとなった、
ユニバーサル音源による『Ultimate Free Soul Collection』と対をなす兄弟編として待望されていた、
ワーナー音源による究極のFree Soulベスト・オブ・ベスト盤です。
今回も3枚組・4時間・64曲におよぶ大充実作、僕にとってもかけがえのない思い出と物語が詰まった
(サンプリングやカヴァー、サウンド・スタイルの継承を通して、
いわゆる“渋谷系”以降のアーティストたちに大きな影響を与えた曲が多いのも特徴でしょうか)、
Free Soulファンならずとも歓喜の連続に違いない不朽の名作ばかりがずらりと並んでいます。
ワーナーというレーベル・カラーを反映して、清冽で甘酸っぱいブルー・アイド・ソウルや、
瑞々しく軽快なフォーキー・グルーヴが多めのセレクションということもあり、
これを聴きながら、ひと足早く秋の訪れた北海道をドライヴするのは格別でした。
選曲のキーとしたのは、真摯で穏やかな人柄も愛してやまない、
“愛と自由を求めて”困難の中にあっても希望を見出そうとした誠実なソウルマン、ダニー・ハサウェイ。
知的で繊細、そしてしなやかな柔らかさと至福のメロウネスに満ちた、
都市に生きるリベラルな黒人像を体現した彼の音楽が、このコンピレイションの通奏低音になるように意識しました。
70年代にダニーが示した “新しきソウルの光と道”を、90年代の東京で受け継ぐことができればという思いが、
僕がFree Soulをスタートさせた動機でもあったのです
(2000年に編んだ『Free Soul. the classic of Donny Hathaway』というコンピレイションも、ぜひ聴いてみてください)。
そして名曲中の名曲「Love, Love, Love」から
ユージン・レコード 「Overdose Of Joy」?ジュディー・シル 「Soldier Of The Heart」と始まり、
最後はやはりダニーの幻だった秘宝「Memory Of Our Love」で締めくくられる
『Forever Free Soul Collection』を聴いていただければ、
Free Soulが“恋するレーベル”ならぬ“恋する音楽”であることも、わかりやすく伝わると思います。
それは、もちろん今回も収録したシスター・スレッジの大人気曲、「Thinking Of You」の歌詞にも投影されていますね。
I’m thinking of you and the things you do to me
That makes me love you, now I’m living in ecstasy
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9月の選盤
橋本徹さんがグルーヴィー&メロウでエヴァーグリーンな名作64曲を選りすぐった、
ワーナー企画による同時期リリースの“Free Soul SHM-CD Collection”
50タイトルのダイジェスト・セレクションという意味合いも兼ねた、
3枚組スペシャル・プライスによる夢のようなコンピレイション『Forever Free Soul Collection』
マーヴィン・ゲイ/スティーヴィー・ワンダー/カーティス・メイフィールドと並び
ニュー・ソウル四天王のひとりとして名高いダニー・ハサウェイの珠玉の名曲群、
その澄んだヴォイスと流麗なエレクトリック・ピアノに宿る男気と優しさを堪能できる、
橋本徹さん選曲のグルーヴィー&メロウ・コンピレイションの中でも屈指の人気を誇る
『Free Soul. the classic of Donny Hathaway』
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橋本徹 (SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。
サバービア・ファクトリー主宰。
渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。
『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』『Good Mellows』シリーズなど、
選曲を手がけたコンピCDは280枚を越える。
USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作。
著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。
http://apres-midi.biz
http://music.usen.com/channel/d03/