
Standard Book ずっと大切にしたいもの。
ステンカラーコート
Balmacaan Coat
着る人の個性を引き立てる
クラシックな定番コート
レディライクなドレススタイルをキリッとハンサムに。いつものデニムスタイルをきれいめに仕上げるエッセンスとして。男女問わず、どんなシーンにも、どんな装いにも、どんな年代にも、違和感なく馴染む懐の深さ。それこそ、<ステンカラーコート>の醍醐味だと思う。
その特徴は、「後ろが高く前方へ向かって低い位置で折り返した襟」「ラグランスリーブのゆとりある肩周り」「比翼仕立ての前立て」。現在では、セットインスリーブを採用した構築的なシルエットのものもよく目にする。
この“ステンカラー”という言葉、実は和製英語らしい。語源としてはフランス語の“soutien(=支える)”からとも、英語の“スタンド・アンド・フォール・カラー”に起因するともいわれる。世界で通用する呼称ならば、「バルマカーンコート」が近いようだ。スコットランド・ハイランド地方にあるバルマカーンという地名に由来し、太く短い羊の毛を使ったツイードや、ウールやコットンの織り目をきつく仕上げた綾織り生地のギャバジンのコートを指し、デザイン的な特徴はほぼ同じだ。


“ミスター・アイビー”こと穂積 和夫氏は、著書の中でこう記す。「ステンカラー・コートは男のコートの中でもいちばんのスタンダードだ。時代が代わってもさして代わり映えはしないが、だれが着ても違和感がない定番服だ」(『絵本アイビー図鑑』/万来社刊)。その言葉通り、アイビールックを信奉する男性たちに愛され、スーツやジャケットにもマッチするユーティリティの高さでビジネスシーンではことさら欠かせない一着となった。
同様に、往年の名作でも素晴らしい役割を披露する。『ティファニーで朝食を』(1961年)のオードリー・ヘップバーン、『シェルブールの雨傘』(1964年)のカトリーヌ・ドヌーブ。彼女たちがまとうトレンチコートに対して、相手役の男性陣はステンカラーコートを選んでいた。強さと自由の象徴のようなトレンチと、控えめな優しさと知性を感じるステンカラー。美しい女性たちの輝きは、この絶妙なコントラストにも支えられていたのだろう。

数年前のパリのファッションウイークでスナップされた、ジェーン・バーキンの写真を目にした。かなりオーバーサイズのステンカラーコートを羽織って、足元はスニーカー、そして誰もが魅了されるあのチャーミングな笑顔。ジェーンといえば、1970年代のフレンチ・シックなトレンチコート姿が印象的だからか、その着こなしを新鮮な気持ちで眺めた。
誰もが自分らしくいることにより自然で軽やかになった現代。主張するのではなくアイデンティティにそっと寄り添うステンカラーコートは、時代のニーズにもとても合っているのかもしれない。永遠のファッション・アイコンが見せてくれた、とびきり素敵でラフな近年の装いにそんなことを思う。
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Text_ Kanako Uchida
Hair & make-up_ Katsuyoshi Kojima(TRON)
Model_ Simon(BE NATURAL)、Mia Kitora(BE NATURAL)
Edit & Web_ Rhino inc.