田中裕人_1980年生まれ。2001年入社。福岡店、リカー ウーマン&ティアーズ、原宿本店メンズ館を経て、現在に至る。熱い接客が持ち味。
スーツ、時計、靴、車。余分なものはいらない。例えばスーツ。入念なリサーチと手持ちの洋服に勝てるか(それ以上の魅力があるか)を徹底的に考え抜いたうえで本当に納得したものだけを手に入れる。今季は写真の1着のみ。次にメンテナンス。スーツのブラッシング、消臭、陰干しに約2日、靴磨き、水温を管理したシャツのランドリー、最善の保管。そしてコーディネート。「今季、着倒すつもりで買った一張羅は、イタリア・ナポリのブランド、《サルトリオ》のもの。ハンドとマシンの双方を駆使した圧倒的な縫製技術で美しい立体的なシルエットを作り出すんです。枯れたような深いブラウンもポイント。それに対して、オックスフォードのシャツ、凹凸のあるジャカードのネクタイの素材感で表情をつけ、靴はクラシックになりすぎないように黒のローファーを。タイ、ソックス、シューズの色を統一してモダンに映るように意識しました。あと、時計なんですけど…」。
田中裕人には圧倒的なこだわりと美学がある。18歳の頃、地元・広島の洋服屋で働き始めた頃から現在まで、その熱量は変わらない。「最も影響を受けたのは、リカー、ウーマン&ティアーズで共に働いていた小木。すでに敷かれたレールじゃなく、例え道がない場所でも自ら進んで道を作る“ストリート”という言葉の解釈には、ファッションだけではなく、生き方の部分でとても影響を受けました」。それはもちろん、ドレスの着こなしにも通じている。
「面白いのは着る人によって見え方が全く違うところ。装飾性がない分、内面が出る。だからこそ、自分らしさの追求が大切。それがないとお客様に提案はできないとも思っています。単にモノを売るだけじゃない。僕はその服が生活に本当に必要か? という一歩踏み込んだ、お客様のライフスタイルまでを考えたい。それが大事というか、それしかない。洋服で生きているんで、僕らは」