有馬俊一_1972年生まれ、鹿児島県出身。1994年入社。豊富な経験と柔らかな物腰にファンも多い、福岡の顔。
「有馬さんが福岡に戻ってきたって噂になって、急に彼を訪ねて来るお客さまが増えたんですよ。異動のことはお知らせしていないんですけどね」と福岡店の店長・桑子有人は言う。Mr.福岡。社内外を問わずそう呼ばれる男は今年2月、約2︎年ぶりにホームに帰ってきた。入社から21年、有馬俊一はドレスフロアに立ち続けてきた。「入社当時はクラシコイタリア全盛で、既製服はもちろん、ビスポークなどのオーダーメイドスーツも勉強させていただきました。そこからどんどんドレスの世界に踏み込んでいきました。スーツってこう、堅苦しい印象があるじゃないですか? もちろんルールも多いんですけど、それを知ったうえで崩しやハズしをどう入れていくか。そこのせめぎ合いというか、自分なりの駆け引きを楽しめるのが一番の魅力だと思っています」。すべてが自由というわけではない。しかし、限定的だからこその楽しみ方があるという。
この日、彼は20年前に買ったというタイを締めていた。毎シーズン変化する洋服を使ってどうリアリティを出すか。いわば“服に着られない”か。その追求こそが自身のスタイルを作った。「新しいものだけを合わせていてもリアリティがないので、必ず手持ちのアイテムをミックスすることを心がけています。今日のタイもそのひとつ。スーツもリメイクやリフォームを繰り返しながら着ることで、今の時代にフィットさせながら、自身の経験値を出すことができると思うんです。毎日のコーディネートひとつでも遅刻ぎりぎりまで考えてしまって、汗だくで出勤することなんかしょっちゅう。20年以上やっててもそうなんだから、やっぱり奥が深いということなんでしょうね」