太田裕康_1969年生まれ、神奈川県出身。1993年入社。今年で入社23年目のベテラン。多忙な出張の間にも欠かさず店頭に立つ、お店の顔。
ザ ソブリンハウスのディレクターを務める太田裕康は、20代から現在まで、一貫してある目標を掲げている。きっかけは海の向こうにあった。「入社して少し経って、とにかく自分で見て感じたことをお客様に伝えたいという気持ちが強くなった。でも、海外への買い付けに行けるのは最低でも店長になってからだと言われて。アルバイトで入った僕からしてみれば、店長っていうのはいつなんだと(笑)。それで自腹でイタリアへの買い付けに同行させてもらったんです」。特別なものは何も着ていない。その時、現地で見た着こなしがその後の方向性を決定付けた。「カルチャーショックでしたね。本当になんでもないアイテムを着ているのに、すごく格好良かった。この違いは何なんだって。以降はその追求が自分の使命だと思って一筋でやってきました」。
目標とは、“普通のものをいかに普通じゃなく着こなすか”ということ。「男の洋服っていうのは、シンプルであればあるほど、些細なこだわりや内面の充実が大切だということを知ったんです。ひとつひとつのアイテムだけを見ると至って普通のデザインだけど、サイジングや色、素材の組み合わせで全く別物になる。そこにその人の雰囲気が滲むこと。ほんの些細なことです。もちろん、デザイン性の高い洋服を着れば違って見えるんでしょうけど、それじゃお客様からしたら非日常過ぎる。洋服屋だけの格好になってはダメ。洋服屋として、あんなふうに着こなしたいとお客様に思っていただけるようにしなくてはいけないんです」。スーツは単に仕事着や戦闘服ではないと太田は言う。「人に対して失礼のないように自分を表現する。装うんだっていう気持ちがあると、すごくエレガントなものになると思うんです。僕はそこがドレスの一番の楽しさなんじゃないかなって思うんですよね」