
Standard Book ずっと大切にしたいもの。
ダブルフェイスコート
Double Face Coat
軽さを羽織るという選択。
ミニマルな現代のスタンダード。
秋も深まってくると、新しいコートのことが気になり始める。ボリュームのある秋冬のアウターはスタイル全体の雰囲気を左右するから、デザインは十分に吟味したい。また、デイリーに袖を通すものなので着心地や汎用性も気になるところ。クラシカルなチェスターフィールドコート、ベーシックなステンカラーコート、ミリタリー由来の定番ピーコートやダッフルコートなど多くのスタンダードがある中で、少し角度を変えて”素材と仕立て”という視点から眺めてみるというのも一つの選択ではないだろうか。そこで、ダブルフェイスコートである。2枚の生地を重ねて1枚にした両面表地の素材=ダブルフェイスを用いた1枚仕立てのコートは、さっと羽織れる軽やかさが何よりの魅力。ふんわりとした弾力とハリ感のある生地は、裏も表地なので滑りがよく、肌触りも優しい。また、2重構造になっているためもちろん保温性にも優れている。


ウールのダブルフェイス生地は、2枚のウール生地を織りの工程で同時に重ねて接ぎ合せ、1枚に織り上げたもの。この素材を生かすための仕立てにも特徴がある。縫製の際には、縫い代を作るために布端のはぎ部分を割いて、それを毛抜き合わせに。襟や前立て、裾、袖先などの布端は、2枚に割いたものを内側に織り込んで手まつりするという手の込んだ作業が必要とされる。見返しや裾の折り返しのないミニマルで洗練された表情と、裏側までも美しい仕上がりは、ひと手間もふた手間もかかる職人的な仕立ての技術に裏打ちされている。ウィメンズが着ている〈ユナイテッドアローズ〉の定番モデルであるダブルフェイスコートは、日本を代表する毛織物産地である尾張一宮、通称尾州の生地を用いている。尾州産の素材は起毛したウールの織り組織がマットで美しく、上品な印象。しっかりとしたハリ感があり、綺麗なドレープが生まれるのが特徴だ。

ダブルフェイスコートは素材と仕立てを最大限に生かしているため、シンプルなデザインを際立たせてくれる。チェスターフィールドコート、ステンカラーコート、ベルテッドコートなどの定番も、ディテールを削ぎ落としたミニマルな印象を放つのが魅力である。裏地のない1枚仕立てはストレスフリーの着心地で裾さばきも軽やか。また、上品でありながら、どこかリラックスしたムードは、今の生活と気分にも馴染むもの。まさに現代のスタンダードと言えそうだ。
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Text_ Naoko Sasaki
Hair & make-up_ Katsuyoshi Kojima(TRON)
Model_ Tiara(West Management)、Simon(BE NATURAL)
Edit & Web_ Rhino inc.