
Standard Book ずっと大切にしたいもの。
サイドゴアブーツ
Side Gore Boots
英国王室から生まれ、
ストリートで愛されたブーツ。
サイドゴアブーツを代表する一足として挙げられるのが〈クロケット&ジョーンズ〉の「チェルシー」。 足首から爪先に流れるようなライン、細身のラストとシングルレザーソールがエレガントでありながら、グッドイヤーウェルト製法で作られた耐久性も併せ持つ。1879年ノーザンプトンに創業した英国老舗シューメイカーで100年以上前から作られているクラシックなスタンダードである。「チェルシー」というモデル名には理由があって、英語圏ではサイドゴアブーツをチェルシーブーツと呼ぶことがほとんど。由来は意外にも1960年代に起こったスウィンギングロンドンのムーブメント。当時の最先端だったモッズスタイルでビートルズやローリング ストーンズがデビュー、サイドゴアブーツを愛用したことで若者の間でファッションとして大流行する。ブームの発祥地がキングスロードのチェルシー地区であったことから、この名で呼ばれるようになったというわけだ。


“ゴア”とはゴム織り込んだ伸縮性のある生地で、靴紐やストラップの代わりに足首をホールドする役割を担うと同時に、脱ぎ履きのしやすさを可能にしている。シンプルな形状と機能性が特徴のサイドゴアブーツは、軍靴から派生した多くのブーツとは異なり、そのルーツは英国王室に遡る。1830年代中頃、ロンドンの靴職人が、即位したばかりのヴィクトリア女王のために、脱ぎ履きが容易なブーツとして作ったのが始まり。つまり起源はレディースなのである。それが夫であるアルバート公の目に留まり、彼が英国議会など公の場所で履いたことからフォーマルなブーツと位置付けられることに。その後、その機能性から乗馬にも用いられるようになる。サイドゴアブーツが多様なスタイルと用途にマッチするのは、このような歴史の流れにも起因している。

ジーンズやスラックス、チノパンなどをカジュアルアップする定番的なシューズとして支持されている一方で、クラシックから派生した豊富なバリエーションもまた魅力の一つ。ボリュームソールや長めのミディ丈は、キュロットやフェミニンなワンピースとも相性抜群、パンツの裾をインしても様になる。細身のフォルムから丸みやボリューム感のあるもの、レザーソールからラギッドソールや厚底、さらにゴアの形状も様々。デザイン次第でトラッドからストリート、モードまで、ガラリと印象が異なるのもスタンダードの懐の広さと言えるだろう。
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Text_ Naoko Sasaki
Hair & make-up_ Katsuyoshi Kojima(TRON)
Model_ Tiara(West Management)、Simon(BE NATURAL)
Edit & Web_ Rhino inc.