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アランセーター
Aran Sweater
編み地に息づく伝統と自然への敬意、
手仕事から生まれた美しいセーター。
カウチン、ノルディック、フェアアイルなど伝統的なセーターの中でも、ケーブルなど装飾的な柄を組み合わせた編み地が特徴のアランセーター。その発祥はアイルランド、ケルトの風習が色濃く残る西アラン諸島だ。アランセーターのルーツは、フィッシャーマンセーターの元祖ガンジーセーターだと言われている。英仏海峡のガーンジー島で17世紀に生まれたガンジーセーターは英国の漁師たちの間で広まり、アラン諸島を含むアイルランド沿岸部にも普及していた。1920年頃、アメリカ・ボストンに渡ったアラン諸島出身の女性マーガレット・ディレインが、現地で目にした様々なハンドニットの技術を持ち帰り、島の女性たちに伝えたことをきっかけに、様々な柄が生み出されアランセーターの原型が出来上がっていった。当時、島の漁師たちが着ていたのはガンジーセーターと同様に紺色のもの。白いアランセーターは12歳を迎える少年たちが堅信式に着るために母親が真心を込めて編む晴れ着だった。1949年に独立を果たしたアイルランドが、積極的な輸出政策を取る中で、アランセーターはその重要品目となる。家族のためだけに編まれていたものから、家内制手工業として家計を支える工芸品にもなって行く。


アランセーターをファッションとして世に広めたのは、パリのデザイナー、クリスチャン・ディオール。1956年にコレクションに取り入れたことで、パリのモードとしてアメリカに伝わり、グレース・ケリーやジーン・セバーグなど多くの俳優たちに愛されることになる。中でも映画『華麗なる賭け』で見せたスティーブ・マックイーンの着こなしは有名。また、1961年に第35代大統領に就任したJ.F.ケネディがアイルランド移民の子孫であったことで、アイルランド文化に関心が集まり、アメリカ全土に広まっていった。
素朴で美しい編み地には様々なモチーフがある。漁師たちが使う縄や命綱を表す「ケーブル」、菱形の網の目を表し富と成功を象徴する「ダイヤモンド」、生命の広がりや人生の時間を意味する「ツリー・オブ・ライフ」、蜂の巣や漁網を広げた姿とも言われる「ハニカム」、結び目や木苺の形を表す「ノット」・・・。島の人々の生活と密着した自然をモチーフにしたものが多く、また、母から娘へと受け継がれている独自の模様も存在しているという。

現在ではオーセンティックなハンドニットから、柔らかなラムズウールやファインゲージで編まれたもの、オーバーサイズやショート丈など、素材も色もデザインも多彩なバリエーションで親しまれている。美しい編み地の中に息づくクラフツマンシップとストーリー、素朴な温かみが何よりの魅力である。
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