
Standard Book ずっと大切にしたいもの。
ダッフルコート
Duffel Coat
サープラスから、アイビーの定番に。
時を超えて愛されるトラッドなコート。
ダッフルコートという名前は、ベルギーの都市Duffel(デュフェル)で織られていた”デュフェル布”にちなんで付けられたと言われていて、元々はスコットランドや北欧など極寒の海で働く漁師の作業着として作られたコートがその起源とされている。イギリスでの歴史を遡ると1850年代、アウターウェアメーカーの〈ジョン パートリッジ〉によって商品としてのダッフルコートが作られ、その後、イギリス海軍によって船舶用の防寒着として採用される。船員用に作られたダッフルコートが今日のベースとなっている。
特徴であるトグルとループ留めのフロントは、厚手の手袋をつけたまま開閉できるように作られた仕様。漁師たちが使う”浮き”をモチーフにしたという説もあるそうだ。帽子の上からでもかぶれる大きなフードと、両サイドには手袋のまま手が入れられる大きなポケット。海軍のものはシンプルなパッチポケットだった。チンストラップは襟元を閉じて外気を防ぐため、肩から背中をカバーする四角いショルダーヨークはストームパッチと呼ばれ、水や雨の染み込みを防ぐために付けられた。コートの色は最初はキャメルベージュ、その後にカーキやブラウン、ネイビーが登場したのは1930年代以降と言われている。


ダッフルコートが一般に普及したのは第二次世界大戦後、海軍の余剰在庫=ミリタリーサープラスが市場に出回ったことがきっかけだった。木製のトグルと麻紐のループの特徴は、1951年に創業した〈グローバーオール〉の復刻モデル「モンティ」に見ることができる。その後、60年代には反戦デモに参加する英国の知識層に、またアメリカでも名門学生の間で人気となり、アイビースタイルの定番アイテムに。現在スクールコートとして用いられることも多いのは、アイビーの流れに由来しているのだろう。ミリタリーから派生したコートが知的な文系のイメージも併せ持つのもダッフルコートのユニークなところ。ちなみに、ホーンのトグルと革紐を組み合わせたディテールは、英国モンゴメリー社の「ウインザー」が雛形と言われている。
名画の中でも様々なダッフルコートが見られる。1949年の『第三の男』では、トレヴァー・ハワード演じるイギリス軍キャロウェイ少佐のコートはかなりのオーバーサイズ。1971年の『愛の狩人』では、ジャック・ニコルソンとアート・ガーファンクルがそれぞれネイビーとキャメルのダッフルコートをトラッドに着こなしている。意外なところでは、1976年の『地球に落ちて来た男』。宇宙船から降り立ったデヴィッド・ボウイがダッフルコートに身を包んでいる。

スタンダードなコートの中でも、フードの付いたカジュアルさとトグル留めのデザインが魅力のダッフルコート。素材は肉厚で目の詰まったメルトンやヘリンボーンを基本に、ダブルフェイス仕立てなど軽やかな着心地のものも登場し、進化を続けている。時代を越えて愛されるトラッドな1着を楽しみたい。
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Text_ Naoko Sasaki
Hair & Make up_ Katsuyoshi Kojima(tron)
Model_ SAKKA(TOMORROW)、Simon(BE NATURAL)
Edit & Web_ Rhino inc.