
Standard Book ずっと大切にしたいもの。
チノパン
Chinos
ユーティリティから生まれた、
文武両道のトラウザーズ。
チノパンはチノクロスという綾織のコットンツイル地で作られたトラウザーズ。アメリカ軍で作られた制服をルーツとするミリタリー発祥のアイテムだ。現在のデザインの原型は、1941年に米国陸軍で作られたM-41戦闘服のトラウザーズ、通称“41カーキ”と呼ばれる1本。それまで採用されていたジョッパーズ型から、現代のパンツに近いデザインになる。両サイドのスラッシュポケットに玉縁のバックポケット、ウエスト部分にウォッチポケット付きのシンプルかつ機能的なディテール。股上が深くゆったり太めのシルエットが特徴だった。生地はチノクロスの一種であるウエスト・ポイント(ウエポン)。2本の糸を撚りあわせ緻密に織り上げた素材で、通常の単糸のチノより丈夫で光沢がある。この名は、米国陸軍ウエスト・ポイント士官学校に由来するもので、上級士官の制服のために作られたという説もある。ちなみにチノパンツは和製英語。英語圏ではチノーズ、カーキーズと呼ばれている。


第二次世界大戦後、チノパンはGIたちによって持ち帰られ、日常着として普及していく。丈夫で活動しやすく、上品な雰囲気もあり、1950年代にはアイビーリーグの学生たちに取り入れられてアイビースタイルの定番アイテムに。日本で1965年に出版された写真集「TAKE IVY」にもその様子が収められている。
映画では、1963年の『大脱走』で米軍士官を演じたスティーブ・マックイーンがA2フライトジャケットにチノパン姿で登場。大戦中のチノパンは太いはずなのに細身を穿いていたのは、マックイーン本人のこだわりだったという話も興味深い。トラッドな着こなしなら1977年の『アニー・ホール』。ウッディ・アレンはツイードジャケットやチェックシャツにプリーツ入りのチノパン。ダイアン・キートンはオーバーサイズのチノパンにシャツとベスト、ネクタイを合わせたメンズライクな着こなし。当時“アニー・ホール ルック”と呼ばれ、彼女をファッションアイコンに押し上げたスタイルでもある。

ミリタリー&ワークの出自を持ち、学生たちに愛されてトラッドの定番となったチノパンは、まさに文武両道のアイテム。ブレザーやBDシャツ、レザーシューズはもちろん、スポーティなコーチジャケットやポロシャツ、スニーカーにもよく似合う。歴史とストーリーを持ち、個性に合わせて着こなしを楽しむことができる普遍性こそ、スタンダードと言われる所以だろう。
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Text_ Naoko Sasaki
Hair & Make up_ Yukiko Imanishi
Model_ Momoe Kanjo(BE NATURAL)、Tomoyoshi Hirai(BE NATURAL)
Edit & Web_ Rhino inc.