
Standard Book ずっと大切にしたいもの。
カバーオール
Coverall Jacket
ワークから生まれた普遍性、
カバーオールのタイムレスな魅力。
カバーオールとは、襟の付いたシャツ型ワークジャケットの総称。その起源は19世紀後半から20世紀初頭にかけて労働者のために作られた作業着。汚れや怪我から身を守るための丈夫な素材使い、作業しやすいゆとりのある長めの着丈、機能的なポケットが共通の仕様とされている。英語のcoverallは上下が繋がった“つなぎ”を意味するので、日本で使われる意味でのカバーオールは和製英語。英語圏ではChore Jacket(チョアジャケット)、Railroad Jacket(レイルロードジャケット)、Engineer Jacket(エンジニアジャケット)などと呼ばれている。
アメリカでは、鉄道作業員や農業従事者、工場や炭鉱労働者といった幅広い層でそれぞれの利便性に合うカバーオールが着用されていた。素材はデニムやダックキャンバス地が主流、胸に付いたユーティリティポケットや刻印入りのメタルボタン、ポケットを留めるリベット、トリプルステッチなど、タフで無骨なディテールが特徴だ。1920年代以降になると、〈ヘラクレス(HERCULES)〉、〈ビッグマック(BIG MAC)〉、〈カーハート(carhartt)〉、〈ディッキーズ(Dickies)〉といったワークメーカーが次々と生産を開始し、アメリカンワークスタイルの象徴的なアイテムとなる。中でもブラウンのダック地に襟を肌馴染みのよいコーデュロイに切り替えた〈カーハート〉の「チョアコート」はアイコニックな一着ではないだろうか。
一方、ヨーロッパのカバーオールでは、フレンチヴィンテージの定番としても知られるワークジャケット「ブルー・ドゥ・トラバイユ(Bleu de travail)」が有名。フレンチインクブルーと呼ばれる色味は、耐久性があり汚れが目立ちにくいインディゴ染めによるもの。素材にはモールスキンやコットンツイル、ヘリンボーンなど、丈夫でありながらも柔らかな生地が使われている。アメリカのカバーオールに比べると、すっきりとシンプルなデザイン、少し丸みを帯びた中世的な襟などにフレンチワークの上品さを感じさせる。

ワークウェアをルーツとする実用的で普遍的なデザインは、気軽に羽織れて合わせる服を選ばない。スウェットやチノパンでアメカジはもちろん、セーターとキルトスカートを合わせたカントリー調の着こなしもかわいい。定番のデニムやダック地は長く着ることで経年変化を楽しむことができ、ダメージさえも自分らしい味になっていく。秋冬はメルトンやチェックなど温かみのあるクラシックな生地を用いたり、様々なバリエーションで進化を続けている。この懐の深さもスタンダードアイテムの魅力だろう。
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Text_ Naoko Sasaki
Hair & Make up_ Shikie Murakami
Model_ REIA(NUMBER EIGHT)、VINCENT(NUMBER EIGHT)
Edit&Web_ Rhino inc.