
Standard Book ずっと大切にしたいもの。
キャンバストートバッグ
Canvas Tote Bag
シンプルな機能性、
日常のキャンバストート。
ハンドバッグ、ショルダー、ボストン、リュックなど、数あるバッグの中でも、”物を運ぶ”という実用性に特化したトートバッグ。その定義は袋状のコンパートメントに2本の持ち手を付けた構造といういたってシンプルなものだ。布帛やナイロンのエコバッグから、ラグジュアリーブランドがリリースするレザー製まで、素材やデザイン、バリエーションもさまざまなタイプがある。
トートバッグの「tote」とは、英語で「運ぶ」という意味の動詞。その語源は定かではないが、中央アフリカ・コンゴ語の「tota(持ち上げる)」、東アフリカ・スワヒリ語の「tuta(運ぶ)」を起源とし、17世紀のアメリカにおいて、アフリカ人労働者と共にもたらされたという説がある。当時は労働者が重い荷物を運ぶことを意味し、トートバッグとはそのための業務用の袋を指していたようだ。その後19世紀頃になって、「tote」は一般的に荷物を運ぶ行為を示す言葉として使われるようになる。
トートバッグの代名詞といえば、キャンバスで作られた〈L.L.Bean〉の「ボート&トートバッグ(boat and tote bag)」だろう。〈L.L.Bean〉は1912年にアメリカ・メイン州で創業したアウトドアメーカー。トートバッグの原型となったのは、1944年に氷を運ぶためのバッグとして開発された「アイス・キャリア(Ice Carrier)」である。まだ電気冷蔵庫がなかった当時、アメリカの一般家庭では、切り出した氷で庫内を冷やす木製の冷蔵庫=アイスチェストが主流であった。「アイス・キャリア」は重たい氷をアイスチェストまで運搬するために、大きな開口部と2本の持ち手を備えたシンプルかつ丈夫な構造で作られ、氷が溶けても水が染み出さないよう24オンスの厚手のキャンバス地が用いられていた。
1950年代にかけては、氷だけではなく、暖炉の薪や収穫した野菜や果物の運搬用として、また、食料品や日用雑貨の買い出しに便利なグローサリーバッグとして、農民や主婦の間でも重宝されるようになる。次第にアウトドアやレジャーを楽しむ多くの人々に愛用され、1965年には「ボート&トートバッグ」のネーミングで〈L.L.Bean〉のカタログに登場。これは、ボートに乗る時に必要な荷物を詰めて、どこへでも持ち運べるという意味だった。ハンドルとボトムが配色になったカラーリングもこの頃に誕生。その後、たくさんの書籍やテキストを持ち歩くアイビーリーグの学生たちの間でスクールバッグとして用いられるなど、日常に溶け込む実用的なバッグとして広まっていく。

キャンバストートの構造は80年前に登場した「アイス・キャリア」以来、今でもほぼ変わっていない。丈夫な1枚のキャンバス地を折り返し、サイド部分を縫製して袋状にしたコンパートメント。オーバーラップ仕様のハンドルは、側面から底までぐるりと縫い付けることで強度と安定感を高めたもの。ボトムは別布を当てて補強した二重構造。これらは、ボディの生地とボトムの補強布、持ち手を二重にしたハンドル用のベルトという4つのパーツだけで構成されている。
アイコニックな配色のデザインはコーディネートのアクセントに、全体をワントーンで仕上げたソリッドタイプはシーンを選ばないよさがある。短いハンドルが一般的だが、肩掛けのできる長めのハンドルや、別途ショルダーストラップの付いたデザインなど、用途によって選べるのもうれしい。実用的なギアとして、使い勝手のよいデイリーなバッグとして、シンプルさゆえに時代を超えて愛され続けるスタンダードだ。
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Text_ Naoko Sasaki
Hair & Make up_ Katsuyoshi Kojima
Model_ Akemi Rodry(NUMBER EIGHT)、Keiji Sai
Edit & Web_ Rhino inc.